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先進国と途上国の違いに人種は関係ない 「銃・病原菌・鉄」


02 01, 2010 | Tag,名著,歴史,言語,人種

これまで考えたことがありませんでした。同じ地球上に生まれたのに、人類はどうして地域によって違いがあるのでしょう。

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ある国では先進技術を駆使してハイテク生活を満喫していたり、そうかと思えばいまだに原始的な生活を送っている人がいたり。


同じ地球上であるにも関わらず、文明や文化を異なる形式で発展させた人類。どのようにして今のような勢力図になったのか。本書はそんな疑問に答えてくれる一冊です。



本書の中で個人的に特におもろしかったのはフランシスコ・ピサロ率いる少数のスペイン軍が、インカ皇帝アタワルパの大群に勝利するところですね。この勝利に、タイトルにもある銃、病原菌、鉄が大きな貢献をしています。


発達する文明

この時代のヨーロッパはすでにといった戦闘に有利な道具をそろえることができました。

そして、船を作って遠く離れた場所に行くことができ、言語を発達させ情報の伝達をスムーズにすることができました。

また、中央集権の政治機構を整えて、集団を統治することができました。

これらの文明を支えていたのは狩猟ではなく、農耕や牧畜を中心とした定住生活です。

農耕を可能にするのは農耕に適した土地や気候です。牧畜には適性ある野生種の存在が必要です。こういった地理的条件は文明の発達にものすごく影響しています。

「歴史は民族によって異なる経路をたどったが、それは居住環境の差異によるものであって、民族間の生物学的な差異によるものではない。」

条件のそろった地域が他の地域に先んじて文明化していくわけです。生物学的要因よりも社会的要因の方が大きいということ。そう考えると、人種の優劣を例えば肌の色で決めたりすることもバカバカしく考えられます。先進国と途上国の差は人種が原因になっているわけではないということもわかります。


文明と病原菌

さらに、忘れてはいけないのが病原菌というファクター。

農耕や牧畜が盛んになると、そこには病原菌が繁殖してきます。

ユーラシア大陸では、天然痘、麻疹、インフルエンザ、ペスト、結核、チフス、コレラ、マラリアといった致死率の高い動物由来の感染症が人間に感染するようになり、過去ヨーロッパなどでは大流行をしました。

病原菌に対する免疫力を高めた人種が、免疫を持たない人種が住む大陸に進出したらこれは大変です。免疫を持たない人たちは壊滅的なダメージを受けても不思議ではありません。これはピサロがインカ帝国に勝利することができた要因の一つになりました。


文明の発展はいつまでも続くのか

文明を発展させていく過程については分かりました。じゃあ、いったん発展したらその発展は永遠に続くのか。いや、どうもそうではないようです。

例えば中国なんかはいちはやく独自に高度な文明を発展させていたのに、現代近くになるとその発展はヨーロッパやアメリカの後塵を拝しています。世界を牽引するリーダー国にいちはやくなっていてもおかしくないのに。これって不思議です。

実はこの原因の一つに船団派遣の中止があります。ここで誤った選択をしたということです。ヨーロッパなんかは数々の国が乱立する中で、戦争をきっかけにするなどして、技術や文化の伝播を進めてきたわけです。ところが、中国はこれを自らやめてしまった。ここがヨーロッパと中国の違いだというのが著者の主張です。

「環境は変化するものであり、輝かしい過去は輝かしい未来を保証するものではない。」

ということです。ドキッとするようなこの言葉、覚えておくといいかもしれません。


銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
(2000/09)
ジャレド ダイアモンド

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銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
(2000/09)
ジャレド ダイアモンド

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繰り返し読みたい一冊だと思います。

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美しいことはきっと正しい 「世にも美しい数学入門」


09 28, 2009 | Tag,数学

ときどき数学関係の本を読んでみたくなります。どうしてなのかわかりませんが、ふと手が伸びてしまうんですよね。自分自身の数学に対する憧れなのかもしれません。

小学校から高校まで、大学受験の時まで数学の勉強には苦しめられつつもなんとかこなしてきました。でも大学受験の数学は今回読んだ本に出てくる数学と厳密な意味では違うような気がします。

