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医療費高騰の真犯人は? 【書評】「改革」のための医療経済学


05 01, 2009 | Tag,医療,医療費,医療経済学

「改革」のための医療経済学「改革」のための医療経済学
(2006/07)
兪 炳匡

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驚きました。医療問題の本質が全く分かっていなかった自分に。しかし、これは多くの日本人も勘違いしているところではないでしょうか。なぜなら報道されている医療関係のニュースですらことの本質を見抜いてないのですから。


例えば「医療費高騰の原因は人口の高齢化が問題である」という説。

本書では医療費高騰の本当の原因は人口の高齢化が問題であるということをこれまでに発表されている論文から反論しています。一見正しそうに見えるこの説も、間違いであることが示されています。


このように、「医療において希少な資源・財・サービスを、競合する目的のために配分・選択する仕方を研究する」のが医療経済学です。お金儲けや会計、経営とは別分野の学問であることを認識しておく必要があります。

医療費など、お金の話が多く出てくるのは医療という社会全体の一分野を、社会全体の中で貨幣という価値を用いて最適に配分する必要があるからです。


本書の著者、兪 炳匡さんは日本で臨床研修を行った後、ハーバード大学など米国の大学で医療経済を学んだあと、現在も米国で研究、教鞭をとられている方です。


疑われた5要因
1.人口の高齢化
2.医療保険制度の普及
3.国民所得の上昇
4.医師供給数増加
5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差


1.人口の高齢化

米国では65歳以上の人口の割合が8%(1950年)から12%(1987年)に上昇した期間に医療費が425%上昇したのに対して、人口の高齢化は15%寄与しました。このことは人口の高齢化の寄与率が、医療費の総上昇率のうちわずか30分の1(3.5%)であったことを示しています。


2.医療保険制度の普及

米国で公的・私的を含めた医療保険制度が普及した結果、患者の窓口負担が平均値で67%(1950年)から27%(1980年)に低下しました。この負担率の低下とランド(RAND)医療保険研究の研究成果である価格弾力性をもとに、医療需要は50%上昇したと算出されました。同じ期間に医療費は290%上昇しているので、医療保険制度の寄与率は約17%になります。
(価格弾力性の説明は省略)


3.国民所得の上昇

1940年から1990年までの期間に、米国の実質国民所得は180%上昇しました。また、過去の実証的研究の結果をもとに所得弾力性を0.2~0.4%と仮定すると、国民所得上昇は医療費を35~70%上昇させたと算出できます。この期間の米国の総医療費は780%上昇しているので、国民所得上昇の寄与率は約22分の1~11分の1になります。
(所得弾力性の説明は省略)


4.医師供給数増加

10年ごとの医療費の変化率と医師供給数の変化率の相関関係をみると、経時的に一定な相関関係は認められなかったと示している論文があります。つまり、10年ごとで見ると、医療費が増えている時期と医師供給数が増えている時期に違いがあったということです。


5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差

医療分野の生産性の上昇がその他の産業分野より低い場合、相対的に医療分野の価格は上昇します。生産性の測定の例として、高血圧の患者さんの収縮期血圧を120mmHgに維持するのに必要な人的資源・医療資源が、過去30年にどう変化したかを測定したものがあります。これに比べると、理容店や美容室で一人の髪を切るために必要な時間はほとんど変化しておらず、よって医療の生産性が上昇しているのは明白だと述べている論文があります。



いずれもこれまでの研究結果をもとに書かれているので、信頼性はあると思います。


これらを踏まえて医療費高騰の本当の原因は「医療技術の進歩」という結果が出ています。つまり、急性期医療で行われる医療行為が医療費高騰を招いているということです。


意外でした。個人的には特に1の人口の高齢化と4の医師供給数の増加が、全体の医療費増大にそんなには寄与していないということが驚きでした。つい最近まで医師は供給過多だからといって医学部の定員を減らすような政策を作っていた厚生労働省はなんだったのでしょうか。



日本で医療経済学が盛んでない原因の一つに研究に必要な自治体や国レベルでの大規模なデータが入手しづらいことが関係しているようです。著者の兪 炳匡さんが現在も米国で米国のデータを使って研究されているのは、日本では研究材料が入手しにくいことが関係しているのかもしれません。

学問としては社会に貢献できるような結果を残せるほうが魅力的でしょうから米国で研究を続けているとのにも納得できます。

最近、日本ではDPCという包括医療制度が普及してきています。これにより患者や医療行為、病院経営についての現状が数字として把握されればもっと日本でも医療経済学が広まるかもしれません。


【関連記事】
医療経営学
このエントリの在院日数短縮に関する記載はいまひとつ的外れということになってしまいました・・・。




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