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救児の人々


10 25, 2010 | Tag,周産期医療

救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)
日本が世界に誇る周産期医療には光と闇がある。

光は言うまでもなく、周産期死亡率が低いことである。死亡率は低いほうがいいに決まっている。ちなみに周産期死亡率というのは妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡を合わせた時期の児の死亡率のこと(周産期死亡率 - Wikipedia)。

闇は発達した医療のおかげで、かろうじて生き延びることができた重症児も増えたということだ。もちろん、未熟児で生まれてきてもなんの障害もなく、成長する子供もいるだろう。しかし、命は救えたけど、人工呼吸器が手放せないような重症な子供が増えたのも確かだ。

今回読んだ本は、そういった新生児医療の光と闇にスポットを当てた本だ。

特に新生児医療に潜む問題点を鋭くえぐっているところに感心した。


どこまで医療を施せばいいのか?

赤ちゃんが母親のお腹の中で成長するとき、妊娠期間の満期(40週)に近ければ近いほど赤ちゃんは成熟する。早い週数で生まれるほど未熟児となる。現在の周産期医療は妊娠期間が20週に満たない場合でも助けることができたりする。

生きるか死ぬかをなんとか救うことも可能になった。しかし、なんとか救えた命の中には人工呼吸や経管栄養の管理など、家族にとってはかなりの負担がかかる状況に陥る場合もある。

もちろん「出来る限りのことをしてあげてください」という母親もいるが、なかには「これ以上何もやらないでください」と懇願する母親もいるそうだ。

どちらが正解なのか答えは出ない。医師は答えを出せない。担当した新生児科医も全力でその患児の救命にあたるだけだ。

こういう状況を踏まえて、これから母親になる人はお産がある程度リスクのあるイベントなんだということを自覚しておく必要がある。もしかしたら自分が障害をもった子供の母親になるかもしれないということを。


社会の受け皿が整っていない

不幸にも重い障害を持ってしまった場合でも、ずっと病院にいることはできない。

病院のベッド数には限りがある。新しく来る患者のためにベッドを空ける必要がある。

人工呼吸器がついている状態でどこに退院するのか?

基本的に自宅である。その場合の家族の負担はとても大きなものだろう。24時間付きっきりで見ていないといけないし、痰の吸引など、やらなくてはいけない処置も多い。

短期間でもどこかの施設に預けられれば、少しでも家族の負担を減らすことにつながる。

しかし、受け入れられる施設は足りていない。

つきっきりの看病のせいで何年も美容院に行っていない母親がいるという話を聞くと、国はNICUの拡充を叫ぶと同時に、その後の受け皿のことも考えるべきだと思った。新生児医療と障害者福祉は同時に考えていかなければ、片手落ちなのである。


救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)
(2010/05/25)
熊田梨恵

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あと、新生児医療をどこまで行うかについて、際限なく使われ、そのほとんどが公費で負担されている医療費に焦点が当てられていた点に驚いた。

我々医師であればそのあたりのことは当然のように分かることなのだが、本書ではジャーナリストとはいえ一般の人が新生児医療にかかる医療費について問題提起している。

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医療にも競争が必要である


07 29, 2010 | Tag,医療


医療戦略の本質―価値を向上させる競争
医療にも競争が必要である。医療における競争とは、一般に競争という言葉からイメージされるようなゼロサムゲームではない。

治療効果を上げて、コストを下げる。患者、医療者ともにウィンウィンな結果をもたらす競争だ。


高い値段のついた医療行為が必ずしもよい成績をおさめるわけではない。現状では過剰な医療や過小な医療が多くはびこっていて、なかなか最適なところに収まっていない。

ところが、各疾患における最適な医療行為というものを定義するのは極めて難しい。病態は患者により微妙に違ったりするからだ。


それでも、増大し続ける医療費を抑制するためにはひとつ、医療の評価法を大きく変える必要があるかもしれない。

たとえば、病院ごとに治療実績を評価するのではなく、疾患単位で治療成績を出して評価するのだ。「医療戦略の本質
医療戦略の本質―価値を向上させる競争」という本ではそのことが提唱されている。

