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運を実力と勘違いしていないか 「まぐれ」


05 11, 2010 | Tag,まぐれ,行動経済学

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
長年トレーダーとして働き、現在は大学教授でもある著者による一冊。

投資で莫大な利益をあげたトレーダーを、運を実力と勘違いしているバカ、と辛辣に批評しています。

  • 利益を上げ続けているトレーダーが、小難しい理屈を並べて勝因を語っていたとしても、それは後付けバイアスによるものだ。起きたことをはじめから予見は出来ない。できたとしても、たまたまそうなっただけかもしれない。
  • 例えば過去のデータを元にして、コンピュータや統計を駆使して株価の推移を予測したとしても、未来がそうなるとは限らない。
  • 統計から得られたデータも、長い目で見ると平均に回帰するかもしれないが、短期的には予測不可能な動きをすることがある。
  • ど素人でもたまたまが重なれば、投資で莫大な利益を得ることはできるだろう。しかしながら、それを一般化して語ることはできない。
  • ところが私たちの脳は、この世界で起きることはじっさいよりもずっと、はるかにずっと、偶然ではないと思い込むようにできている。
  • そして現実には、「ファット・テイル」、つまり大きく極端に振れた事象を起こす強い(ワイルド)種類の不確実性というのが生じる。

というのが著者の主張です。


もちろん著者はすべての事象がたまたま起きると主張しているわけではありません。ですから、

私たちの脳みそは確率が高いとか低いとかの話が簡単にわかるようにできていない。すぐ「あるかないか」なんていう極端な話になってしまう。この本で書いたのは、「物事は私たちが思っているよりもたまたまなんだ」ということ。


ということを言っています。


本書の内容は行動経済学とも関わりが深いと思います。

起こる可能性があるすべての歴史の中から、その一つがまったく偶然に実現しただけなのに、私たちはそれを全体の代表的な一つだと思い込み、他にも可能性があったのをすっかり忘れてしまう。

 代表性ヒューリスティクスですね。


私たちは、目に見えるものや組み込まれたもの、個人的なもの、説明できるもの、そして手にとってさわれるものが好きだ。

 これは利用可能性ヒューリスティクスだ。


そんなタレブさんの投資法は、
私がずっと市場でやってきた仕事は、「歪みに賭ける」と言うのが一番あっている。つまり、稀な事象で儲けるのだ。稀な事象はめったに起きないけれど、その分、実際に起きればとても儲かる。そのかわり、めったなことでは儲からないように心がけている。

だそうですよ。


隣の誰かがガンガン投資で稼いでいたら、どうしても羨ましくなったり、自分にも同じことができるはずだ、と思ってしまうものです。

本書はそんな邪念に打ち勝つためのヒントとなってくれそうです。

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのかまぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
(2008/02/01)
ナシーム・ニコラス・タレブ

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著者の本では昨年、「ブラックスワン」という本が出版されています。今度はこちらを読みたいと思います。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
(2009/06/19)
ナシーム・ニコラス・タレブ

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ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
(2009/06/19)
ナシーム・ニコラス・タレブ

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2 CommentsPosted in 心理

経済が苦手な人はまずこの本を初めに読むといいかもしれない 「亜玖夢博士の経済入門」


08 31, 2009 | Tag,経済学,行動経済学,囚人のジレンマ,コールドリーディング,,橘玲

経済の話というと、難解なイメージがあり、敷居が高く感じるのですが、本書はそんなイメージを覆す一冊です。

本書の良いところはなんと言っても、その読みやすさでしょう。小説形式になっているため、以下にあげる経済学のメジャーなテーマを感情移入して体験できます。

亜玖夢博士の経済入門亜玖夢博士の経済入門
(2007/11/28)
橘 玲

商品詳細を見る


  • 行動経済学
  • 囚人のジレンマ
  • ネットワーク経済学
  • 社会心理学
  • ゲーデルの不完全性定理
これらがテーマになっています。


行動経済学

「目の前の現金のほうが、将来の返済額よりはるかに価値が高い。だから君たちは、一時の快楽のために喜んで高利の金を借りる。このように、君の意思決定は行動経済学によって完全に説明できるのじゃ。」
人はなぜ借金をするのか、これは行動経済学でいうところの「選好の逆転」ですね。