自分が大学受験の数学をこなすことができたのは、それが訓練さえ積めば誰にでもできる類の問題だったからです。先人が残してくれた偉大な数式を、問題に合わせて使いこなしていくだけ。パターンで解いていたわけです。

だから、そこには独創的なアイディアも必要ないし、特別な才能も必要ありません。

本書に出てくる数学の話はもっと豊かで純粋な憧れの対象になるような数学です。

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
(2005/04/06)
藤原 正彦小川 洋子

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著者は数学者藤原正彦さんと作家小川洋子さんです。

小川さんの過去の作品に「博士の愛した数式 (新潮文庫)」がありますが、合わせて読むと一層おもしろさが際立ちます。

博士の愛した数式 (新潮文庫)」の中にも出てくるのですが、たしかに美しいと感じた数字を2つ紹介します。


友愛数

友愛は最近話題の言葉ですね。

220と284が友愛数です。友愛の理由は以下。

自分自身を除いた約数を考えます。

220・・・1, 2, 4, 5, 10, 11, 20, 22, 44, 55, 110
284・・・1, 2, 4, 71, 142

220の約数を全部足すと280になって、284の約数を全部足すと220になるんですね。

すごい性質ですね。この2つの数字はただならぬ関係があるかのような。なんだかロマンチックです。


完全数

完全数は例えば28です。江夏の背番号です。

これもまた約数を考えます。

28・・・1, 2, 4, 7, 14

全部足すと28になるんです。こういうのを完全数と言います。かっこいいですね。1桁だと6があります。3桁だと496です。

実際に役に立つかどうか抜きにしてただ美しいと感じられるもの、そこに数学があると。


怖いのは、ゴールドバッハの問題(6以上の偶数は全て素数の和で表わされる)のような本当に解けるかどうか分からない悪魔的な問題があることです。フェルマー予想だってたくさんの天才数学者たちが挑んで長い年月をかけやっと証明されたんでしたよね。

こういう問題を解こうとする数学者の勇気はすごいと思います。問題に立ち向かう時の不安、「答えが見つからなかったらどうしよう」とか、「問題そのものが間違っていたらどうしよう」といった気持ちは考えただけでぞっとします。(ゴールドバッハの問題やリーマン予想というのは問題自体が美しいため、証明可能だと信じられているが、本当に証明が可能かどうか分かっていない。)

私なんか才能があったとしてもそんな挑戦はできません。だから数学者はすごいと思います。


藤原さんの言葉の中に私の数学に対する憧れを説明してくれる箇所がありました。

はたして人間は金もうけに成功し、健康で、安全で裕福な生活を送るだけで、「この世に生まれてきてよかった」と心から思えるだろうか。「生まれてきてよかった」と感じさせてるものは美や感動をおいて他にないだろう。数学や文学や芸術はそれらを与えてくれるという点で、もっとも本質的に人類の役に立っている。



数学を美しいと感じさせてくれた本書に感謝。文系の人にもお薦めの一冊です。


世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
(2005/04/06)
藤原 正彦小川 洋子

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博士の愛した数式 (新潮文庫)博士の愛した数式 (新潮文庫)
(2005/11/26)
小川 洋子

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【書評】理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性


04 01, 2009 | Tag,選択,科学,知識

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
(2008/06/17)
高橋 昌一郎

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知らない世界がココにありました。

本書は選択、科学、知識の限界について過去の偉人の言葉を引用してなるべく簡単に説明しようとする本です。内容自体は正直難しいのですが、数理経済学者や哲学史家、生理学者、論理実証主義者、実験物理学者などの専門家と運動選手や会社員、大学生などの素人が議論や雑談を交わすように進行することで、論じているテーマが分かりやすく説明できるように工夫されています。


選択の限界、科学の限界、知識の限界がテーマです。

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生命の本質とは 【書評】生物と無生物のあいだ


03 16, 2009 | Tag,生命とは,DNA,分子生物学

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
(2007/05/18)
福岡 伸一

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分子生物学者である著者による、生命の本質に迫る一冊。
生命のダイナミズムを著者得意の上質な例えで分かりやすく教えてくれています。


