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医療崩壊


09 09, 2008 | Tag,医療,医療崩壊

とても納得できる本でした。
著者は某有名病院の部長(その科のトップ。実際のイメージは部長というよりは取締役みたいな感じかな)です。
医者からの目線で書かれています。

・医師と患者、司法、警察の医療に対する考え方のギャップ
・崩壊したイギリス医療
・立ち去り型サボタージュ(勤務医をやめ、開業医になることを選ぶ医師が増えている。)
・医局制度の問題点と医師のキャリア
・厚生労働省の問題

について主に述べています。
内容を少しずつ、主観的な解釈を加えて公開します。

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
(2006/05)
小松 秀樹

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考え方のギャップ
について

医師は医療を完全安心なものとは思っていないのに対し、患者はおろか、検察、弁護士、警察までもが完璧な医療というものに幻想を抱いている。

例えば手術に関連した医療訴訟があって、ある弁護士はマニュアルがないことを問題視したそうです。マニュアル通りにやれば誰がやってもミスなく、手術を行うことができるのか?
答えはノーです。
難しい手術になればなるほど、術者の経験や勘が必要になります。
これがマニュアル通りやれば出来るんだったら、研修医でも出来てしまいます。
経験を積まなければ出来るようになりません。
一流のシェフになるためには、たくさん経験を積まなければならないのと一緒です。一流シェフが作る料理の過程を全てマニュアル化できたら同じ味が再現できるのでしょうか?



イギリス医療の崩壊について

イギリスの医療では自己負担ゼロです。(医療経済学2
税金でほとんど賄われています。
この制度がどういうことを引き起こしているかと言うと、患者が必要なサービスを必要な時に受けれないという状況が生まれています。
具体的に言うと、自分の主治医を自分で選べないし(行政が決める)、風邪を引いても簡単にアドバイスをされるだけで、いよいよ具合が悪くなったからと言っても、入院まで2,3日待たされるというような状況です。
さらに、手術を受けるのもかなり待たされるので、待っている間に癌が進行するというようなことも起きます。



立ち去り型サボタージュについて

そんな状況では患者にうっぷんが溜まります。あたりまえです。
そうすると怒りの矛先はどこに向かうかと言うと、、、医師です。
暴力事件なんかも起きています。

こんな状況では医師は自国の病院にすらいる気にはなれません。海外に職を求めて移動することになります。


日本の立ち去り型サボタージュは勤務医から開業医への流れです。
待遇や訴訟の問題から開業医になる人が増えています。
ちなみに開業医と勤務医では労働は勤務医の方がきついのに、収入は開業医の方が多いといった逆転現象が起きています。



医局制度の問題点と医師のキャリア

教授を頂点とした縦割り制度ですね。
もちろん、その権力を利用した医局員の再配置はメリットも多いと思いますが、どこか歪んだ構造になっています。
医師として出世をして教授になろうと思ったら、何より論文を書かなければなりません。
論文はもちろんインパクトファクターが高い方がいい(代表格はNature,Sciense,Cellとか)。
インパクトファクターが高い雑誌というのは臨床医学の雑誌ではなく、基礎医学の雑誌に多いのです。そうすると、臨床の研究をやるよりは基礎の研究をやった方が実績につながるので、大学院では基礎の研究をやる、ということになります。
(もちろん、臨床の研究をバンバンやっている大学病院もあるとは思います。)

これってどうなんでしょうか?
基礎の医学研究をするのに医師の免許はいりません。理学部出身の人の方がよっぽどいい研究ができるのではないでしょうか?
それだったら基礎医学ではなく、医師しかできない臨床医学の研究に力を注ぐべきだと私は思います。
また、医師として脂が乗ってきたところに大学院に行って、研究の片手間にアルバイトで臨床をするというのはあまり合理的ではないと思います。



厚生労働省の問題は対応が常に遅いということです。

昨今話題になっている医師不足の問題。
どうしてこんなに切迫した状況になるまで気づかないのでしょうか?

原因の一つに厚生労働省の役人には現場をよく知る役人が少ないことが挙げられます。
医系技官といって医師免許を持った役人もいますよ。
だけど、多くの医系技官は医学部を卒業してすぐに役人になったり臨床の経験が乏しい場合が多いのです。



色々な点で考えさせられる本でした。




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