囚人のジレンマ

これはWikipediaに詳しい解説が載っています。 合理的な各個人が自分にとって「最適な選択」(裏切り)をすることと、全体として「最適な選択」をすることが同時に達成できないというものです。本書の中ではこれをヤクザの抗争にあてはめて説明されています。

囚人のジレンマ - Wikipedia


ネットワーク経済学

ネットワークの性質
  1. 自然発生的に生まれた複数の中心を持つランダムな網の目。中心はハブと呼ばれる。
  2. 「中国で蝶が羽ばたくとテキサスで竜巻が起こる」 つまり、一か所での影響が遠く離れたところでは大きな効果となって現れるというもの。
  3. モテる者はますますモテる。 本書ではこれを小学校でのイジメを題材にして説明しています。


社会心理学

この章ではコールドリーディングを用いたマルチ商法がテーマになっています。
Yes, Yesと言わせて次のYesを引き出すYesセット、権威に対する服従、長いものには巻かれろ、の社会的証明、めずらしいものほど価値がある希少性の原理、無償で何かをしてもらったらお返しをしたくなる返報性の原理、などが出てきますが分かりやすく理解できます。


ゲーデルの不完全性定理

最後の章は経済学というよりは論理学ですかね。こういう話も嫌いではないのでおもしろく読めました。

「あなたってうそつき」、「きみって正直」
→ 私はうそつきなの?正直なの?
これらが論理矛盾を起こすというもの。
このような相互参照のジレンマは、システムの外部性を導入することによって解決できる。

「私はうそつき」と私が言う。
→ 私はうそつきなの?正直なの?
自己言及のジレンマは構造的にパラドクスを生み出すため、システムの内部で問題を解決することができない。


息抜きで読むのにも適した一冊でした。

亜玖夢博士の経済入門亜玖夢博士の経済入門
(2007/11/28)
橘 玲

商品詳細を見る



過去に紹介した他の橘さんの本はコチラ
臆病者のための株入門
↑資産運用の基本書としてとてもいいです。

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術
↑もう少し幅広く投資をしたい人向けの一冊です。


本書にも登場した行動経済学についてはコチラ
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
覚えておいて損はない「判断」に関する18の不合理な法則 【書評】ねじれ脳の行動経済学
人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理




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覚えておいて損はない「判断」に関する18の不合理な法則 【書評】ねじれ脳の行動経済学


04 29, 2009 | Tag,行動経済学,心理,不合理

ねじれ脳の行動経済学 (日経プレミアシリーズ 41)ねじれ脳の行動経済学 (日経プレミアシリーズ 41)
(2009/04/09)
古川 雅一

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本書の著者である古川雅一さんは行動経済学の専門家。私たちの日常生活では毎日大きな選択から小さな選択に至るまで様々な選択に迫られていると思いますが、振り返ってみていつもベストな選択をしているとは言い難いのが現実だと思います。「どうしてあの時あんな選択をしてしまったんだろう」と後悔することもしばしばですが、本書はそんな人間の不合理な意思決定について易しく解説してくれています。

以前にも経済は感情で動く―― はじめての行動経済学人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理で行動経済学の著作は読んできましたが、それらは文量も結構多く、読み応えがある反面、読みとおすのが大変だったかもしれません。それに比較して本書は約200ページの新書ですので、抵抗なく読めると思います。

