覚えておいて損はない「判断」に関する18の不合理な法則 【書評】ねじれ脳の行動経済学


04 29, 2009 | Tag,行動経済学,心理,不合理

ねじれ脳の行動経済学 (日経プレミアシリーズ 41)ねじれ脳の行動経済学 (日経プレミアシリーズ 41)
(2009/04/09)
古川 雅一

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本書の著者である古川雅一さんは行動経済学の専門家。私たちの日常生活では毎日大きな選択から小さな選択に至るまで様々な選択に迫られていると思いますが、振り返ってみていつもベストな選択をしているとは言い難いのが現実だと思います。「どうしてあの時あんな選択をしてしまったんだろう」と後悔することもしばしばですが、本書はそんな人間の不合理な意思決定について易しく解説してくれています。

以前にも経済は感情で動く―― はじめての行動経済学人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理で行動経済学の著作は読んできましたが、それらは文量も結構多く、読み応えがある反面、読みとおすのが大変だったかもしれません。それに比較して本書は約200ページの新書ですので、抵抗なく読めると思います。

行動経済学の本全般に当てはまることでしょうが、本書も例外ではなく、「あるある」という事例が豊富にでてきて、読んでいて納得感の得られる一冊でした。



自信過剰

1. 自分の思い込みに沿った評価を無理に導き出そうとしてしまう「確証バイアス」

2. 楽観的な情報が先にあって、それに整合する情報のみ集めて情報を都合よく解釈してしまう「楽観的シナリオの自信過剰(過度の楽観)」

3. 一回目にうまくいった方法で二回目もうまくいくだろうと根拠なく思いこんでしまう「勝者の呪い」



認知不協和

4. 自らの意見を大多数の意見だと思いこんでしまう「総意誤認効果」

5. 自分の行動や知識と矛盾したものに遭遇すると不快感を覚える「認知不協和」

6. 失敗に終わったとき、いろいろな情報が耳に入ってきても、自分の責任ではなく外的なものが原因と考えてしまう「自己責任バイアス」



フレーミング効果

7. 松竹梅のメニューがあったら竹を選んでしまう「極端回避性」

8.選択肢が多すぎると選べなくなる「決定麻痺」



価値関数

9. 1万円儲けた時と2万円儲けて1万円損した時では実際には儲けた額は同じなのに後者の方が痛みを感じる「損失回避性」

10. 買った株はなかなか売りたくない「保有効果」



利用可能性ヒューリスティクス

11. 物事の起こる確率をその例の思いつきやすさで推測してしまう「利用可能性ヒューリスティック」



アンカリング

12. 266万円の見積もりを250万円にしてもらったら本当は250万円がもともとの妥当な額だったかもしれないのにお得な気分になってしまう「アンカリング効果」



確率荷重

13. 期待値が小さくてもリスクを回避して確実に得をする方を選択する「確実性効果」

14. 低い確率を高く、高い確率を低く評価するあてにならない人間の予想「確率荷重」



代表性ヒューリスティクス

15. 2年目のジンクスはあてにならない。多数のサンプルや多数回のトライアルがあって平均に回帰していくのにたった一回の事象から次jを予測することはできないから。2年目のジンクスの誤りを「平均への回帰の誤謬」という。

16. 同じように「ギャンブラーの誤り」というものがある。コイン投げをして表が10回連続で出たら次は裏だろうと考えるもの。実際にはコイン投げで裏が得る確率はその時々で2分の1である。

17. 自分でクジを引くことで当たる確率が高くなる気がする「支配の錯覚」



選好の変化

18. 時間的に近い未来のことは高く評価し、遠い未来のことは低く評価してしまう。「早起きをすること」と「もう少し、と二度寝をしてしまう」ことは「選好の逆転(時間非整合性)」が起きて誘惑に負けてしまうことによる。



どれも痛いほどよく分かる法則ばかりですが、「わかっちゃいるけどやめられない」法則でもあるかもしれません。しかし、こういう法則を知っているのと知らないのとでは選択の仕方が変わってくるのも事実でしょう。「そういえば、この状況はあの法則の状況と似ているな」と思ったら、自分に都合の良い思い込みで判断することをなくしたり、松竹梅のうち梅を選んだり、二度寝を防ぐことができるようになれる可能性があります。