この場合、大切になってくるのは治療だけにとどまらず、病気の予防から始まって、治療が終わり、その後の経過まで、という長いスパンでみることだ。

当然各段階で、行われた医療医行為がモニターされ、そこに対する評価も行われる。フィードバックが行われることで過剰な医療行為や過小な医療行為が是正されることが期待できる。

これを実現するためには開業医から始まって地域の中核病院、大学病院など、各規模の病院が集まって一つのグループのようなものを作る必要があるだろう。もしくは国が主導してあらゆる医療行為についての情報を収集することだ。

現状では、治療成績に限った、時間を断片的に切り取ったような、評価法しかない。たとえば各病院で内視鏡検査実績とか、手術実績とかは行われた件数については言及されていても、それによる結果(合併症など負の情報も含めて)について言及されていることはない。

情報の収集や開示において、必ず必要になってくるのはITインフラだ。電子カルテのような各病院規模のものではない。全ての病院をつないで、医療行為についての情報が収集できるようなネットワークだ。

そして、収集された情報は患者に公開されることになる。患者はそれをもとに病院を選ぶ。


競争の導入は患者にとってメリットがある一方、病院間の淘汰が進むことが予想される。いい加減な治療を行っている病院がつぶれていく。

競争というのは今までそれがなかった世界に生きていたものにとっては非常にわずらわしく、やっかいに感じるものである。

しかし、そろそろそうも言ってられない時代が来ているのかもしれない。


医療戦略の本質―価値を向上させる競争医療戦略の本質―価値を向上させる競争
(2009/06/11)
マイケル・E. ポーターエリザベス・オルムステッド テイスバーグ

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わりに合わない医薬品開発


07 01, 2010 | Tag,医薬品,製薬会社,創薬

動物実験から始まって、人への投与は3段階に分かれる。
第1段階で健常な人に、第2段階で軽症な患者に、第3段階で全ての患者を対象に、投与を行う。薬が世に出るまでプロジェクト開始から15年程度はかかるのである。そこからさらに、第4段階で市販後調査が行われる。

一つの薬が世に出るまでにここまで時間がかかれば、お金もかかる。その額数十億から数百億円。

医薬品 - Wikipedia


ギャンブル的な要素も強い。研究者が血眼になって薬効のある薬を開発しようとしているにも関わらず、人体の複雑さがすんなりと新薬を開発させてくれない。ラットと人間ではぜんぜん違うらしい。
たとえばブロックバスター(大ヒット薬)にバイアグラがあるが、これはもともと狭心症の治療薬として開発されてきたものである。


開発に巨額の費用がかかる医薬品。そう考えると、特許期間20年、長くて25年というのは決して長いものではないのかもしれない。

20世紀の大ヒット薬品がそろそろ特許切れを迎える。医薬品会社は合併、吸収によりメガファーマを目指している。今後の動向に目が離せない。


医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)
(2010/01)
佐藤 健太郎

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「病院経営のしくみ」 


06 17, 2010 | Tag,病院経営,診療報酬

だれでもわかる!医療現場のための病院経営のしくみ―医療制度から業務管理・改善の手法まで、現場が知りたい10のテーマ
本書を読んで、病院経営もある程度体系立てて考えていかないといけないんだなと思った次第です。

