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「市場原理が医療を亡ぼす」 


04 01, 2010 | Tag,医療,資本主義,アメリカ医療

深刻な医療格差を引き起こしているアメリカ。その原因には医療に市場原理が導入されていることがあるという。

利益を極端に重視した医療を行うとどうなるか予想するうえで参考になる一冊。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
市場原理の導入が医療にもたらすもの、それは
  • 弱者の排除
  • 負担の逆進性
  • バンパイア効果
  • 市場原理のもとで価格が下がる保証がない
  • 質が損なわれる危険
である。


弱者の排除

市場原理のもとでは、購買力の乏しい人々が医療へのアクセスから排除される。特に、高齢者や低所得者。
アメリカには高齢者向けのメディケアや低所得者向けのメディケイドがあり、これらは税金でまかなわれている。まったく保険に加入できていない人は15%もいる(医療経営学 - メタノート)。(現在、オバマ大統領が医療保険改革を行い、無保険者をなくそうとしています。)

ところがメディケイドに加入していても、受けられる治療のレベルは民間保険会社のそれとは違う。メディケイドが税金で運用されているのに対して、民間の保険会社は被保険者からお金をたくさん集めることができるからだ。民間の方がいろいろな検査や治療ができる。

まして、市場原理のもとでは全く保険に加入していない人など病院から相手にされない。



負担の逆進性

貧乏で病気を数多く持っている人ほど保険料が高くなって、病院にはかかれなくなる。

企業を通じて団体割引で保険に加入している人は、大口顧客として割引価格で医療サービスを購入できるが、無保険者は定価で購入しなければならないとか。

これがまさに今のアメリカの保険制度だ。お金を持っていない人は必要な医療が受けられない。



バンパイア効果

地域にサービスの質を落としてでも価格を下げてマージンを追求する病院が出てきたらどうなるか。吸血鬼に噛まれたかのように、それまでサービスの質を追求していた良心的な病院が悪質な病院に変化していくのである。

経営状態は売上とか数字で評価できるものにしか現れないから、良心的であっても数字を良くするためにサービスの質を落とさざるをえないということ。



市場原理のもとで価格が下がる保証がない

価格がどちらにふれるかは、売り手と買い手の力関係で決まり、実際、医療をずっと市場原理に委ねてきた米国では、70-80年代は毎年10%を超える医療費上昇が続いた。

普通の市場だと需要と供給の最もバランスのとれたところで、価格も落ち着くのだろうが、医療の場合はちょっと違う。

例えば、医薬品は先行薬品に対して期間限定の特許が与えられている。ある期間は特定の製薬会社でしかその薬を作ることができないので、買い手に対して有利な立場にあると言える。要は製薬会社の言い値が売り値になるということ。



質が損なわれる危険

利益を上げるためには売上を増やすか、支出を減らすしかない。

例えば、患者あたりの看護師数を減らすことができれば、かかる人件費は少なくなるので病院の利益は増える。ところがそれでは患者満足度は下がる。ちなみに、看護師の受け持ち患者数が増えるほど、患者の死亡率が上がるというのは2002年のJAMAの論文で示されている。

それに利幅の大きい不要な検査や治療が横行する可能性もある。なんだかんだ理由をつけてレセプト審査の目をかいくぐることは不可能じゃないと思う。


市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
(2004/10)
李 啓充

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本書を読むと、医療制度に関してはアメリカよりも日本の方が弱者に優しいということがよくわかります。

お金をたくさん持っている人にとってはアメリカの方がいいのかなぁ。日本だと、名医と呼ばれる人に診てもらっても、そうでない人に診てもらっても、同じ料金です。その点アメリカでは違います。人気の医師はすごいお金を稼いでいる。まあ、名医の定義については議論の余地がありますが。。マスコミによく出る有名な医者が名医とは限りませんよ。

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資本主義の矛盾 「資本論 続・資本論 (まんがで読破)」


02 04, 2010 | Tag,資本主義,経済,貧困,労働問題,漫画

労働力などの可変資本、機械や工場などの不変資本、これらから付加価値を生み出して利益をあげていくのが資本主義社会。

労働力はその時の経済に合わせて交換価値が決まる。つまり、経済に合わせて値段が決まるということ。

機械などの不変資本が少なければ、可変資本、労働力の占める割合が大きくなるというようにトレードオフの関係になっている。

企業が利益を上げるためにはこれら不変資本や可変資本からできるだけ利益をしぼり出さないといけない。でも不変資本は機械とかだからしぼり出しようがない。可変資本からしぼり出すしかない。可変資本は労働力だからこれは可能。



企業がうまいことこの仕組みにのっとって利益を上げていったとして、資本も大きくなっていったとする。すると、労働者の給料は良くなって、給料が上がることが期待されるが実際にはそうならない。ここに資本主義社会の矛盾がある。

資本の増強に成功すると、次に向かう先は機械などの不変資本の増強だ。可変資本から利益をしぼり出すより、機械にお金をかけて生産の効率を上げた方が簡単だから。



こうして労働者にかかる負担が下がり、生産量がアップしたとする。すると、困ったことに利益率は下がってしまうのだ。なぜなら、剰余価値を生み出すことができる可変資本が増えていないから。

これでは労働力の付加価値は増えない。むしろ下がってしまう。労働力は交換価値として貨幣に換算されるので、労働力の付加価値が下がれば、生産量がアップしていたとしても給料は下がるという仕組み。これが資本主義社会。