本書を元に自分の行動を振り返ってみるといいでしょう。


【関連記事】
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理




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【書評】「依存症」の日本経済


03 03, 2009 | Tag,経済,日本経済

「依存症」の日本経済 (講談社BIZ) (講談社BIZ)「依存症」の日本経済 (講談社BIZ) (講談社BIZ)
(2009/01/08)
上野 泰也

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本書は現代の経済を「依存」というーワードで読み解いた本です。内容をよく表していると思いますので以下に目次を掲載しておきます。

目次
第1章 日本の個人消費は「女性依存」-婦人服売上高にカギがある
第2章 お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質-「消費弱者」に逃げ場はあるのか
第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力-中小・非製造業は生き残れるのか
第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか-40%の食料自給率が意味するもの
第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本-このままでは国ごと沈んでしまうのか
第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか-ゆとり教育が生んだ3つの弊害
第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人-景気の波と報道の影響力の関係
第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」-間接金融中心で何が悪い?
第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場-ブレークスルーを生む政策を打ち出すために
第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」-否定された「デカップリング論」
第11章 ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」


目次にある通り本書にはざまざまな日本の「依存」体質が書かれていますが、本書の読みどころは最終章の日本の未来図、秋田県の部分だと思います。日本経済の最も危機的な状況は人口が増加しなくなったというところにあり、それを説明するのに秋田県というモデルが役に立ちます。今秋田県に起きていることが10年後日本に起こらないとも限らないなと考えさせられます。


経済全般

人口問題

人口減少や人口分布の変化(少子高齢化)に伴い需要の減退が起こります。需要が減退すると、それに合わせて供給側も再編が求められます。競争力の弱い中小企業などは今よりもっと淘汰されていく可能性があります。

地方の中小企業は生き残るために何かしらの特徴を身につける必要があります。本書の中に登場する一つの例として、女性客にアピールすることで成功しているパン屋が描かれています。

なんといっても人口増加政策が必要になるわけですが、アメリカではバブル崩壊に伴う消費の減退に対して、グリーンスパン前FRB議長は「過剰な住宅在庫の買い手として熟練労働者を受け入れる」と言ったそうです。

消費を促すためには人口を増加させ、単純にパイを増やすという方法以外にも、外国から、消費を活性化してくれるような人たちを受け入れてしまおうという考えです。非常に単純明快で分かりやすい主張ですが、実際には実現しなかったようです。移民の国アメリカだからこその発想で日本では受け入れられづらいかもしれませんが、もっと外国資本を有効に利用しようという考え方は良いと思います。



産業構造・規制

規制緩和
規制は既得権益を守ります。その結果、競争原理を失わせてしまい、企業や産業の成長という意味ではマイナスの力が働きます。

規制緩和が成功した例としては電力・ガスへの競争原理導入による低価格化、消防法改正によるセルフのガソリンスタンド設置による低価格化、株式売買委託手数料の完全自由化とネット証券の相次ぐ参入による参加者の利便性向上などがあると思います。

反対に規制がかかっているものの代表例は農業でしょうか。
食料自給率は日本全体ではカロリーベースで40%とされていますが、秋田県では170%あります。そもそもカロリーベースで食料自給率を測るのはいかがなものか、食糧自給の問題が論じられる場合は、いつも戦時下であるかのような前提で話し合われているのがおかしいと主張されています。

それよりも足りない資本は輸入してかまわない、逆に日本にはイチゴやスイカなど質の高い農作物があるわけなので、それを国外に輸出してはどうか、と。そして国内の農業にも競争原理を導入しどんどん質の高い農作物を作っていくべきだと言っています。



教育

教育に関しては秋田県がモデルになりそうです。全国学力テストの平均点は秋田県がトップという結果があります。秋田県では塾に通っている生徒は他県と比べると少ないにもかかわらずこの成績が残せるのは、学校教育が充実しているからでしょう。あくまで平均点なので、成績が突出した生徒を育てるには学校教育だけでは不十分なのかもしれません。

しかし、学校教育の底上げは競争力のある産業を生み出す糧になるでしょうから、それはそれで望ましいことだと思います。

まだ先は見えませんが、教育の面では秋田県のように学校教育が充実し、あくまでそれを補う形で塾が存在するというのが自然な形なのでしょうか。



著者は徹底して規制緩和擁護派ですが、日本の将来に期待をこめていることが読んでいて伝わってきます。経済関連の本の中では読みやすく仕上がっていて、楽しめる一冊でしたよ。