思考の枠組みがあった方が考えやすいということです。

例えば、”6つの医療の質”として、安全性、有効性、患者中心志向、適時性、効率性、公平性が挙げられていたり、

有名なPDCAとか、QC(Quality Control)、TQC、TQMといった経営の教科書に出てきそうな話が出てきます。



いまさらですが、本書を読んで気づいたことがあります。

病院経営で儲けを増やす手段として、”加算”項目がかなり大きいということです。

通常の心電図や心エコー、レントゲンなどの検査、手術や薬の値段、これらはどこの病院に行っても同じです。病院が個々に値段を決めることはできません。

日本の医療のほとんどが保険診療です。値段は中央社会保険医療協議会 - Wikipediaで決められています。


加算項目は「保険診療で医療行為の値段がすべて決められてしまっているなか、病院はどうやって儲けを増やすのか?」という疑問に答えてくれます。


診療報酬の構造は初・再診料や入院料といった基本診療料と検査や治療などそれぞれの医療行為に対する特掲診療料という2つに大別されています。

そして、基本診療料には、加算項目があります。例えば入院基本料等加算です。

大きな病院ほどこの加算項目をとりやすく、それを利用して儲けを増やそうとします。

例えば、救急医療管理加算(800点/日)というのがあるから、病院は救急をやることに積極的になります。

医療安全対策加算(85点/初日、35点/初日)とか褥創患者管理加算(20点)というのがあるから、病院内には医療安全対策チームとか、褥創対策チームが結成されます。

これらの加算はその時々の医療政策と密接に関係しています。医療費削減のために後発医薬品の使用が叫ばれてしばらくたちますが、後発医薬品使用体制加算(30点)というのを作って病院に後発医薬品の使用を促したりしています。



これらは金銭的なインセンティブをつけて、病院にあるべき機能を持たせようとする厚労省の政策でもあります。

これ自体は悪い制度ではないのですが、中には加算はとっているけど、実態がないというようなこともあったりします。

病院の中で生活していると、ある日突然なんらかの委員会が発足してることに気づいたりします。そして、その委員会の中に自分の名前が入っていてびっくりしたり。

その影にはこういった診療報酬加算の影響があることは間違いないということです。


だれでもわかる!医療現場のための病院経営のしくみ―医療制度から業務管理・改善の手法まで、現場が知りたい10のテーマだれでもわかる!医療現場のための病院経営のしくみ―医療制度から業務管理・改善の手法まで、現場が知りたい10のテーマ
(2008/07/15)
木村 憲洋医療現場を支援する委員会

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病院経営者と現場に存在する認識の差 


06 15, 2010 | Tag,医療,病院経営

病院経営に大きな問題点の一つに、現場で働く医療従事者と、病院経営者の視点の違いがあります。

現場の医療従事者は患者さんを治療することにやりがいを感じ、それに専念したいと考えます。しかし、病院経営者は病院を維持するために患者さんの治療以外に、収益向上を追求していくことに重点を置きます。

例えば医師なら、治療するにあたって「効果はそんなに引けをとらないから、安いこの薬を使って」とか、「そんなにお金のかかる検査をやって意味あるの?」とか言われるとモチベーションが下がります。こっちは全力で患者さんを治したいと思っているのに、お金の話をされると、気持ちが萎えるというものです。

患者さんの治療に力をそそぐこと、病院の利益を追求すること、この両者は根底では同じ目標に向かっているはずです。病院の利益を追求することは、その病院の施設維持、ひいては設備向上につながり、それは医療従事者のモチベーションを高めるからです。

しかしながら、経営者(院長)の、「利益を追求して、よりよい病院を作っていこう」という意思はなかなか現場まで浸透していません。現場では「院長はまたお金の話ばっかり」とかそんな認識です。

病院が利益を追求することが、患者さん、そして医療従事者である自分たちにメリットのあることだということが理解できれば、医療従事者の行動は変わってくると思います。

これからの病院経営者には、”病院が儲かる”ということが、現場の医療従事者にとってどういうメリットがあるのか、わかりやすく提示できる必要があるのだと思います。


だれでもわかる!医療現場のための病院経営のしくみ―医療制度から業務管理・改善の手法まで、現場が知りたい10のテーマだれでもわかる!医療現場のための病院経営のしくみ―医療制度から業務管理・改善の手法まで、現場が知りたい10のテーマ
(2008/07/15)
木村 憲洋医療現場を支援する委員会