生命とは何か?というのが本書のテーマです。

諸説あるかもしれませんが、本書が主張するのは

「生命とは自己複製できるもの」である。
「動的な秩序(動的平衡)を持っているもの」である。

という2点です。

これによれば哺乳類や爬虫類といった大きな個体はもちろん生物と呼べますが、顕微鏡でしか捉えられない細菌も生物と呼べます。しかし、電子顕微鏡でしか捉えられないウイルスという存在は生物とは言えません。なぜならウイルスは自己複製できないからです。ウイルスは自己複製できないため宿主の細胞内に侵入し、核内に入り込みます。そうして宿主に自分を耐量に複製させた後、自分が寄生していた細胞を破壊して増殖していきます。


動的平衡に関して。

受精卵の時から遺伝子の一部を使い物にならなくすると、生命はその一部が担う機能を補うように時の流れに従って補完していきます。 ところが、成長してから遺伝子の一部が使い物にならなくなっても、その時失われた機能は元には戻りません。 また、タンパク質分子の部分的な欠落や局所的な改変のほうが、分子全体の欠落よりも、より優位に害作用(ドミナント・ネガティブ)を与えます。例えるなら、部分的に改変されたパズルのピースを故意に導入すると、ピースが完全に存在しないとき以上に大きな影響が生命にもたらされるのです。

本書の読みどころは、こういった生命とは何かを実際の生命科学の分野から考えていくのとともに、DNAの構造が発見されるまでの人間模様や研究者がしのぎを削る過程にもあります。DNAが二重らせん構造をしているという画期的な発見を世に出したワトソンとクリックはあまりに有名ですが、二人の影にはたくさんの礎となった研究者がいました。ニュートンは「巨人の肩の上に立って」ものごとを見ていたと語っていますが、ワトソンとクリックも例外ではなく、優れた発見の影にはそんなには多くの日の目をみない研究がたくさんあるのだと思います。

DNAの二重らせん構造発見に関しては、

・遺伝子の本体がDNAであることをつきとめたオズワルド・エイブリー
・DNAの構成アミノ酸A、T、G、Cの4種ではAとT、GとCの含有量は等しいことを示したアーウィン・シャルガフ
・PCRを発明したキャリー・マリス
・DNAのX線解析を行ったロザリンド・フランクリン
・フランクリンが研究していたX線解析結果をワトソンに見せたモーリス・ウィルキンズ

などなど他にもたくさんいるのでしょう。


基礎研究の世界では1等賞以外はほとんど全く評価されないという厳しい世界です。そこには必然的に一等賞を巡る複雑な、汚い人間模様も存在します。そのような世界を詳細に描写している点も本書の読みどころの一つだと思います。


著者自身の経験を元にして書かれた、ポスドクとしての留学時代の話も興味深く読めますよ。


無機質な生命科学に命を吹き込むかのような一冊でした。


参考:
活かす読書:生物と無生物のあいだ

こちら▼は本書よりもっと最近の著作
メタノート:女は男より優れている!?【書評】できそこないの男たち




ダーウィン誕生200周年の今年に。【書評】フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌


02 23, 2009 | Tag,自然科学,進化,ダーウィン

フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
(2001/11)
ジョナサン ワイナー

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今年はダーウィン誕生200周年の年ですが、今日ご紹介する本はそのダーウィンが多大な貢献をした「進化」の話です。

今でこそ当たり前のことのようにに感じますが、人間は神が作ったものというの当時の常識でした。いつの時代も常識を覆すことはとても大変なことだと思いますが、本書はガラパゴス諸島を舞台にしてフィンチという鳥を題材に「進化」の過程を解き明かしていく本です。


ダーウィンの自然選択説というものがあります。

環境に適した個体が生き残り、環境に適さない個体が淘汰された結果、より環境に適した進化した個体が生き残っていくというものです。

ガラパゴス諸島に生息する「フィンチ」という鳥は、雨が多いと種としてその体は小さくなり、雨が少ないと大きくなります。これは、雨が多いとエサになる種子が小さくなるからそれに合わせた嘴の小さい、体も小さい個体が生き残るようになるからです。雨が少ない場合はこの逆で、体の大きい個体が生き残るようになります。