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【書評】資本主義は嫌いですか


02 04, 2009 | Tag,経済,バブル,サブプライムローン

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす
(2008/09)
竹森 俊平

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本書は今回の、サブプライムローンをきっかけにしたバブル崩壊の原因について迫ったベストセラー書です。

構成は全部で3部からなっており、第Ⅰ部でサブプライムローンの形成と功罪、第Ⅱ部でバブルは予測されていた学会での話、第Ⅲ部で流動性について書かれています。


「リスク」と「不確実性」という言葉が出てきます。リスクというのは確率で予測可能な危険、不確実性というのは予測できない危険です。世の中が常に合理的であれば、全てリスクとして処理できることになります。しかし、これでは事業についての収入の期待値と生産の期待値が一致して最終的には突出して儲かる人はいなくなります。

世の中に大きな利益を得ている人がいるのはこの「不確実性」をうまく利用できているからです。



サブプライムローンはローン返済能力の低い人でも住宅ローンを組んで家を買うことができる仕組みでした。

住宅の市場価値以上に住宅の価格が値上がりを続けたこともバブル形成の一因となっています。個人の所得が増えていけば、住宅の需要は増えます。それに対して供給の量は大きく変わりません。そうすると、住宅の価格は上昇します。

また、住宅価格は今後も継続的に上昇し続けるだろうという群集心理も値上がりに貢献しているはずです。


もう一つ、低金利の状態が続いていたという問題がありました。これにより比較的安いローンを組むことができるようになるので、サブプライムローンの利用は加速しました。



金融工学の手法により巧みにサブプライムローンはそのリスクが薄められ、様々な金融商品の中に組み込まれました。簡単に言うと、サブプライムローンという金融商品を細かく切り刻んでリスクの高い部分と低い部分にします。リスクの低い部分を集めて新しい金融商品を作ります。そうすると、その新しい金融商品はあたかも元々がリスクの低い商品だったかのように見えるようになるのです。



住宅ローンは流動性の低い商品です。流動性が最も高いものは現金です。流動性の低い住宅ローンはいざ現金が必要になったときに、簡単には現金に変えることができないというリスクを抱えています。いざという時に現金として使えないのであれば、その金融商品は紙切れ同然ということにもなりかねません。


今回のバブル崩壊の要因には「”サブプライム”なローン」、「金融工学」、「住宅ローンの流動性の低さ」、これらが深く関わっているようです。


著者によれば、今回のバブルは振り子のように繰り返します。痛い目を見ないためによく覚えておいたほうが良さそうですね。


参考:すべての経済はバブルに通じる




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【書評】過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか?


01 25, 2009 | Tag,池田信夫,経済,IT,コンピュータ

過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)
(2007/12/10)
池田 信夫

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本書の著者池田信夫さんは経済学者であり、ブログ:池田信夫ブログ管理人でもあります。著者のブログは毎日多くの人が訪れ議論を呼ぶこともたくさんあるようです。

以前にハイエク 知識社会の自由主義も読んでみましたが、個人的にはこちらの方が理解しやすい内容だと思います。

あまり知らなかったのですが、どうやら池田信夫さんは情報科学の分野に詳しい経済学者のようです。半導体などの技術的な細かい知識にも詳しいようで、本書の中にもその手の話が一部掲載されています。



本書の要点はゴードン・ムーアさんの予言「半導体の集積度は18か月で2倍になる」をもとに、ITとそれを取り巻く産業の過去、未来について経済学的な立場から読み解くことです。

実際、ムーアさんの予言通り、半導体の性能はどんどん向上し、それとともにコモディティ化したことで安い値段で手に入るようになりました。

1980年代から比べると、コンピュータの性能は格段にアップしました。今や携帯電話すら一昔前のコンピュータをしのぐほどです。

ハードの性能向上と値段の低下の過程には


垂直統合 → モジュール化 → 水平分業 → コモディティ化
→ 世代交代 → 垂直統合 →・・・


という流れがあります。

この点に関しては本文中でも引用されている通り、イノベーションのジレンマに詳しく書いてあります。



ハードの性能が向上した割に、情報技術のボトルネックになっているのはソフトと電波と人間です。


ソフトは今までマイクロソフトが著作権を楯に利益を独占していたような感がありますが、最近では一般の人もオープンソフトを利用できるようになりました。ユーザビリティが向上すれば、オープンソフトはさらに大衆の利用が進むので、技術の向上も加速するはずです。