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守りの医療 - ディフェンシブ・メディシン


04 05, 2010 | Tag,医療,医療費


この話は外科医が治療(手術)に伴なうリスク、合併症のことについて患者さんに説明したところ、患者さんは合併症のことを重く考え、代替医療に走ってしまったというもの。

それに対して外科医は
確かに手術は人間が行うものなので絶対ではない。患者さんの立場なら、手術への不安から安全な治療、誤った療法を選んでしまうこともあるだろう。だが、患者さんはともかく、医療従事者だけは、不安な思いに対して“安全第一”が取り憑いた判断をしてはいけないと思う。
と自省している。


患者には安心を提供しなくてはいけない、という意味では同感。

「私にまかせておけば大丈夫。必ず治します。」

なんてかっこいいことを言ってあげたいなぁと思う。



でも、この外科医のとった言動は決して間違ったものではないとも思う。手術の説明ともなると、説明時間の半分以上を手術に伴なう合併症に費やしていたりするのが現実。

実際の臨床では理解してもらえるように、平易な言葉で患者さんに分かるように説明するよう心がける。すると患者さんは、うんうん頷きながら、「分かりました。」と言いながら聞いている。

しかし、どこまで話を理解しているのか怪しいところがあるのは確か。自分にとって不都合なことは頭の中に入ってこないというのは誰でもそう。患者さんと対面しているとよく分かる。

にもかかわらず、ほとんど起こらないけど、起きるかもしれないことの説明に時間を費やしている。保険会社みたいに紙を渡して、あとは自分で読んでください、なんて形式にしたらどうだろう。いい話だけ聞いてればいいから、患者さんも気が楽に違いない。



これはほんの一例だが、そのような過剰に防御的になる医療をディフェンシブ・メディシンというのだそう。

救急外来にきた患者で「胸が痛い」と言ったらほぼ全員に造影CTをやるとか、頭をぶつけたかもしれなかったら全員頭部CTとか。

こういうのもディフェンシブ・メディシン。なんでもかんでも検査しておけば、後で”何か”起きた時に役立つかもしれない。でも医療費はこうしてどんどんあがるわけだ。


実際にアメリカを例にとると、ディフェンシブ・メディシンの弊害は
ディフェンシブ・メディシンによる無駄な医療がどれだけ医療費を押し上げているかについてもいくつかの研究があるが、医療過誤の賠償金に上限を設けるなどの法的対策を講じていない州では、そのような法的対策を講じている州と比較して、医療費総額の5-10%が余計に消費されているのではないかと推計されている。
市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗には書かれている。

医療過誤に対して設ける法的対策というのはおもしろい。


すでに日本でもディフェンシブ・メディシンははびこっているけど、医療費が増え続ける原因の一つに増え続ける医療訴訟というのもあるのかもしれませんね。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
(2004/10)
李 啓充

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「市場原理が医療を亡ぼす」 


04 01, 2010 | Tag,医療,資本主義,アメリカ医療

深刻な医療格差を引き起こしているアメリカ。その原因には医療に市場原理が導入されていることがあるという。

利益を極端に重視した医療を行うとどうなるか予想するうえで参考になる一冊。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
市場原理の導入が医療にもたらすもの、それは
  • 弱者の排除
  • 負担の逆進性
  • バンパイア効果
  • 市場原理のもとで価格が下がる保証がない
  • 質が損なわれる危険
である。


弱者の排除

市場原理のもとでは、購買力の乏しい人々が医療へのアクセスから排除される。特に、高齢者や低所得者。
アメリカには高齢者向けのメディケアや低所得者向けのメディケイドがあり、これらは税金でまかなわれている。まったく保険に加入できていない人は15%もいる(医療経営学 - メタノート)。(現在、オバマ大統領が医療保険改革を行い、無保険者をなくそうとしています。)

ところがメディケイドに加入していても、受けられる治療のレベルは民間保険会社のそれとは違う。メディケイドが税金で運用されているのに対して、民間の保険会社は被保険者からお金をたくさん集めることができるからだ。民間の方がいろいろな検査や治療ができる。