当然雨が多いか少ないかは年によってばらつきがあるので、この短期的な変化は化石のような結果には表れません。


フィンチの嘴を観察することでわかる大きなメリットというのは「進化」の過程を「化石」という間接的な証拠ではなく、「今現在起きている変化」としてわかることです。

フィンチの嘴は気候などの環境の変化によりその形態を変えるのです。本書の中にはフィンチの嘴を計測する科学者が登場します。


他にも本書ではウイルスが薬に耐性を獲得する機序もこの自然選択説から説明されています。実際には遺伝子の「変異」も関与すると思いますが、基本的な考え方としては間違っていないと思います。



せっかくなのでまだ読んでいない人はダーウィン誕生200周年の今年にどうぞ。




【書評】「旭山動物園」革命


01 23, 2009 | Tag,旭山動物園,動物,人間,経営

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)
(2006/02)
小菅 正夫

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本書は動物園がメインテーマなのですが、内容は動物そのもの以外にも「人はなぜ動物園に行くのか?」という哲学的な話や、マネジメントなど経営の話もあり、分類に困る本です。しかし、どの話もとてもおもしろく、とても内容の濃いものになっています。



私たちが目にする動物園の動物たちは、その生態の一部しか見せていないわけで、例えば期待外れだけど、ライオンやトラは見に行ってもいつも寝ている、なんてことはあり得ます。

でもやっぱり動物園に来る人たちが見たいものは、自分たちが描くその動物たちらしさ、とか自分たちの知らないその動物たちの驚きの生態でしょう。

旭山動物園は従来の動物園と比較してどこに優れた点があったかというと、動物たちの形態だけを見せるのではなく、「行動展示」を行ったところです。

それぞれの動物にはそれぞれ特徴的な行動があるわけで、見せ方によってはそれはとても面白いものになるのです。ライオンやトラは明るい時間は寝ていて、暗い時間に活動するという特徴があるのですが、旭山動物園では、「それなら日が沈んだ時間まで営業時間を延長してお客さんを喜ばせよう」、とそういう試みがされていました。有名な冬場のペンギンの行進も「行動展示」の一つだったのです。



旭山動物園があるのは北海道の旭川市ですから、東京の上野動物園と違って放っておいてもお客さんが集まる、というわけにはいきませんでした。動物園といえども、お客さんが集まらなければ廃園ということになるわけですが、実際に地方にはそういった憂き目にあった動物園もあったそうです。

経営難に陥りかけていた旭山動物園を救ったのは「改革が必要な組織にはスターは不要だ」という著者であり、園長の小菅さんの理念です。「ボトルネックをなくす」という考えに近いので、企業経営にも通じるところがあるのではないでしょうか。

限られた経営資源をいかにうまくつかうか。こうして生まれたのが、従来の動物園にはなかった「コメント」や「ポップアップ」、さらには「喪中」の掲示です。これらが動物たちの近くに掲示されることで、動物園をより臨場感あふれるものにすることができました。



もう一つ、本書の中でとても印象に残ったのが、「人を知らんとすればまず獣を知れ」という言葉です。この言葉はフランスの博物学者であり、啓蒙学者であったビュフォンの言葉ですが、これこそ私たちが動物園に惹かれる理由なのではないでしょうか。人間が人間として意識できるのは他者が存在すればこそです。他者とは人間以外の動物です。

子供たちの中にはイラストのうさぎは見たことがあっても本物のうさぎを見たことがない子供もいるといいます。動物に接し、その生態を理解することは命の尊さを学ぶことでもあると思います。


自己を認識するため、命の尊さを学ぶため、自然の大切さを学ぶためにも動物園は貴重な施設なんだと思います。




女は男より優れている!?【書評】できそこないの男たち


01 19, 2009 | Tag,分子生物学,発生学,男と女

できそこないの男たち (光文社新書)できそこないの男たち (光文社新書)
(2008/10/17)
福岡伸一

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本書は分子生物学の専門家である福岡信一さんの著書です。
人類がミクロの世界を発見する過程から、生命の起源とその進化に至るまで、解説し、分子生物学的に考えると男は女から派生したものであるという結論に達します。