行動経済学の本全般に当てはまることでしょうが、本書も例外ではなく、「あるある」という事例が豊富にでてきて、読んでいて納得感の得られる一冊でした。



自信過剰

1. 自分の思い込みに沿った評価を無理に導き出そうとしてしまう「確証バイアス」

2. 楽観的な情報が先にあって、それに整合する情報のみ集めて情報を都合よく解釈してしまう「楽観的シナリオの自信過剰(過度の楽観)」

3. 一回目にうまくいった方法で二回目もうまくいくだろうと根拠なく思いこんでしまう「勝者の呪い」



認知不協和

4. 自らの意見を大多数の意見だと思いこんでしまう「総意誤認効果」

5. 自分の行動や知識と矛盾したものに遭遇すると不快感を覚える「認知不協和」

6. 失敗に終わったとき、いろいろな情報が耳に入ってきても、自分の責任ではなく外的なものが原因と考えてしまう「自己責任バイアス」



フレーミング効果

7. 松竹梅のメニューがあったら竹を選んでしまう「極端回避性」

8.選択肢が多すぎると選べなくなる「決定麻痺」



価値関数

9. 1万円儲けた時と2万円儲けて1万円損した時では実際には儲けた額は同じなのに後者の方が痛みを感じる「損失回避性」

10. 買った株はなかなか売りたくない「保有効果」



利用可能性ヒューリスティクス

11. 物事の起こる確率をその例の思いつきやすさで推測してしまう「利用可能性ヒューリスティック」



アンカリング

12. 266万円の見積もりを250万円にしてもらったら本当は250万円がもともとの妥当な額だったかもしれないのにお得な気分になってしまう「アンカリング効果」



確率荷重

13. 期待値が小さくてもリスクを回避して確実に得をする方を選択する「確実性効果」

14. 低い確率を高く、高い確率を低く評価するあてにならない人間の予想「確率荷重」



代表性ヒューリスティクス

15. 2年目のジンクスはあてにならない。多数のサンプルや多数回のトライアルがあって平均に回帰していくのにたった一回の事象から次jを予測することはできないから。2年目のジンクスの誤りを「平均への回帰の誤謬」という。

16. 同じように「ギャンブラーの誤り」というものがある。コイン投げをして表が10回連続で出たら次は裏だろうと考えるもの。実際にはコイン投げで裏が得る確率はその時々で2分の1である。

17. 自分でクジを引くことで当たる確率が高くなる気がする「支配の錯覚」



選好の変化

18. 時間的に近い未来のことは高く評価し、遠い未来のことは低く評価してしまう。「早起きをすること」と「もう少し、と二度寝をしてしまう」ことは「選好の逆転(時間非整合性)」が起きて誘惑に負けてしまうことによる。



どれも痛いほどよく分かる法則ばかりですが、「わかっちゃいるけどやめられない」法則でもあるかもしれません。しかし、こういう法則を知っているのと知らないのとでは選択の仕方が変わってくるのも事実でしょう。「そういえば、この状況はあの法則の状況と似ているな」と思ったら、自分に都合の良い思い込みで判断することをなくしたり、松竹梅のうち梅を選んだり、二度寝を防ぐことができるようになれる可能性があります。

本書を元に自分の行動を振り返ってみるといいでしょう。


【関連記事】
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理




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【書評】あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則


02 06, 2009 | Tag,スウェイの法則,行動経済学

あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則
(2008/12)
オリ ブラフマンロム ブラフマン

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本書ではおそらく誰でも人間なら無意識のうちに影響されている法則を「スウェイの法則」として8つ紹介されています。

行動科学についての本を読んだことのある人にとっては馴染みのある法則かもしれません。
本書に取り上げられている8つの法則はどれも例示が分かりやすく、しかもそのどうしようもない修正についての対処法まで述べられている点が嬉しいところです。

この中から6つのエッセンスと対応策をまとめてみます。

1.損失回避
2.コミットメント
3.価値基準
4.評価バイアス
5.プロセスの公平性
6.グループ力学



1.損失回避
手に入れるものより失うものの方が痛みを感じるというもの。

「例えば株式投資の時のように、短期的目標ではなく、長期的な目標に重点をおくと心の痛手がいくらか減らすことができる。」



2.コミットメント
いったんやると決めたものは撤回しにくいというもの。
本書の中では考古学の話が出てきますが、科学の世界において「広く知られている説」が、より「確からしい説」に塗り替えられる過程でもこの法則が邪魔をします。