まして、市場原理のもとでは全く保険に加入していない人など病院から相手にされない。



負担の逆進性

貧乏で病気を数多く持っている人ほど保険料が高くなって、病院にはかかれなくなる。

企業を通じて団体割引で保険に加入している人は、大口顧客として割引価格で医療サービスを購入できるが、無保険者は定価で購入しなければならないとか。

これがまさに今のアメリカの保険制度だ。お金を持っていない人は必要な医療が受けられない。



バンパイア効果

地域にサービスの質を落としてでも価格を下げてマージンを追求する病院が出てきたらどうなるか。吸血鬼に噛まれたかのように、それまでサービスの質を追求していた良心的な病院が悪質な病院に変化していくのである。

経営状態は売上とか数字で評価できるものにしか現れないから、良心的であっても数字を良くするためにサービスの質を落とさざるをえないということ。



市場原理のもとで価格が下がる保証がない

価格がどちらにふれるかは、売り手と買い手の力関係で決まり、実際、医療をずっと市場原理に委ねてきた米国では、70-80年代は毎年10%を超える医療費上昇が続いた。

普通の市場だと需要と供給の最もバランスのとれたところで、価格も落ち着くのだろうが、医療の場合はちょっと違う。

例えば、医薬品は先行薬品に対して期間限定の特許が与えられている。ある期間は特定の製薬会社でしかその薬を作ることができないので、買い手に対して有利な立場にあると言える。要は製薬会社の言い値が売り値になるということ。



質が損なわれる危険

利益を上げるためには売上を増やすか、支出を減らすしかない。

例えば、患者あたりの看護師数を減らすことができれば、かかる人件費は少なくなるので病院の利益は増える。ところがそれでは患者満足度は下がる。ちなみに、看護師の受け持ち患者数が増えるほど、患者の死亡率が上がるというのは2002年のJAMAの論文で示されている。

それに利幅の大きい不要な検査や治療が横行する可能性もある。なんだかんだ理由をつけてレセプト審査の目をかいくぐることは不可能じゃないと思う。


市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
(2004/10)
李 啓充

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本書を読むと、医療制度に関してはアメリカよりも日本の方が弱者に優しいということがよくわかります。

お金をたくさん持っている人にとってはアメリカの方がいいのかなぁ。日本だと、名医と呼ばれる人に診てもらっても、そうでない人に診てもらっても、同じ料金です。その点アメリカでは違います。人気の医師はすごいお金を稼いでいる。まあ、名医の定義については議論の余地がありますが。。マスコミによく出る有名な医者が名医とは限りませんよ。



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医療の裏側でいま何がおきているのか


09 16, 2009 | Tag,医療,医療問題,医療費,社会保障

本書は2007年に開かれた9名の有識者によるシンポジウムの内容をまとめたものです。現在の医療制度を理解するのに役立つ一冊となっています。

医療の裏側でいま何がおきているのか (ヴィレッジブックス新書)医療の裏側でいま何がおきているのか (ヴィレッジブックス新書)
(2009/04/30)
大阪大学医学部 医療経済研究チーム

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まず初めにこのあたりのことは基本事項として覚えておいた方が良さそうですよ。


・社会保障費90兆円。そのうち年金50兆円超、医療費30兆円超。
・日本の国家予算は80兆円。国債費や地方交付税を払った後に残ったお金(一般歳出は)47兆円。そのうち防衛費7兆円、文教費5兆円、公共事業費7兆円、社会保障関係費21兆円。
・90兆円から21兆円を引いた部分は国民から集めた保険料55兆円と地方自治体の負担、運用益からなっている。
・年金に関して言えば、サラリーマンは毎月の給料から7%の保険料を天引きされ、厚生年金の保険料を払っている。


2004年の対GDP費総医療費をアメリカと比較してみると、アメリカ15.2%なのに対し、日本は8.0%です。先進国中最低レベルです。

日本の人口当たりの医師数が少ないことは指摘されて久しいですが、2002年のデータでは病床100床あたりの医師数で比較すると、日本が13.7人なのに対し、アメリカでは66.8人です。病床100床あたりの看護職員数では日本が54人なのに対し、アメリカでは233人です。

何が言いたいかというと、少ない投資の割に日本の医療にそこそこ満足できているのは、医療従事者の献身的な犠牲により成り立っているからかもしれないということです。

このあたりを考えると、医師の数は早急に増やす必要がある、ということです。


ところが、医療従事者は頑張っているのに、病院全体の60~70%が赤字経営だということです。

じゃあ、医療にかかるコスト30兆円の内訳が気になるところですが、それは本書に書いてありました。


2001年のデータですが、30兆円のうち、病院が収益として80%くらい、10%が剤薬局、他歯科診療など、という割合になっています。

驚いたのですが、病院の収益80%のうち、医療機関以外の取り分が半分ほどあることです。医療機関外というのは製薬メーカーとか医療機器メーカー、検査メーカー、医薬品卸などです。ということはつまり、病院自体の収益は12兆円くらいということですね。

実際に、白内障の手術(7430点(74300円))や腹腔鏡下胆嚢摘出術(25600点(256000円))なんかでは手術料のうち、約半分が材料費にもっていかれしまいます。技術の対価を受け取る方としては、なんだかやるせない気持ちになりますね。

病院の多くが赤字経営を続けていることを考えると、医療行為や薬などの保険点数のつけ方が妥当ではないと考えざるを得ません。


しかし、膨らみ続ける医療費を抑えることも必要なわけで、その点は議論が続けられていることと思います。

本書に登場するある経済学者の先生は、増え続ける医療費に対応するためには消費税などの税金を増やすことで対応するしかないと言っていました。

もしくは自己負担を増やす方法を考えるか。あまり国民に対する直接的な自己負担を増やすと、まともに医療を受けられない人が増えて問題になるだろうし、社会保障の観点から離れていってしまいます。

税金を増やすことで対応するなら、間接的な自己負担増ですから意外といけるかもしれません。個人的には消費税増はもはや仕方ないかなと思います。

民主党政権になって、このあたりの医療費のやりくりをどうするかは見物ですね。


まとめると、今に始まったことではなく、日本の医師数は足りてないんだよ、ということ。保険点数はもう少し見直さないと病院存続にとって良くないよ、ということ。増え続ける医療費には税金で対応するのが妥当かもしれない、ということでした。


ところで、医療費高騰の本当の犯人については本書の説より、こちらの本の説を信じます。犯人は人口の高齢化というより、医療技術の進歩、という説。

こちらが関連記事↓

>> 医療費高騰の真犯人は? 【書評】「改革」のための医療経済学

>> 日本の医療が迷走しないために 
 
医療の裏側でいま何がおきているのか (ヴィレッジブックス新書)医療の裏側でいま何がおきているのか (ヴィレッジブックス新書)
(2009/04/30)
大阪大学医学部 医療経済研究チーム

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「改革」のための医療経済学「改革」のための医療経済学
(2006/07)
兪 炳匡

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医療費と診療報酬 【書評】医療問題


08 05, 2009 | Tag,医療問題,医療,診療報酬

本書は日本の医療制度と2006年の医療改革を中心に書かれていますが、今の医療制度を理解するのにも役立ちます。


先日、診療報酬の不正請求をめぐる詐欺容疑で摘発された山本病院ですが、今回はこのニュースと関係の深い診療報酬制度のことについて書いてみます。

ベーシック 医療問題 (日経文庫)ベーシック 医療問題 (日経文庫)
(2006/11)
池上 直己

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まずは医療費負担のこと

国民医療費は約31兆円ですが、それは誰が負担しているのでしょうか。

簡単に分けると、企業、国、病院にかかった本人です。これらがどれくらいの割合で負担しているのかを調べてみると、その内訳は保険料が15兆円、自己負担が5兆円、税金が10兆円となります。つまり、保険者が約半分、税金が約35%、医療をうけた人が15%を負担しています。

税金や自己負担は分かりやすい財源ですが、保険者というのはなんでしょうか。保険者が全体の約50%も負担しています。

保険者といのは企業や学校などが運営する組合健保や共済組合、中小企業を助けるために政府が運営している政府管掌健康保険組合(政管健保)、自営業者は無職の人々のためにある国民健康保険(国保)などです。(政管健保は2008年10月に全国健康保険協会が運営する協会けんぽに変わりました。)

これらの組合が保険料の一部を負担しています。

組合健保であれば、企業が保険者負担分の全てを負担します。政管健保にはそこまでの経済的な余力がないので国がある程度補って負担します。医療費全体の14%です。国保は負担してくれる組織がないので、すべて国が負担することになります。医療費全体の50%です。

国保の場合は医療費の85%が国からの財源でまかなわれていることになりますね。

定年退職した高齢者が多くなればなるほど国保加入者が増えるので、政府の負担が増えます。だからなんとかして退職者の分の保険料も組合健保に負担してもらおうと躍起になるわけです。


医療費負担と診療報酬との関係

どうして政管健保や国保では政府が補てんしないといけないのでしょうか。

それは、医療行為や薬価が決められた額に設定されていることが大きく関係しています。国民一人一人の負担割合が決まっていることも原因の一つです。政管健保や国保では自己負担で足りなかった分を企業が負担してくれないので、かわりに政府が負担してあげる必要があるのです。

アメリカのように保険者が自由に価格を設定すると、保険者により受けられる医療に差が出ます。お金のある人ならこれでいいでしょうが、ない人は大変です。生活困窮者はただでさえ病気になりやすいのに、早めに病院にかかれなかったら病状が悪化してから病院に運ばれるという事態になります。病院内で最もコストがかかるのは急性期医療ですから、お金がない人に対して優しくない医療制度は医療費高騰の原因にもなります。また、病院としてもこれらの患者からはきちんと医療費を支払ってもらえないでしょうから、経営が圧迫されることになります。

定められた医療の価格のことを診療報酬(レセプト)と言います。日本では教授が行った治療も、研修医が行った治療も同じ行為であれば、同じ額しか支払われません。診療報酬制度に基づいているからです。価格が定められていれば、ある程度総医療費もコントロールできるはずです。


不正請求事件の病院に月2千万円売り上げ、詐欺容疑業者




では、つい先日のこの事件はどうして起きたのでしょうか?

診療報酬明細(レセプト)ですが、これは病院で作られた後、厚生労働省の諮問機関である中医協の審査にまわります。そこで有識者によるチェックを受けてOKなら診療報酬が支払われます。

チェックといっても有識者がきちんと目を通すことがきるレセプトの数には限りがあります。膨大な量のレセプトに少ない数の審査員が全て目を通すのは無理な話です。これは容易に想像がつきます。ということは、ある程度チェックの目をすりぬけたレセプトが認められ、診療報酬が支払われることになります。また、レセプトは紙、もしくは電子システムです。いずれも入力するのは人間ですから、恣意があればいくらでも改ざんできます。それがチェックする人の目をすり抜けると、今回の山本病院のような不正請求につながります。


日本の医療制度における診療報酬制度は国民に平等な医療を提供する、医療費をコントロールするという意味では立派な仕組みかもしれませんが、今回のように不正請求をすり抜けてしまうという脆い一面も持っているということです。

ベーシック 医療問題 (日経文庫)ベーシック 医療問題 (日経文庫)
(2006/11)
池上 直己

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医療費高騰の真犯人は? 【書評】「改革」のための医療経済学


05 01, 2009 | Tag,医療,医療費,医療経済学

「改革」のための医療経済学「改革」のための医療経済学
(2006/07)
兪 炳匡

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驚きました。医療問題の本質が全く分かっていなかった自分に。しかし、これは多くの日本人も勘違いしているところではないでしょうか。なぜなら報道されている医療関係のニュースですらことの本質を見抜いてないのですから。


例えば「医療費高騰の原因は人口の高齢化が問題である」という説。

本書では医療費高騰の本当の原因は人口の高齢化が問題であるということをこれまでに発表されている論文から反論しています。一見正しそうに見えるこの説も、間違いであることが示されています。


このように、「医療において希少な資源・財・サービスを、競合する目的のために配分・選択する仕方を研究する」のが医療経済学です。お金儲けや会計、経営とは別分野の学問であることを認識しておく必要があります。

医療費など、お金の話が多く出てくるのは医療という社会全体の一分野を、社会全体の中で貨幣という価値を用いて最適に配分する必要があるからです。


本書の著者、兪 炳匡さんは日本で臨床研修を行った後、ハーバード大学など米国の大学で医療経済を学んだあと、現在も米国で研究、教鞭をとられている方です。


疑われた5要因
1.人口の高齢化
2.医療保険制度の普及
3.国民所得の上昇
4.医師供給数増加
5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差


1.人口の高齢化

米国では65歳以上の人口の割合が8%(1950年)から12%(1987年)に上昇した期間に医療費が425%上昇したのに対して、人口の高齢化は15%寄与しました。このことは人口の高齢化の寄与率が、医療費の総上昇率のうちわずか30分の1(3.5%)であったことを示しています。


2.医療保険制度の普及

米国で公的・私的を含めた医療保険制度が普及した結果、患者の窓口負担が平均値で67%(1950年)から27%(1980年)に低下しました。この負担率の低下とランド(RAND)医療保険研究の研究成果である価格弾力性をもとに、医療需要は50%上昇したと算出されました。同じ期間に医療費は290%上昇しているので、医療保険制度の寄与率は約17%になります。
(価格弾力性の説明は省略)


3.国民所得の上昇

1940年から1990年までの期間に、米国の実質国民所得は180%上昇しました。また、過去の実証的研究の結果をもとに所得弾力性を0.2~0.4%と仮定すると、国民所得上昇は医療費を35~70%上昇させたと算出できます。この期間の米国の総医療費は780%上昇しているので、国民所得上昇の寄与率は約22分の1~11分の1になります。
(所得弾力性の説明は省略)


4.医師供給数増加

10年ごとの医療費の変化率と医師供給数の変化率の相関関係をみると、経時的に一定な相関関係は認められなかったと示している論文があります。つまり、10年ごとで見ると、医療費が増えている時期と医師供給数が増えている時期に違いがあったということです。


5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差

医療分野の生産性の上昇がその他の産業分野より低い場合、相対的に医療分野の価格は上昇します。生産性の測定の例として、高血圧の患者さんの収縮期血圧を120mmHgに維持するのに必要な人的資源・医療資源が、過去30年にどう変化したかを測定したものがあります。これに比べると、理容店や美容室で一人の髪を切るために必要な時間はほとんど変化しておらず、よって医療の生産性が上昇しているのは明白だと述べている論文があります。



いずれもこれまでの研究結果をもとに書かれているので、信頼性はあると思います。


これらを踏まえて医療費高騰の本当の原因は「医療技術の進歩」という結果が出ています。つまり、急性期医療で行われる医療行為が医療費高騰を招いているということです。


意外でした。個人的には特に1の人口の高齢化と4の医師供給数の増加が、全体の医療費増大にそんなには寄与していないということが驚きでした。つい最近まで医師は供給過多だからといって医学部の定員を減らすような政策を作っていた厚生労働省はなんだったのでしょうか。



日本で医療経済学が盛んでない原因の一つに研究に必要な自治体や国レベルでの大規模なデータが入手しづらいことが関係しているようです。著者の兪 炳匡さんが現在も米国で米国のデータを使って研究されているのは、日本では研究材料が入手しにくいことが関係しているのかもしれません。

学問としては社会に貢献できるような結果を残せるほうが魅力的でしょうから米国で研究を続けているとのにも納得できます。

最近、日本ではDPCという包括医療制度が普及してきています。これにより患者や医療行為、病院経営についての現状が数字として把握されればもっと日本でも医療経済学が広まるかもしれません。


【関連記事】
医療経営学
このエントリの在院日数短縮に関する記載はいまひとつ的外れということになってしまいました・・・。




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