途中、対象を顕微鏡で観察するためにパラフィン包埋しなければならない地味な作業が出てきたり、遺伝子や、遺伝子がその機能を発現する過程などの分子生物学的な内容が出てくるのですが、気付いたら学生の頃そんなことやったな、とか学んだな、とかいう気持ちで読んでいました。

知識のバックグラウンドがある場合とない場合で本書の読み方は変わってくるような気もするのですが、随所にとても分かりやすい比喩が出てくるので、例えば文系の人でも大丈夫な本だと思います。

例を挙げると、遺伝子を膨大なページ数の百科事典に例えているところなんかは、とても分かりやすい例えだと感じました。



本書のメインは両性具有(見た目は男性でありながら、遺伝子は女性。もしくは見た目は女性でありながら、遺伝子は男性)の人から得た遺伝子をきっかけに、性別を決定する遺伝子を解明する部分だと思います。

一般的な常識から考えると、”男尊女卑”なんて言葉があるように、男性が女性に対して有利な存在という風に語られることが多いと思いますが、分子生物学や発生学はそれと反対のことを示唆しているようです。

これは、昆虫などの生物で考えると、より明らかかもしれません。カマキリなんかを想像してみると分かりやすいですかね。


人間の発生過程を見てみると、受精卵はまず女性になるように分化(成長)していきます。女性はそのまま女性のままなのですが、男性は途中でSRY遺伝子という遺伝子の働きによって、男性への分化を進めていくことになります。これは、考え方によっては女性がデフォルト(基本仕様)となっていて、男性としての器官は後から付け加えられたものだという風にも考えられます。

男性器において、生殖細胞の通り道と尿を排出する尿管が同じであるというのは、結構不自然なことだと思いますが、それは後から作られたものだから、という理由になるのかもしれません。



本書はかなりアカデミックな内容の本なのですが、分子生物学や発生学をもとに、男女の関係についても言及している点がとてもおもしろいと思いました。

言われてみると確かに男性という生き物は、長い目で見ると女性という生き物によって操られている存在なのかもしれませんね。



クォーク―素粒子物理はどこまで進んできたか


12 11, 2008 | Tag,南部陽一郎,ノーベル物理学賞,クォーク,自発的対称性の破れ

クォーク―素粒子物理はどこまで進んできたか (ブルーバックス)クォーク―素粒子物理はどこまで進んできたか (ブルーバックス)
(1998/02)
南部 陽一郎

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2008年12月10日午後(スウェーデン現地時間)ノーベル賞授賞式が行われました。
ニュース: 小林、益川、下村氏に栄誉 ノーベル賞授賞式

残念ながら本書の著者、南部陽一郎さんは授賞式を欠席されたようですが、
南部さんの受賞理由は素粒子物理学における「自発的対称性の破れ」とのことです。
本書のタイトルにあるクォークはその素粒子物理学の構成メンバーです。

自発的対称性の破れ:
ある対称性をもった系がエネルギー的に安定な真空に落ち着くことで、より低い対称性の系へと移る現象やその過程

本書は素粒子物理学の誕生から発展までの過程を、
それに貢献した様々なノーベル授賞の物理学者と共に紹介している本です。

著者が、読者のために分かりやすく素粒子物理学を
呈示しようとしていることがとてもよく伝わってくるのですが、
専門的な知識がない読者にとっては少しハードルの高い読み物になっています。



高校までの物理では物質の最小の単位は原子で、それを構成するのが原子核と電子、
というような感じで教わったような気がします。


素粒子物理学では、

原子核がハドロン(強い粒子)というグループから成り、さらにハドロンバリオンメソンという因子から構成されると考えます。

それに対してレプトン(軽い粒子)というグループは電子ニュートリノなどの因子を含みます。

バリオンは3個のクォークから成り、メソンは1個のクォークと1個の反クォークから成ります。

そして、クォークは、1対ずつ3つの階層に分類され、それぞれ「アップ、ダウン」、「チャーム、ストレンジ」、「トップ、ボトム」と名付けられており、「色荷(カラー)」と呼ばれる量子数を持ちます。


