学生の時は与えられた問題を解いて、あらかじめ用意されていた答えに到達することが評価されてきました。いかに早く正確な答えを導き出すか。それはそれで大事なトレーニングだったとは思います。
ところが社会人になると問題は問題でも、もともと答えがない問題も多いです。
医者をやっていると、珍しい疾患に遭遇することがあります。
珍しいといってもきちんと教科書を読めば解説が載っている疾患から、教科書には載っていない疾患までいろいろあります。
疾患自体はすぐに調べられても、治療法が確立されていない場合もあります。手術をしたほうがいいのか、手術をせずに治療をしたほうがいいのかとか。
そんな時はインターネットを使って、論文を検索し、似たような症例から妥当そうな治療法を考えます。
調べるときのコツはやみくもに思いついた検索ワードを打ち込むのではなく、当該疾患、当該疾患+治療法、類似疾患+治療法など効果的なキーワードを、よく考えてはじめに絞り込むのが重要です。でないと時間がかかりすぎて他の仕事に手がまわりません。
限られた時間でサクっと答えを見つけられるように初めによく考えます。うまく考えがまとまらないからといって、何も考えずに検索を始めるとろくな事になりません。
このように仕事をする上で困ったことがあるなら、答えを見つけることだけに心を奪われるのは逆に遠回りだったりします。問題が何なのか、問題は適切なのか、解決するためには何が必要なのか。そこを十分検討してから答え探しに移るというプロセスが大事です。
かく言う僕もあまり深く考えずに森の中に飛び込んでしまうことがしばしばです。そして木を見失うという。。。
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」という本は、まずは問題をきちんと見極めることから始めるのが大事なんだと認識させてくれます。
冒頭から
「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
「知れば知るほど知恵が湧く」より「知りすぎるとバカになる」
「一つ一つを早くやる」より「やることを削る」
「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
など示唆に富む言葉が多く、惹きつけられます。
的確な問題設定を行い、問題を解くための適切な情報収集を行う。相手に伝えるために話を組み立て、図式化する。これです。
本書は普段の仕事でより上手に成果をあげるための、正攻法が書いてあります。マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の著者らしく、よりビジネスマン向けの実践的な内容になっています。
ビジネスマンじゃなくても役立ちそうですよ。
著者のブログ:
圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing