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社会保障制度を理解するための入門書 【書評】だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方


03 13, 2009 | Tag,社会保障,年金,医療保険,介護保険,入門書

だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方
(2009/01)
鈴木 亘

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会社勤めしているビジネスパーソンが加入している年金は通常厚生年金になります。厚生年金の保険料は現在15.35%で、これだけでも多いと思うのですが、さらに18.3%まで上がる予定です。健康保険は「保険料額=報酬×保険料率」という式で決まり、保険料率の全国平均は8.5%となっています。これも最大9.6%まで上がる予定だそうです。

健康保険の場合、所属する組合により微妙な違いはあるようですが、基本的には年金と同様、会社と労働者で折半します。そうすると簡単に考えて、一般的なビジネスパーソンでだいたい給料の12%はこれらの社会保険料で天引きされるということですね。

いずれもなくてはならない制度ですが、なかなかばかにできない額です。


本書は社会保障制度として欠かせない、年金、医療、介護保険に関する一冊です。やや難解な点も含まれますが、主張が明快で反論に対する答えも詳しく、わが国の社会保障制度についてとても考えさせられる内容となっています。



本書の目次は

第1章 社会保障制度の「危機」はなぜ起きるのか
 簡単なたとえ話
 実際の少子高齢化の状況 ほか

第2章 本当に重要なことを最小限にまとめた社会保障入門
 社会保障制度の存在理由
 積立方式と賦課方式 ほか

第3章 年金改革の現状と論点
 年金財政の現状
 厚生年金と共済年金の一元化とは何か ほか

第4章 医療保険・介護保険改革の現状と論点
 将来の医療保険料はどこまで上昇するのか
 生活習慣病対策はどこまで効果が期待できるのか ほか

第5章 最初で最期の社会保障抜本改革
 ここまでのまとめ
 積立方式への移行とその誤解 ほか



とこのようになっています。



本書の内容は年金だけでなく、国が運営する医療保険、介護保険と多岐にわたるのですが、ここでは年金制度にしぼって話を進めていきます。


年金制度を継続的に成り立たせるために必要な改革な何か?という問いに対して本書では「賦課方式」から「積み立て方式」への移行が必要であると回答しています。


現在の年金の財政方式は「賦課方式」です。賦課方式というのは自分が老後に受け取る社会保障費は、そのときに生きている現役世代が払う保険料によって支えてもらう財政方式のことです。

年金制度が成り立たなくなるという根拠の詳細は本書に譲りますが、もっとも大きな原因は少子高齢化です。若い世代が高齢世代を養っていく賦課方式では少子高齢化社会では成り立たなくなっていくだろうといことは容易に想像できます。年金保険料を増やすのにも限界があるでしょうし、かといって給付を減らすにも限界があります。現在の日本の人口構成からは成立しない制度だというわけです。

また、世代間不公平という大きな問題があります。衝撃的だったのが、「生涯純受給額」です。これは「将来に受け取る給付額の総額(生涯受給額)」から「障害に支払う保険料の総額(生涯保険料額)」を引いたものです。本書のデータによると、1940年生まれの人と2005年生まれの人ではその差なんと8340万円になります。もちろん、最近に生まれた人であるほど、損をしていることになっています。たまたま生まれが違うだけでこれほどの世代間不公平が生まれていることは見逃せません。

社会保障制度の中に医療保険や介護保険、そして年金が存在しますが、それぞれが持っている機能は「保険」という機能です。年金は、予想外に長生きしてしまって、生活費が枯渇してしまい、老後に悲惨な生活状態に陥ることを防ぐために存在している「保険」なのです。「保険」は同質の集団の中で機能するもので、そうでなければリスクの高い人が得をしてリスクの低い人が損をすることになってしまいます。

年金というのは世代間の助け合いを実現するものだから若い世代の大きな負担はやむを得ない、という意見もあるかもしれませんが、これはそもそもの年金の「保険」としての機能と矛盾します。世代間の助け合いと「保険」は切り離して考えるべきです。

また、現在の制度でいけば生涯純支給額の格差は開く一方で、これは未来の子供たちがさらに負担を増やしていくことになります。これでは子供たちが損をしていくわけだから、世代間の助け合いという論理は成り立たないでしょう。


世代間の不公平を作り出す現在のこの方式が賦課方式ですが、それに対して存在するのが「積み立て方式」です。積み立て方式は現役世代のうちに自分の老後に使うための社会保障費を積み立てておくというものですが、こちらの方が理にかなっているし、将来的に破たんする心配もない方式というのが本書の主張です。


世代間の不公平だけでも現在の賦課方式に対して疑問を抱かざるを得ません。選挙での票の多数を占める高齢者と、ほとんど受益側に回っている政治家のことを考えると、制度の改革は難しいかもしれませんがなんとかしなければいけないと思います。どうやって積み立て方式に移行していくかについても本書の中では具体的に述べられています。



医療保険の項では地方の医師不足も病院経営も、価格統制を廃止して市場メカニズムを導入することで問題は解決されると主張しています。現行の診療報酬制度では難しいのですが、需要の割に供給が少ない地方の病院では診療報酬単価を上げるなどの策は有効かもしれません。現実的には患者と医師の間では情報の非対称性があるために、すんなりと導入するわけにはいかなそうですが、医師不足問題の解決策として魅力的には感じました。


介護保険についても同様に市場メカニズムの導入でサービスの質が向上することを主張しています。こちらは医療保険と違って情報の非対称性はほとんど存在しませんので、導入までの障壁は少なそうです。


内容の非常に濃い一冊でした。


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