スポンサーサイト


-- --, --

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


この国は医学教育のあり方から変革していくべきかもしれない 「アメリカ臨床医物語」 


12 17, 2009 | Tag,医療,医療制度,臨床医

タイトル通りアメリカでの臨床医生活をつづった一冊。
アメリカで働いたことのない日本の医師ならアメリカでの臨床がどんなものなのか気になるはず。
そんな期待にこたえてくれる一冊です。

同じ医療をやっているはずなのに、アメリカと日本ではかなり違うようです。
医学教育や研修制度、その後の医師としてのキャリア形成に至るまでです。

アメリカ臨床医物語―ジャングル病院での18年アメリカ臨床医物語―ジャングル病院での18年
(2003/07)
中田 力

商品詳細を見る
著者は東大医学部を卒業し、カリフォルニアに臨床をやるために渡米、カリフォルニア大学の教授にまでのぼりつめ、その後日本に帰国。
現在は新潟大学脳研究所・脳機能解析学・教授、そして 新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター長を併任されています。

全体的に本書ではアメリカの医療システムの良いところが強調されていると思います。
それに対して日本の医療制度が遅れていることを嘆くと同時に、日本が厚生労働省主体の、中医協を中心とした診療報酬制度のシステムから脱却することも期待しています。


教育のこと

医療教育の面では日本では高校卒業後に大学医学部を受験し、6年間の医学教育をうけ、国家試験に合格することで医師免許が授与されます。
それに対してアメリカでは4年制大学を卒業した人たちがメディカルスクールを受験します。
そして合格後4年間の医学教育をうけ、それから医師になります。しかも、アメリカの医学教育は臨床研修が主体だそうです。

よく言われることに、医師免許を取得した時点でのアメリカの臨床医としての実力が違うと言うことがあります。
アメリカのメディカルスクールを卒業した人は、日本の医師の卒後5年くらいのレベルだそうです。
たしかに、日本の医学教育は座学主体で、たびたびある試験さえ通れば、医師免許を取得できます。
実地訓練主体とは程遠い状況です。その点アメリカの方が効率的な医学教育システムだと言えるかもしれません。

もうひとつ、アメリカでは4年制大学を卒業した後に医学部を受験します。
日本では高校卒業後です。
べつに大学を卒業して社会人を経験してから医学部を志すこともできますが、それは少数でしょう。
高校時代に偏差値が高かったし、失業する危険も少ない安定した職業だからと医師を志す人も少なくないと思います。

医師として最も大切なのは学力ではなく、適性であると著者は言います。
学力も適性に含まれる、とは思いますが自分自身が医師に向いているのか、医師としての過酷な労働に耐えられるのか、それでも本当に医師になりたいのかを判断するのに18歳という年齢は若すぎると。
このあたりは納得いく部分です。


開業のこと

また、「へー」と思ったのは病院と開業医のあり方が全然違うことでした。

アメリカでは、特別な医療機器をそろえなくてもオフィスを開くことで、ほとんど身一つで開業することができるといいます。
検査や手術なんかは契約している病院に出向いてやるそうです。

日本で開業するためにはある程度資金を貯めて、自分のところで一通り検査、診断、治療を行うことができないと話になりません。
この仕組みだと開業医は自分の医院を維持するために、儲けのことを考えて診療することになります。
採算の取れない医療はやらない。
利益を追求する医療行為が必要になるわけです。

ほとんどの開業医が入院患者をもてないことも開業医の診療内容に影響を与えていると思います。
アメリカのように気軽に自分の患者さんを病院に入院させて治療ができるといいと思います。
しかし、その場合入院させた病院で誰が治療にあたるのかが残された疑問です。
手術をしたら、その前後には周術期管理といって注意深く見守る、手のかかる時期があります。
アメリカでは、日本のように開業医が患者を病院にほとんど丸投げという感じではないのでしょうかね。
それとも、周術期管理を専門にみてくれる医者がいるとか!?

アメリカの病院の経営者は医師ではなく、医師は病院にとってあくまでパートナーだそうです。
だから、医師が頑張ってたくさん患者を治療すると、病院が儲かり、その利益を病院の施設向上に役立てるからその病院はより魅力的な病院になる。
そうすると、その病院にはよりたくさんの医師が自分もパートナーになると言って集まってくると。
たしかにこれは好循環です。

日本では頑張ったら病院がよくなるなんて意識の人はいないんじゃないかな。



他国の医療システムを知ることは自分の国の医療システムを見つめなおすのにいい方法です。
普段当たり前として考えていた日本の医療制度がもっと改善の余地があるものなのだと考えさせられました。

残念ですが、著者が日本で大学教授というそれなりの発言権を持った立場に立っても、それ以降、日本の医療制度はほとんど変わっていません。

アメリカでは制度を変えるのは政府ではなく、自分たちだという意識が根強いとも著者は言っています。
そうやって様々な制度をよりよいものに作りかえてきたのだと。
日本の医療制度を変えるためには私たち一人一人が立ち上がらなければいけないのかもしれません。

アメリカ臨床医物語―ジャングル病院での18年アメリカ臨床医物語―ジャングル病院での18年
(2003/07)
中田 力

商品詳細を見る



-0 Comments
Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
-0 Trackbacks
Top
最新記事
Amazon
リンク
Ads
月別アーカイブ
ライセンス
Creative Commons License
この作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
Related Posts with Thumbnails
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。