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雇用するものされるもの  「沈まぬ太陽」


01 05, 2010 | Tag,医師,労働,労働組合,全国医師ユニオン

「沈まぬ太陽」という小説を読んだ。
著者は山崎豊子さんで、「白い巨塔」や「華麗なる一族」などの作品でも有名。


「沈まぬ太陽」では主人公が巨大航空会社の一員という設定。主人公は旧態依然とした巨大組織に属しながら、労働者としての権利を主張し続ける。

しかし、それを疎ましく思った会社側は主人公を不当な差別人事で海外での僻地勤務を半ば強制する。

海外勤務を転々とした後、主人公は自分がこれまで受けてきた人事について公の場で証言する機会を得、ようやく日本での勤務を勝ち取ることになる。

しかしながら、それでも会社からの差別人事は終わらず、日本での勤務先はいわゆる窓際族のようなもの。


この小説の前半はおおまかにそんな内容となっている。


感情移入しながらこの作品を読んでいた。主人公が労働時間や給料のことなど、労働組合の代表として会社上層部と掛け合うシーンは本当に応援したくなるものだった。本書に登場する利益至上主義の航空会社からすれば、うるさいハエのような存在だろうということも容易に想像できた。

でもあくまで僕は一労働者としての見方しかできない。自分がそうだから。

会社側が主人公を労働組合と分断させておくために、主人公に島流し同然の僻地勤務を強いていたことには特に憤りを感じた。

労働組合の長だったとしても、任期を終えればただの人。それを会社の傘を借りた巨大な権力でつぶしてしまおうという姿勢が卑劣だった。

これは小説の中での話で、しかも舞台は昭和。それはわかっている。

この状況を単純に今にあてはめることはできないが、山崎豊子さんの作品はいつもその時代の社会背景をうつし出している。



翻って医師の労働環境はどうだろう。

大企業との大きな違いは労働組合がないことだ。各病院にたくさんの医師が勤務しているが、医師の労働組合がある病院というのは聞いたことがない。病院職員や看護師などのコメディカルで形成された労働組合はある。

きつい仕事を行っているのは若い医師で、その若い医師は短いインターバルで病院を異動するということも関係しているだろう。

朝から晩まで働いて、夜時間内までに勤務が終わることなどなく、夜間に呼び出しがあれば病院にとんでいくのが医師の仕事だ。開業の先生や大きな病院でもベテランに位置づけられる医師たちはこの限りではない。

医師の仕事は多少自分の時間を犠牲にしても、患者さんから「ありがとう」と言われ、感謝されるからやりがいがある。いい仕事だと思う。

でもその仕事はあくまで労働であると思う。医師も人間であるから働けば疲れるし、時には病気になることだってある。これは個人的な意見で、自分の仕事を労働と思っていない医師も結構いる。


労働時間とか給料の話をすると、病院経営者側からはまずいい返事が返ってこない。医は仁術だから、医師は自分を犠牲にしても患者さんのために尽くすんだ、なんて綺麗ごとを本気で言っている人もいるくらい。

院長を始め、病院経営幹部は労務のことに疎い場合もある。うちは年俸制だから時間外労働に対する手当は払わない、なんてことを平気で言ってたり。

医師の時間外労働を認めていたら、人件費はかさむ一方だろうから病院側としてはおもろくないはずだ。

医師の労働組合というのは各病院に存在せず、待遇について不満があれば個人で直訴するしかない。

個人の力は弱いものだ。圧倒的に弱い。病院に個人で直訴しても簡単に握りつぶされてしまう。訴えが正当であったとしても、経営者側はあらゆる権利を動員してその個人の訴えを封じにかかるのだ。

これは僕の身の回りでも実際にあった。

このあたりは「沈まぬ太陽」の世界と変わらない。



最近見つけたのだが、


というのがあるらしい。


医師の労働組合だ。病院単位ではなく、全国区での組織になっている。これに所属すれば直訴を簡単に握りつぶされることはないだろう。少なくとも個人行動してるよりずっと説得力が増すはず。

僕は年会費2万円にひるんで、入会におよび腰になっている。月2000円弱と考えれば、そんなに高いものではないような気もするのだが、まだ行動に移せていない。

組合員になったとたん、「沈まぬ太陽」の主人公がアカのレッテルを貼られたように、病院から変なレッテルを貼られたりして。いや、さすがにそんなことはないと信じているが。


行動を起こすための一つの手段として、医師ユニオンに入会するのもいいのかなと思った次第です。

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