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体内金属インプラント 抜釘(ばってい)は必要か


03 24, 2010 | Tag,抜釘,整形外科,骨折,論文

以前に書いた手首の骨折(橈骨遠位端骨折) 最近の知見 - メタノートのエントリにコメントをいただきました。コメント主の方は手首を骨折してロッキングプレート固定により治療されたとのことです。その後、抜釘(体内に入れた金属を抜去すること)をするべきかどうか悩んでおられました。

最近ちょうどその抜釘に関する論文を読んだことと、日常診療で経験していることを合わせて書いてみようと思います。


参考:Hardware removal: indications and expectations. [J Am Acad Orthop Surg. 2006]


抜釘が必要だというもっともらしい理由

痛みの原因となる
スクリューが皮膚に触れるぐらい浅い位置にあったりすると、それが痛みの原因になったりします。原因がはっきりしていれば、それをとってあげることで痛みの症状はよくなるはずです。

しかし、骨は癒合しているのにどういうわけか痛みを訴える場合があります。こういう症例はむやみに抜釘をしない方がいいかもしれません。
というのも、抜釘をしても完全に痛みがとれたのは5割だとか3割で、それ以外は多かれ少なかれ症状が残ったというデータがあるからです。


医療者側としては、こういうデータを踏まえて抜釘する場合には痛みが残存するかもしれないということを十分患者さんに説明しておく必要があるでしょう。


発癌性がある
動物実験レベルで金属イオンがDNAに結合してタンパク質の合成を変化させてしまうとか言われてるみたいです。実際にはインプラントの発癌性については一致した見解がありません。証拠がないということです。

この論文では発癌性のリスクはあったとしてもとても小さいため、これを理由に常にインプラントを抜去する必要はないとしています。


金属探知機にひっかかる
これは仕方がないです。飛行機に乗る時に、手荷物検査で係の人に呼び止められてしまう。現在の金属探知機では、体内金属を検出してしまうことは少ないそうですが、どうでしょう。呼び止められることもあるのではないかと思います。そういう時のために、レントゲン写真のコピーを持ち歩くとか、主治医に診断書を作ってもらうように頼んでみるとかするといいと思います。



抜釘を行った時のリスク

再骨折の危険性
これはあるでしょう。金属を抜いたら、その直後は骨の中に空洞ができているわけですからね。例えば、スクリューが入っていたような場所はストレスが集中して折れやすいそうです。もちろん、骨が十分できていないうちに抜釘してしまっても折れてしまう可能性はあります。だから抜釘する時期としては手術後1年というのが一般的です。

金属を抜いた後も4ヶ月くらいは激しい運動を避けて、再骨折に注意する必要があるとも述べられています。

日本の病院だと抜釘したら1ヶ月もしないうちに、「あとはご自由に」的な対応をされるかもしれません。再骨折のことを考えると、十分用心した方がいいです。


手術そのものの危険性
抜釘とは言ってもそれは手術ですからね。それに伴なうリスクというのも生じてきます。例えば、血管や神経の損傷、傷の問題等です。抜釘に伴って3%の症例になんらかの合併症が生じたという報告もあります。

逆にインプラントを抜かなかった場合ですが、インプラントを入れておいたからといって、インプラント周囲の骨折を誘発するというデータはほとんどありません。十分な骨癒合が得られていれば、強度としては完全になるということです。激しいスポーツをしてもOKです。



小児の場合

大人と同様の理由で、ルーチンには抜釘することはありません。

日本だと子供だからという理由だけで抜釘している施設もあるかもしれない。




この論文はアメリカのものですが、以上を踏まえた上での結論としては、「ルーチンに抜釘をする必要はない」です。

ただ、日本ではそうは言っても、金属が何か問題を起こしたら嫌だという心理もあり、抜釘を行うことが多いと思います。

日本では抜釘に対してきちんと診療報酬が定められていますし、保険会社もこれに対してお金を給付します。アメリカは保険会社のチェックが厳しいですから、絶対には必要でない抜釘に保険会社がお金を払ってくれないのかもしれません。

アメリカの事情とかを知っている医師だと抜釘する必要ないと言うかもしれません。日本だと担当医の考え次第でやるやらないを決めているのが現状ではないかと思います。個人的には他の国では抜釘していないのに、日本では抜釘するというのもおかしな話かなと思っています。

コメント主さんの質問にあったように橈骨遠位端骨折において、ロッキングプレートを留置しておいたことでFPL(長母指屈筋腱)が断裂したという報告がありますが、多くはそういうことは起こらずに経過します。

問題ないとはいえ、体内に異物がいつまでも存在しているのは気持ちが悪いという人もいるかもしれません。気持ちはわかりますが、その場合は上に書いたような抜釘する場合のリスクも少し頭の中に入れておくといいと思います。


あ、例えばステンレス製のインプラントが入っている場合はMRIを基本的に撮れないことになっているので気を付けてください。チタンならOKです。最近のプレートとかだと、チタン製のものが多いですけど、まだまだステンレス製もなくなっていません。MRIが威力を発揮するような疾患、例えば脳梗塞とか、なんらかの基礎疾患を持っている人は主治医と相談して抜釘するかどうか決めるのがいいと思います。

抜釘を希望する人は最初の手術後、約1年がそのタイミングです。
もし抜釘の手術をうけることになっても、インプラントが抜けないリスクというのもあります(骨ができすぎていて抜けなかったり、スクリューのネジ山が壊れていたり)。担当医から術前に説明があるとは思いますが、念のため付記しておきます。