オープンソフトを利用する点でもそうですが、今やコンピュータを利用してインターネット環境が整わないことはその性能のほとんどを使っていないことに等しい気がします。インターネットの利用環境には規制がしかれている電波がの利用がボトルネックになっているそうです。

もう一つは人間です。情報を入手するコストが格段に減ったにもかかわらず、テレビなどの一方的なメディアに偏りすぎて、膨大な情報を有効利用できていないということです。



オープンソフトの利用についてはGoogleやオープンオフィス、FireFoxなど、これからもどんどん利用できるようになりそうです。ユーザーとしては次にどんなサービスが利用できるようになるか楽しみです。



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目を背けるな【書評】ならず者の経済学


01 11, 2009 | Tag,経済,奴隷,売春,偽造,犯罪

ならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰かならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰か
(2008/11/19)
ロレッタ・ナポレオーニ

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本書は経済現象のうち、あまり直視したくない”闇”の部分にスポットがあてられた本です。なので、読後に爽快感が得られるというよりは少し暗くなってしまうかもしれません。

本書を読むと日本と言う国がいかに恵まれた国であるかが身にしみます。


「ならず者の経済」とはを共産主義の崩壊による混沌の中から生まれた副産物で、本書で取り上げられている「ならず者の経済」は以下のようなものです。

  • ロシアの新興財閥(オリガルヒ)による国有財産の略奪

  • セックス奴隷としてのスラブ系女性

  • 共産主義崩壊後、国民は新興財閥に法外に安い値段で国民が持っていた民営化証券を集めて富を築いた。この影響でロシアの女性失業率が80%に増大し、生活のために売春に走らざるを得ない女性を急増させることになった。


  • 貧困化し破産するアメリカの中流階級

  • 富の象徴とされる持ち家に憧れるアメリカの中流階級が、返済不能なローンに手を出し最後には破産する。


  • グローバル化して巧妙に暗躍する犯罪組織

  • 今もなくならない奴隷労働

  • 犯罪組織で生み出されたお金はロンダリングされ、私たちの手元に届いているかもしれない。あなたが手にしている貴金属は奴隷労働の成果かもしれない。


  • あふれかえる偽造品・偽造薬

  • 中国を初め、貧しい国にあふれる偽造品。さらには薬まで偽造されているという現実。


  • 人々のダークな情念を操って大儲けするインターネット起業家

  • インターネットでナンバー1のビジネスはポルノ、ナンバー2はギャンブル、そしてナンバー3は児童ポルノである。


  • 先進国のあくなき食欲を満たして稼ぐ漁業海賊

  • 世界規模でみればごくわずかな人々のために、海洋資源が乱獲されている。


こうして見てみると、これらの「ならず者の経済」の多くに貧困、そして貧富の差が関与している事が分かります。

これらがはびこる原因には当事者以外に、巡り巡って恩恵を受けている先進国の存在も見逃せません。

富める者はますます富み、貧しい者はいつまでたってもそこから抜け出せない。このような格差をなくす、社会全体の取り組みが必要なのだと思います。難しい問題だとは思いますが、利益を上げることが至上命題になっている今の資本主義では限界なのかもしれません。

著者はこの状況を打開するのに、イスラム金融と中国の思考法(例えば孫子の哲学:現実は状況の産物として立ち現れるので、たえず変化している。それを巧みに利用することこと肝要である)に活路を見出していますが、つい最近当ブログメタノート:貧困のない世界を創るで紹介したようなソーシャルビジネスやマイクロクレジットの活用も有効なのではないかと思います。




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合理と不合理、どっちが正しい?【本】人は意外に合理的


01 06, 2009 | Tag,経済学,合理的,不合理

人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く
(2008/11/20)
ティム ハーフォード

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昨日に引き続いて経済学の本です。
経済学と言っても、行動経済学の話に近いので読みやすい内容になっています。