この構図を見ると、労働者はいつまでたっても搾取される立場から抜け出せない。うまみがあるのは搾取する立場の人たちだけ。だから、資本主義社会に反対する人もいるわけだ。



本書の内容は1800年代の話だが、この構図は基本的には今の社会にもあてはまる。派遣労働者、日雇い労働者、ネットカフェ難民など、マルクスとエンゲルスの時代に起きていたことが顔を出している。

いちおう政府によるセーフティネットが整備され、基本的な人権を確保しようとする向きはあるが。

続・資本論 (まんがで読破)続・資本論 (まんがで読破)
(2009/04/28)
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バンカーは善か悪か 「さらば、強欲資本主義」


12 07, 2009 | Tag,投資銀行,資本主義,バブル

意外でしたよ。投資銀行の創業者がこんな風に思っているとは。

本書は投資銀行 ロバーツ・ミタニLLC の創業者で、現在もニューヨークで活躍されているバンカーです。最近は執筆活動の方にも力を入れておられるのか、強欲資本主義 ウォール街の自爆や世界経済はこう変わるなどの作品があります。

本書は約一年前の本で、ちょうどバブルが崩壊した頃の話を中心に、行き過ぎた資本主義に疑問を投げかけています。

本書の作りは読者にあてた17の手紙、という形になっており、非常に読みやすく構成されています。


さらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべしさらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべし
(2008/06)
神谷 秀樹
ウォール街で働くバンカーですから、典型的な拝金主義者を想像してしまいます。しかし、本書の著者神谷さんは拝金主義を徹底して非難しています。今回のバブルはサブプライムローンに端を発していますが、これもアメリカ国民の稼ぐ前に借金をしてでも消費をする気質、それと拝金主義のバンカーが原因の一助を担っていると。

ロバーツ・ミタニLLCのスタッフは皆、拝金主義には否定的で、仕事をともにするパートナーには理念を共有できた相手を選ぶそうです。彼らが今力を入れているのは医療産業です。

どうやら神谷さんは金融の力で世の中をよくしようと考えているようなんですね。その姿勢に心を打たれました。


彼のその思想の根底にはキリスト教の教えがあるようです。本書を読んでいると、随所にその教えが出てきます。私自身、特定の信仰はないのですが、本書第10の手紙 -真のリーダーは偉ぶらない- がグッときましたよ。

医師は普通に生活、仕事しているとチヤホヤされやすい職業ですから。謙虚であることは大切だなと思います。

キリスト教の大事な価値観のひとつにも「へりくだること」があるそうです。

日本にも「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉がありますね。

こういうことって誰かから指摘されることってあまりないんじゃないかな。だから自分で意識しておかないといけませんね。気をつけます。


バンカーにはこんな理想を持って仕事に取り組んでいる人もいるんだ、という新しい発見があった一冊。刺激をもらいました。他業種の人にも十分参考になる生き方だと思いますよ。

さらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべしさらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべし
(2008/06)
神谷 秀樹

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ハイエク 知識社会の自由主義


11 21, 2008 | Tag,ハイエク,ケインズ,資本主義,自由,池田信夫,インターネット

著者はアルファブロガーでもある池田信夫さんです。
池田信夫 blog

経済学者はおそらく学者として自分のことを認識しているのであれば、あらゆる社会現象を説明しうる理論というのを求めているのだと思います。

本書はフリードリヒ・フォン・A=ハイエクさんを引用し、著者が現代の経済学に対する一つの解を示している本なのだと思います。

様々な学派がありますが、経済学がいまだに一つの学問として答えに行き着いていないところを見ると、とても難しい学問であることが良く分かるし、まさに答えのない学問なのかもしれません。

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)
(2008/08/19)
池田 信夫

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本書は分かりやすく書いた本だと著者は文中で語っていますが、おそらくこれは経済学を一通り勉強したことのある人にとってです。本文中には経済学の繁栄の基礎を築いた偉人がたくさん登場し、それに関する引用も細かく記してあり、その体裁はさながら論文のようです。

当ブログ:容疑者ケインズ―不況、バブル、格差。すべてはこの男のアタマの中にある。でも触れましたが、経済を考える上で理解しておくべき立場は、市場はもともと効率的であると主張する古典派と、政府は金融政策や財政政策を積極的に行うべきと主張するケインズ派の二つが主流でしたが、ハイエクはこれらの説とは違う立場にいます。

ハイエクは、人々は不完全な知識のもとで、必ずしも合理的とは言えない慣習に従って行動する、と主張しています。

社会主義や新古典派に共通する合理主義完全な知識という前提を批判し、ケインズ的な計画主義をも批判しています。そしてハイエクは、「不完全な知識に基づいて生まれ、常に進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ」、という予言をしていて、これは現在のインターネット社会の繁栄を予言するものとなっています。

インターネットを例にとってみても分かるとおり、現代が知識社会であればこそ、ハイエクの予言は真実味を帯び、私たちは多くを参考にすることができるのだと思います。



経済学はいまだに答えが出ていないと記述しましたが、これは何も経済学に限ったことではありません。医学もそうですし、どの学問についても言えることでしょう。だからこそ、学問として成立するわけで、今日の常識が明日の常識ではないかもしれない、真実に対する探求こそが学問の魅力なんだと思います。



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