オプティミスト(楽観主義者)が人生をより楽しく、幸せに生きることについては異論の余地はなさそうなのですが、本書のすごいところは、楽観的になるのが、どうしてより良く人生を生きることにつながるのか、どうすればオプティミストになれるのかをデータに裏付けられたものとして提示してくれている点だと思います。
起きていることをどう捉えるかが、現象に対して幸せに感じるか、不幸せに感じるかの分かれ目です。ペシミスト(悲観主義者)は悪い事態は長く続き、自分は何をやってもうまくいかない、自分が全て悪いと考えます。それに対してオプティミストは、敗北も一時的なもので、その原因もこの場合にのみ限られていると考えます。そして挫折は自分のせいではなく、その時の状況とか、不運とか、他の人々がもたらしたものだと信じるのです。
そうなのです。オプティミストは言ってみたら利己的に世界を解釈する人達なのです。だから、彼らの思考が暴走すると周りが迷惑したり、危ない面もあるのです。
楽観主義は健康維持にも役立ちます。この部分は非常に腑に落ちました。その理由を3つ以下に述べます。
1.楽観主義は免疫機能を高める。
2.楽観的な人は健康のために摂生し、医者のアドバイスを聞く。
悲観的な人は、「どうせ自分は病気になる」という風に健康を維持しようとする考えが湧かない。
3.楽観主義な人は一生のうちに不幸に遭う確率が少ない。
解雇や離婚、そういった不幸なイベントにはペシミストの方が遭遇しやすいのです。不幸なイベントはうつ病の引き金になったりします。
そして楽観主義になる方法
ABCDEです。
A(Adversity ) : 困った状況
B(Belief) : 思い込み
C(Consequence) : 結果
D(disputation) : 反論
E(energization) : 元気づけ具体的にはこのように使います。
困った状況:友達から借りた高価なイヤリングをなくしてしまった。
思い込み:私はなんて無責任なんだ。友達はきっとすごく怒るだろう。絶交されるかもしれない。
結果:がっくしりして友達に電話をする勇気もなく、ふさぎこんでいた。
好ましくない悲観的な考え方ですね。
そこで、次のプロセスに進みます。
反論:運が悪かっただけ。友達はきっとがっかりするだろうけど、事故だってことはわかってくれるはず。このアクシデントで友達が私を嫌いになることはないだろう。だから、自分のことをそこまで無責任だと思うのは間違っている。
元気づけ:イヤリングをなくしたのは本当に申し訳ないと思うけど、これで友情が終わってしまうとは思わない。そう考えると、もっと気持ちを楽にして友達に電話がかけられる!!
これは認知療法です。
反論の部分で今考えていることが「本当にそうなのか?」「根拠はあるのか?」「別の見方はできないか?」と考えることが大切です。
これをやる上でさらに大切なことは、頭の中で考えるだけではなく、必ず紙に書いて実行してみることです。
実のところ様々な状況に対応するためには楽観的になるだけでは足りません。ペシミストが優れている点は現実をオプティミストより正確に把握できる点です。セールスなどの分野では特にオプティミスト的要素が強みになるでしょうが、弁護士のように現実を正確に把握するペシミスト的要素が必要とされる職業もあります。バランスの良さが一番大切なのです。
本書では、他にもうつ病の話や子育ての話も出てきて、その点も興味深いと思いました。
良書だと思います。
うつ病と認知療法について
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