たしかにブログ:H-Yamaguchi.net;人は「予想どおりに不合理」だけど「意外に合理的」でもある、という話にある通り、本書と昨日の予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」を一緒に読むとよりおもしろいと思います。


アメリカでは一時期青少年の間でオーラルセックスが増え、問題になったことがあるそうです。著者流に言うと、これは不道徳だと非難される面がある一方、HIVについて学習した青少年たちの合理的な行動を示唆します。

また、近年女性の離婚率が増えたことも、教育が充実してきたことや、女性として社会に出て職を得ることで自立した生き方を選択する女性が増えてきたこと、などが理由として挙げられます。これも社会が成熟してきたため、女性がより合理的な選択を出来るようになったことに関係があると著者は指摘します。



昨日の予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」でもあったように、およそ不合理な選択をしてしまうのが人間で、そのことに関しては疑いはないのですが、それは個人に焦点をあてたミクロ的なものの見方で、人間の集団社会にもっと目を向けてみると、長い目で見ると合理的な選択をしてきていることが分かります。そうでなければ、私たちの住む社会は良いものになっていかないでしょうし、これは過去を振り返ってみても同様のことが言えるのだと思います。


前向きな意見として、私たちが出来ること、それは

「不合理な選択を行ってしまうことは許容しつつも、それでも諦めずに合理的な選択を行えるよう努力を続ける。」

これしかないのではないでしょうか。





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人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理


01 05, 2009 | Tag,行動経済学

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
(2008/11/21)
ダン アリエリーDan Ariely

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本書は感情と理性の間で揺れ動く人間の心理を理解するのに役に立つ本です。
人間がどうして不合理な行動を起こしてしまうのかを解明するのは非常に難しいことだと思います。

私たちは後から考えるとどうしてそのような行動をとったのか分からないような行動をすることがよくあります。

本書は経済学を、「人間はそもそも合理的ではない」という視点で考える場合や「単純にこれまでに行ってきた自分の選択について振り返る」場合などに役に立つと思います。



本書の中から心に留めておきたい「私たちの10の性質」を紹介します。

1.相対性の真理
AとBという選択肢があった場合、そのままでは迷ってしまう選択肢でもAより少し劣るA'という選択肢があると、Aを選びやすくなる。
自分の給料が仕事に対して見合わないと思うのも、同僚が自分より少しだけでも多くの給料をもらっているから。


2.需要と供給の誤謬
実は価格は需要と供給だけで決まるものではない。
本書では黒真珠の話が出てきますが、黒真珠の価格は売り手が巧妙に高級品であることを買い手にすりこんだことで出来上がったりしている。


3.ゼロコストのコスト(無料が本当は無料じゃない理由)
「無料のおまけ」がついていたり、「3足買えばもう一足は無料!」となっていると、お得感がしてついつい商品に手が伸びてしまう。


4.性的興奮の影響
性的興奮を感じている時、確実に判断力が鈍る。どんなに理性的な人間でも、興奮が高ぶっている時は理性的な部分がどこかに行ってしまう。


5.先延ばしの問題と自制心
先延ばしにすればするほど、自制心が活躍する場が少なくなってしまう。意志は時間の経過とともに弱くなる。こういった場合、自分のやりたい事は自動的に出来るように仕組化する方が良い。


6.高価な所有意識
いったん所有してしまったものは容易には手放したくなくなる。だから、自分では適正な価格以上の価格付けができると思ってしまう。


7.選択の自由
選択肢が少ないというのは私たちにとってとても窮屈なことである。かと言って選択肢が多いと選択が困難になったり、目的にそぐわない選択をしてしまったりする。


8.予測の効果
これは先入観と大きく関係がある。
コカコーラに抱くイメージとペプシコーラに抱くイメージとは残念ながら違う。

ワインをおいしく見せたかったら、いいワイングラスに入れるようにしましょう。


9.価格の力
高い方が良いと考えがち。
値段の高い薬と安い薬では、同じ成分の薬でも高い薬の方が良く効いたそう。

これだと、後発薬品は広まらないことになってしまいますね。


10.わたしたちの品性
人々はチャンスがあれば、ごまかしをする。しかし、いったん正直さについて考えだすと、ごまかしを完全に止める。そもそもわたしたちは誘惑に負けやすいのである。誘惑に駆られている瞬間に道徳心をどう呼び起こすかが問題だ。