クォークは物質の最小単位ということになります。



この話を十分理解しようとするには、本書一冊では不十分なことが良く分かりました。
しかし、ノーベル物理学受賞者の業績に触れることが出来たのは有意義な経験になったと思います。



ゲームの理論入門


12 10, 2008 | Tag,ゲーム理論,ナッシュ均衡,ミニマックス法,囚人のジレンマ

ゲームの理論入門―チェスから核戦略まで (ブルーバックス 217)ゲームの理論入門―チェスから核戦略まで (ブルーバックス 217)
(1973/01)
モートン D.デービス

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本書はタイトル通り、ゲーム理論の解説書です。数式を用いず、ゲーム理論を解説している点が他書と差別化できる点なのでしょうか。

本書は1973年に初版が発刊され、現在なんと56刷目ですから、とても多くの人に読まれていることが分かります。

個人的な感想ですが、、、どうもいまいち私には理解できませんでした。

しかしながら、これはある程度の知識を持った人が読むとまた違う感想になるのでしょうし、私のようなゲーム理論について全く分かっていない素人の言う言葉はあまり当てにしない方が良いかもしれません。



ゲーム理論は、1928年にミニマックス定理を証明したジョン・フォン・ノイマンから始まった理論ですが、この理論の目的は、様々な利害関係を持つ主体同士が、その社会事象の中で、効用、情報、最適化行動、戦略、利得、均衡、交渉などの用語に厳密な意味を与えることです。

主体の行動法則を追及する行動科学の一領域とも言えます。


想定される最大の損害が最小になるような決断を行う戦略、「ミニマックス法」や、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ、「ナッシュ均衡」もおもしろいと思ったのですが、個人的には「囚人のジレンマ」がとても興味深かったです。


囚人のジレンマ

共同で犯罪を行った(と思われる)2人が捕まった。警官はこの2人の囚人に自白させる為に、彼らの牢屋を順に訪れ、以下の条件を伝えた。
  • 2人とも黙秘したら、2人とも懲役2年。
  • 共犯者が黙秘してても、自分だけが自白したら自分だけは刑を1年に減刑される。ただし、共犯者の方は懲役15年となる。
  • 逆に共犯者だけが自白し、自分が黙秘したら共犯者は刑が1年になる。ただし、自分は懲役15年となる。
  • 2人とも自白したら、2人とも懲役10年。
なお、2人は双方に同じ条件が提示されている事を知っているものとする。また、彼らは2人は別室に隔離されていて、2人の間で強制力のある合意を形成できないとする。

このとき、囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題。


この問題では、

まず共犯者が「協調」を選んだと考える。このとき、もし自分  が共犯者と協調すれば自分は懲役2年だが、逆に自分が共犯者を裏切れば懲役は1年ですむ。だから共犯者を裏切ったほうが得だ、という結論になる。

次に、共犯者が「裏切り」を選んだ場合も考える。このとき、もし自分が共犯者と協調すれば自分は懲役15年だが、逆に自分が共犯者を裏切れば懲役は10年ですむ。だから共犯者をやはり裏切ったほうが得だ。

以上より、自分は共犯者を裏切った方が得となる。


この考え方を共犯者の立場で考えてみると、同様に共犯者の共犯者(自分にあたる)を裏切った方が得、となる。


つまり、お互いが裏切るという選択に行きつくわけだが、これを最初のルールにあてはめて考えてみると、お互いが裏切る、というパターンはどちらにとっても最悪な懲役10年という結論になる。
参考:囚人のジレンマ



今度は別のゲーム理論入門書も読んでみたいと思います。



となりの車線はなぜスイスイ進むのか?  交通の科学


12 09, 2008 | Tag,行動経済学,交通の科学,渋滞,交通事故

となりの車線はなぜスイスイ進むのか?――交通の科学となりの車線はなぜスイスイ進むのか?――交通の科学
(2008/10/25)
トム ヴァンダービルト

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本書は交通にとどまらず、行動経済学の範疇に含まれる良書ではないでしょうか。

交通渋滞や交通事故を通じて、およそ合理的ではない人間の本質を明らかにしています。



目次が内容をよく表していると思います。

プロローグ 私はなぜ高速上の工事区間でぎりぎりまで車線合流しなくなったのか

第1章 どうしてとなりの車線の方がいつも速そうに見えるのか?
    車に乗ることは、人の意識をどう混乱させているのか?