-9 Comments
By あや04 12, 2010 - URL [ edit ]

プレートを入れたままの人たちの話だと、「よくプレートを入れたままにすると、冬や寒い日に冷えて痛みが増す」と、聞きました。自分も今取るか悩んでいるところです。先生の話だと取っても、取らなくてもいいと言われました。

By flowrelax04 12, 2010 - URLedit ]

あやさん、コメントありがとうございます。

プレートを入れているから寒くなると痛みが増す、というのは正しくない情報だと思います。

骨折後しばらくしても痛みが残るというのは、手術で治療してもギプスで治療しても、どちらでも起こりうることです。

プレートを外すには、外すためのタイミングがありますのでよく主治医の先生と相談してくださいね。

By こじろう06 21, 2012 - URL [ edit ]

友人が鎖骨折った際にはプレート入れたままで放置してましたが
受傷箇所を下向きにして寝ると圧迫感があって気になるとの事。
あとリュックを背負うとネジに当たって痛いらしいです。
結局抜くことにしたみたいです。

By flowrelax06 22, 2012 - URL [ edit ]

こじろうさん、コメントありがとうございます。

鎖骨は皮下組織が少ないので、皮膚からプレートが触れやすいです。

その友人の場合、抜釘して正解だったかもしれませんね。症状がとれていれば良いのですが。


By こじろう06 27, 2012 - URL [ edit ]

鎖骨にプレート入れた友人は
とにかく再手術をいやがってました。
私は手の甲あたりにネジが入ってますがそのままです。
いれたままの理由は特に影響がないからです。

By mjo11 06, 2012 - URL [ edit ]

こんばんは。今年の2月にスケートボードで転倒し腓骨と後踵骨を複雑骨折した者です。今現在は、一種の中毒みたいなもので懲りもせず痛みが出るまで乗って消えたらまた乗ってを繰り返している状況です。チタンプレートとスクリュー7本程の固定で、軽く触れて分かるほど浅い位置にあるのですがインプラントの除去はやはりしない方が賢明でしょうか?

ただいま29歳で、取るのであれば1年後と聞いております。骨の付きが悪く松葉づえが取れるまで4カ月もかかった事もあり本当に迷っています。お忙しいと思いますがアドバイス等頂けると助かります。良いのか悪いのか、自分の判断でカルシウムのサプリを常用している事にもなにか意見があればぜひお教え下さい。長々と申し訳ありません<m(__)m>

By flowrelax11 09, 2012 - URL [ edit ]

mjoさん、こんばんは。

質問にお答えします。はじめに申し上げておくと、骨折型や治療の経過がわからないので、はっきりしたことは言えず、一般的なお話にとどまることをご了承ください。

治療に時間がかかったとのことですが、現在はきちんと骨癒合が得られているのでしょうか?そうでなければ、スケートボードのような足に負担のかかるスポーツは危険です。偽関節になるリスクを増やしてしまいますので。

もしきちんと骨癒合が得られたなら、スケートボードを行ってもオーケーだと思いますが、関節の固さが残っていると復帰してもすぐに足を痛める原因になるでしょう。できれば関節の固さをとってあげてから復帰したほうがいいと思います。

インプラントそのものは体に入れておいても問題無いですが、靴を履いた時にインプラントが当たって痛いなどの症状があれば抜去すると良くなるでしょう。それ以外の原因で痛みを生じているのであれば、必ずしも抜釘したからといって痛みが良くなるわけではないので注意が必要です。

患者さんの中には体の中に金属が入っているのがどうしても嫌だからという理由で抜釘を希望する人もいます。それはそれで気持ちは理解できますので、抜釘を希望する理由にはなると思います。

また、私が主治医なら抜釘後3ヶ月はスケートボードをやらないように指導します。抜いてからしばらくはまた骨折するリスクがあるからです。スケートボードを中断する必要があることは覚悟したほうがいいです。

抜釘のタイミングですが、手術後1年が目安となりますが、これは骨癒合が順調に得られてからという前提があります。もし骨癒合が遅れたなら抜釘のタイミングも遅らせる必要があるので注意が必要です。

カルシウムなどのサプリは骨癒合を促進すると証明されているわけではありません。一日三食栄養バランスのとれた食事を摂ることは大切です。タバコは骨癒合を遅らせますので、もし吸っているのであればやめた方がいいです。

以上です。なかなか決定的なアドバイスはできませんが、最終的には主治医の先生とよく相談したほうがいいですよ。抜釘の手術をやってくれるのはその先生なのですから。

参考になれば幸いです。

By mjo11 13, 2012 - URL [ edit ]

だいぶ遡ったエントリーに関わらず、こんなに丁寧な返信をいただいて感謝しかありません。骨癒合は完璧とは言われています。関節の稼働域も理学療法士の担当から褒められるぐらい回復していて(関節の痛みはありますが)、残る問題は金属を取るか取らないかでした。まだ決断には至りませんが、時間はまだまだあるのでflowrelaxさんの意見を参考にゆっくり考えたいと思います。主治医にもさんざん言われましたがタバコはやめれないかもしれません…(笑)スケボーもやめれないし困ったものです。我慢を覚えなければですね。本当にありがとうございました!

By 通りすがり11 26, 2013 - URLedit ]

意味もなく生体材料を体内に長く留置するのは感染のリスクからみるとよろしくない気がします。

若い時に入れていた生体材料が、高齢になって免気力が低下して・・・・!

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