本書から得られる最大の教訓
わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である。わたしたちはたいてい、自分が舵を握っていて、自分が下す決断も自分が進む人生の進路も、最終的に自分でコントロールしていると考えている。しかし、悲しいかな、こう感じるのは現実というより願望(自分をどんな人間だと思いたいか)によるところが大きい。

本書で紹介されている「心の動き」は読者を納得させるのに十分だと思いますが、紹介されているのは”結果”にあたる部分で、”機序”の部分ではありません。だから、内容についてとやかく言えるものではありません。人間はどうしようもなく、このような行動を起こしてしまうものなのですから。

一方で、私たちがとりやすい思考や行動のパターンを知っておくことは、生きていく上での最善の選択を行うために確実に役に立つと思います。


参考記事:経済は感情で動く―― はじめての行動経済学



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振り子の金融史観―金融史と資産運用


12 08, 2008 | Tag,金融史,投資,経済,アクティブ運用,空間的分散,コモディティ

振り子の金融史観―金融史と資産運用振り子の金融史観―金融史と資産運用
(2008/03)
平山 賢一

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「賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ」とはよく言ったものですが、本書は歴史から学ぶためのヒントを与えてくれる良書です。様々な過去の出来事から、現在の応用可能な知識の抽出を行った画期的な本だと思います。


貨幣の役割には、

  ①価値の尺度としての貨幣
  ②交換手段としての貨幣
  ③価値の貯蔵手段としての貨幣

と3つに分けられますが、歴史的に見ると、過去に重視されていたのは、①、②の役割で、③の役割は最近になって台頭してきた価値観です。③が台頭することにより、価値の貯蔵がより効率的に出来るようになり、富の最適な分配が可能になってきたとも言えます。

すなわち、③は、貨幣の価値を貯蔵する機能を重視した利子肯定型であるのに対し、①②は貨幣の交換機能を重視した利子否定型の価値観であるとも言えます。

歴史上は、貨幣に対する利子を否定する考え方もありました。



タイトルにある振り子の金融史観というのは、金融の歴史が「振り子」の振幅のように楽観と悲観、期待とリスク、レバレッジとデレバレッジの二つの極を行き来しているということを表しています。

そういった歴史を踏まえて考えると、導き出されるものの中に、

  ・アクティブ運用の有用性
  ・コモディティの利用価値
  ・空間的ではなく、時間的資産運用法

というのがあります。

インデックスファンドを利用したパッシブ運用がテクニカル分析やファンダメンタルズ分析と比較して長期的な観点から、より収益を上げるのに理に適った方法であることはよく知られていることだとは思いますが、インフレ期に至っては、短期的にアクティブ運用が優れているということが言えそうです。

インフレ期には、限られた企業の高パフォーマンスと、一般企業の実質収益率の落ち込みという二極化が発生しやすい環境にあるからです。

また、コモディティは信用通貨と対極の動きをするので、分散効果という面から見ても、有力なアセットクラスだと言えそうです。

そして、既にグローバル化されてしまった現代では、空間的な分散投資の効果が薄まっていることを著者は指摘しています。未来を占うとすれば、よりすぐれた分散投資は空間的(世界的)分散投資より、時間的(長期と短期)分散投資ということになります。



本書は金融史という教科書的な内容も含みつつ、それを一般読者向けに書き下ろした良書であると思います。

学びの多い一冊でした。




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大暴落1929


12 02, 2008 | Tag,経済,投資,バブル,大暴落

大暴落1929 (日経BPクラシックス)大暴落1929 (日経BPクラシックス)
(2008/09/25)
ジョン・K・ガルブレイス

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この本は活かす読書:大暴落1929 で紹介されていて、面白そうだと思い手にした本です。

本書はタイトルにある通り、1929年の株価大暴落を詳細に記録した本です。1955年に初版が発刊され、その後バブルがはじけるごとに売れてきた本ということですが、できればバブルがはじける前に読んでおきたい本です。過去と同じことが未来に起こるとは限りませんが、過去から学ぶことは未来に備えるという意味で大切だと思います。歴史は繰り返されると言います。過去と全く同じことは起こらなくても、似たようなことが起こりうるのです。そういう意味で本書は未来への一冊となると思います。