第2章 あなたが自分で思っているほどよいドライバーではない理由

第3章 路上で裏切る私たちの目と心

第4章 どうしてアリの群れは渋滞しないのか
    (そして人間はするのか)?
    渋滞対策としての協力行動

第5章 どうして女性は男性より渋滞を引き起こしやすいのか?
    (そして交通をめぐるその他の秘密)

第6章 どうして道路を作れば作るほど交通量が増えるのか?
    (そして、それをどうすればよいのか?)

第7章 危険な道の方がかえって安全?

第8章 交通が語る世界、あるいはご当地運転

第9章 スーパーボウルの日曜日にビールを飲んでいる
    フレッドという名の離婚した医者とモンタナの田舎で
    ピックアップ・トラックに乗るべきではないのはなぜか?

エピローグ ドライビング・レッスン


まずは渋滞について

工事による車線減少は車を運転したことのある人なら誰でも経験したことがあるのではないかと思います。

「この先車線現象、左に寄れ」という標識を発見した後、いつ左車線に移動するのが適切なのでしょうか。

本書での結論は、「ギリギリまで粘って、最後に車線変更をする」というものです。

この方法では、正直に左車線に早々に変更した人からはブーイングが上がりそうです。どうしてブーイングなのでしょうか?それは、ギリギリまで車線変更しない人は、不公平な方法で自分だけ先に進んでズルをしているという意識があるからです。

果たしてそうなのでしょうか?最も効率良く輸送量を増やすという点で考えると、実はどの車も最後の最後まで両方の車線をフルに使って、輸送量を最大限活かすことが全体的な交通渋滞には貢献すると考えられるのです。

アリの隊列が渋滞をしないのは、全てのアリが秩序を徹底的に守っているからです。人間のドライバーはアリのように秩序だったが出来ません。効率良い輸送には秩序だった流れが必要です。


では、どうしたら渋滞をなくすことができるのでしょうか?
はっきり言って、この問題はとても難しいのです。

新しい道をどんどん作るというのはどうでしょう?

新しい道を作れば作るほど渋滞が緩和されるような気がしますが、これが逆であることを本書は指摘しています。現実的に道路を作るお金があるかどうかは別にして、そもそも通勤者が利己的であるがゆえに、新しい道ができたらそこに新たなドライバーが参入してくるのです。


これが、渋滞を改善させる可能性のある2つの方法です。
  1. リアルタイム交通情報とルート変更
  2. 渋滞料金
どれくらい渋滞が続いているのか?あとどれくらい我慢すれば渋滞が終わるのか?
先が見えないとドライバーはイライラします。また、どれくらい渋滞しているか分かれば、新たに別の道を選択するという方法も生まれます。イライラは事故の元になります。事故が起これば、更に渋滞します。

渋滞料金というのは、渋滞の時に別料金を課すというものです。これの利点は、物価が需給と供給を変化させるように、渋滞を調整できる点です。



交通事故について

著者はアメリカで交通事故による死亡者数が年間4万にも上るのに、それに対する対応がお粗末すぎるとおいうことも指摘しています。1か月で考えると約3000人です。決してバカに出来ない数字だと思います。あまりに多くの事故が起こっているので、目新しさがなくなり、社会的に大きな問題になるようなものしかメディアでも報道されません。また、数字が大きくなりすぎると人々の恐怖への感覚も薄れてしまう傾向にあるのでしょう。

私たちは自分で思うほど運転が上手ではありません。たいていのドライバーは自分のことを平均以上の腕前だと思う傾向があるし、自分は大きな事故を起こさないだろうと過信しています。


自分の運転を見つめ直すと共に、交通の科学に触れることが出来てとてもおもしろい一冊でした。
とてもお薦めな一冊です。




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