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新技術が生むジレンマ 【小説】ブラックペアン1988(上・下)


04 23, 2010 | Tag,海堂尊,小説

ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
海堂尊さんの作品で最も有名なのは、「チームバチスタの栄光の栄光」でしょう。

1・ 「チーム・バチスタの栄光」 (2006/01発売)
2・ 「ナイチンゲールの沈黙」  (2006/10/06発売)
3・ 「螺鈿迷宮」       (2006/11/30発売)
4・ 「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2007/04/07発売)
5・ 「ブラック・ペアン1988」 (2007/9/21発売)
6・ 「夢見る黄金地球儀」  (2007/10発売)
7・ 「医学のたまご」    (2008/01/17発売)
8・ 「ジーン・ワルツ」   (2008/03発売)
9・ 「ひかりの剣」     (2008/08/07発売)
10・「イノセント・ゲリラの祝祭」(2008/11/6発売)
11・「ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて」(2009/2/20発売)
12・「極北クレイマー」 (2009/4/7発売)
海堂さん小説 時系列表 海堂尊非公式ファンサイト!登場人物のリンクを見てみよう!
と多数の作品があります。


私が読んだことがあったのは、バチスタとナイチンゲール、ジェネラルルージュでした。いずれの作品も小説の中で医療問題が取り上げられており、奥の深い作品となっています。医療現場のことが鮮明に書かれていて、すごく共感できることが多かったです。

今回の作品、「ブラックペアン1988」はバチスタよりも後に書かれていますが、時系列で見ると、それよりも前の時代が舞台です。時はバブル全盛期、私はこの時代を医者として経験したことがないのですが、先輩たちから噂には聞いていました。

製薬会社との癒着なんかすごくリアルで、接待はもちろん、学会で発表するスライド作りまで彼らに依頼しているシーンがあります。パワーポイントがなかった時代はスライド作りは大変だったらしいし、うわさ話にも聞きます。たぶん本当にあったのだろうと思います。

まあ、医局員が教授のためにスライドを作ったりすることはあっても、それは例外で、今は基本自分でスライドを作っていますよ。



読んでいて、医療現場において新しい技術が普及し始めるときってこんな感じだよな、と考えさせられた部分があったので書いてみます。

新しい技術が生むジレンマについてです。

ジレンマの主役は食道と小腸をつなぐ新しい器械、「スナイプ」です。



最も難しい外科の手術に食道癌の手術があります。癌を切除して、食道と小腸をつなぐ場面、ここが一番緊張する瞬間です。手技も難しい。うまくつなげなくて中身がモレてしまう(リークする)と大変です。

食物の通り道は体の外とつながっている汚い場所です。それが無菌状態である食道の外にモレでたら。。。感染症を起こして最悪死につながります。

だから食道と小腸をつなぐ技術は、限られた人が長い年月をかけて習得していく職人技でした。

ところが、このスナイプという器械は誰でも簡単に食道と小腸をつなぐことができるように開発されたものでした。開発ドクターは特定の術者にしかできない手術を、よりたくさんの外科医ができるような手術に変えようとしていました。



この考え方に私は賛成します。外科系ではどうしても手技の上手い下手が分かれます。才能が関与する部分も否めません。地方によって手術の成功率に差があったり、いわゆる手術のうまい医者にタイミングよく巡り会えなくて失敗しました、では不公平だと思います。

だから、できるだけ標準化、汎用化された術式というものが必要です。

しかし問題は、スナイプが登場すると、実際に食道と小腸を手で縫ってつなぐ機会が減ることです。もしスナイプが正常に動作しなかったら、もし予期せぬアクシデントでスナイプが使えなかったら、、、そういった弱みがあります。

新しい技術が登場する時はいつもこんな感じなのかもしれませんが、手術では患者の命がかかっています。必ずリカバリーショットが打てるようにしておかないといけない。

某大学病院で内視鏡を用いた前立腺癌の手術で問題になったことがありました。結局難しい手技の伝承という意味で外科系ではある程度の地道な練習が必要です。また、できる医者のバックアップも必要です。

とは言っても、失敗することばかり考えていては新しい技術は生まれません。そこがジレンマですが、ある程度リスクを考慮した上でチャレンジしていくしかないのだと思います。



本書を読んで、そんなことを考えていました。

純粋にストーリーだけ追いかけてもおもしろいと思いますよ。手術室の様子や大学病院の雰囲気とか、なかなか見ることのできない世界がリアルに描かれています。


チーム・バチスタの栄光(上) (宝島社文庫 599)
小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下) - メタノート
【小説】ナイチンゲールの沈黙(上・下) - メタノート


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