最近、すべての経済はバブルに通じるを読みましたが、内容はとても似ています。どちらもテーマは”バブル”なわけですが、すべての経済はバブルに通じるの方が”現代”に即して書かれているので、どちらか一つと言ったらこちらをお薦めします。


本書は1929年とその前後の投機ブーム、群集の心理、株価を左右する大統領やFRBの声明などが詳細に分析され掲載されているので、とても説得力があります。


本文中の言葉で印象的だったのは、政府が国民を安心させるために

  「経済は基本的には健全である」

  「ファンダメンタルズは問題ない」

と言っているときほど、その言葉を疑わなければならないということでした。
政府がこんな言葉を言っていたら要注意です。


さらに、大暴落を引き起こす要素として、”市場のムード”というのも大切です。市場が悲観的なムードでなければ、株価はしぶとく上がったり下がったりを繰り返しながら、なんとか持ちこたえます。ところが、引き金を引く投資家がいて、市場の悲観的なムードが存在し、さらに追随する群集がいると、バブル崩壊は一気に加速します。



今後10年先か20年先か分かりませんが、バブルはまた形成されると思います。その時までいかにして今の教訓を心に留めておくかが問題です。どうしても人間は良い面ばかりに目が行ってしまいます。バブル下にあるとき、バブル自体に気付くのは難しいことではないかもしれません。しかし、それを認めるのは結構難しいのではないかと思います。欲に目がくらんで「まだいける」「まだいける」と考えてしまいそうです。

積み立て分散型のインデックスファンドだってバブルが崩壊することが予想できるなら、暴落前に一旦売りに出して暴落後に再度買いなおす方がよいはずです。

個別銘柄を長期保有する場合もそうです。



言うは易しですが、”この状況はいつまでも続かないと自覚すること”、”欲望に負けず、勝っているときに勝負から降りること”、”負け始めてしまったら、いつまでも過去の栄光に縛られず、厳密に自分の損切りルールに従うこと”、が大切なのではないかと思います。




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ハイエク 知識社会の自由主義


11 21, 2008 | Tag,ハイエク,ケインズ,資本主義,自由,池田信夫,インターネット

著者はアルファブロガーでもある池田信夫さんです。
池田信夫 blog

経済学者はおそらく学者として自分のことを認識しているのであれば、あらゆる社会現象を説明しうる理論というのを求めているのだと思います。

本書はフリードリヒ・フォン・A=ハイエクさんを引用し、著者が現代の経済学に対する一つの解を示している本なのだと思います。

様々な学派がありますが、経済学がいまだに一つの学問として答えに行き着いていないところを見ると、とても難しい学問であることが良く分かるし、まさに答えのない学問なのかもしれません。

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)
(2008/08/19)
池田 信夫

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本書は分かりやすく書いた本だと著者は文中で語っていますが、おそらくこれは経済学を一通り勉強したことのある人にとってです。本文中には経済学の繁栄の基礎を築いた偉人がたくさん登場し、それに関する引用も細かく記してあり、その体裁はさながら論文のようです。

当ブログ:容疑者ケインズ―不況、バブル、格差。すべてはこの男のアタマの中にある。でも触れましたが、経済を考える上で理解しておくべき立場は、市場はもともと効率的であると主張する古典派と、政府は金融政策や財政政策を積極的に行うべきと主張するケインズ派の二つが主流でしたが、ハイエクはこれらの説とは違う立場にいます。

ハイエクは、人々は不完全な知識のもとで、必ずしも合理的とは言えない慣習に従って行動する、と主張しています。

社会主義や新古典派に共通する合理主義完全な知識という前提を批判し、ケインズ的な計画主義をも批判しています。そしてハイエクは、「不完全な知識に基づいて生まれ、常に進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ」、という予言をしていて、これは現在のインターネット社会の繁栄を予言するものとなっています。

インターネットを例にとってみても分かるとおり、現代が知識社会であればこそ、ハイエクの予言は真実味を帯び、私たちは多くを参考にすることができるのだと思います。



経済学はいまだに答えが出ていないと記述しましたが、これは何も経済学に限ったことではありません。医学もそうですし、どの学問についても言えることでしょう。だからこそ、学問として成立するわけで、今日の常識が明日の常識ではないかもしれない、真実に対する探求こそが学問の魅力なんだと思います。



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