「過去を捨てることを学ぶ」



3.価値基準
客観的なデータではなく、最初に抱いた印象で物事の価値を判断してしまうこと。
世界的に有名なバイオリニストが地下鉄の構内で普段着のまま演奏しても、道行く人はほとんど素通りしていったそうです。

「今の自分の判断は間違った過程に基づいていないか自問してみる。人について判断するとき、評判だけ聞いて判断するのは危険。」



4.評価バイアス
これも上の法則と似ていますが、本書では、NBAのドラフトで上位にランクされた人ほど選手寿命が長かったというデータが紹介されています。つまり、初めの評価がプロになってからも影響しているということです。

「評価は常に暫定的なものと考えること。」



5.プロセスの公平性
結果の損得よりも手続き上の公平性を重視する。
自動車ディーラーはメーカーとの取引の内容より、どれくらい丁寧に対応してもらったか、というような感情的要因を重視しているという研究結果があります。

「物事を客観的に見るようにし、感情の動きや倫理的判断に屈しない。意思決定のプロセスを開示する。」



6.グループ力学
みんなが同じ意見だと、違うと思っていた自分の意見がみんなと同じものに変わってしまうこと。

「議論の場では反対意見を簡単に言えるような環境を整える。」




本書は8つのスウェイの法則だけでなく、法則の具体的な例と対処法についての記載がとても興味深い一冊でした。


参考:経済は感情で動く―― はじめての行動経済学



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人間とはなんとすばらしい傑作か 【本】予想どおりに不合理


01 05, 2009 | Tag,行動経済学

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
(2008/11/21)
ダン アリエリーDan Ariely

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本書は感情と理性の間で揺れ動く人間の心理を理解するのに役に立つ本です。
人間がどうして不合理な行動を起こしてしまうのかを解明するのは非常に難しいことだと思います。

私たちは後から考えるとどうしてそのような行動をとったのか分からないような行動をすることがよくあります。

本書は経済学を、「人間はそもそも合理的ではない」という視点で考える場合や「単純にこれまでに行ってきた自分の選択について振り返る」場合などに役に立つと思います。



本書の中から心に留めておきたい「私たちの10の性質」を紹介します。

1.相対性の真理
AとBという選択肢があった場合、そのままでは迷ってしまう選択肢でもAより少し劣るA'という選択肢があると、Aを選びやすくなる。
自分の給料が仕事に対して見合わないと思うのも、同僚が自分より少しだけでも多くの給料をもらっているから。


2.需要と供給の誤謬
実は価格は需要と供給だけで決まるものではない。
本書では黒真珠の話が出てきますが、黒真珠の価格は売り手が巧妙に高級品であることを買い手にすりこんだことで出来上がったりしている。


3.ゼロコストのコスト(無料が本当は無料じゃない理由)
「無料のおまけ」がついていたり、「3足買えばもう一足は無料!」となっていると、お得感がしてついつい商品に手が伸びてしまう。


4.性的興奮の影響
性的興奮を感じている時、確実に判断力が鈍る。どんなに理性的な人間でも、興奮が高ぶっている時は理性的な部分がどこかに行ってしまう。


5.先延ばしの問題と自制心
先延ばしにすればするほど、自制心が活躍する場が少なくなってしまう。意志は時間の経過とともに弱くなる。こういった場合、自分のやりたい事は自動的に出来るように仕組化する方が良い。


6.高価な所有意識
いったん所有してしまったものは容易には手放したくなくなる。だから、自分では適正な価格以上の価格付けができると思ってしまう。


7.選択の自由
選択肢が少ないというのは私たちにとってとても窮屈なことである。かと言って選択肢が多いと選択が困難になったり、目的にそぐわない選択をしてしまったりする。


8.予測の効果
これは先入観と大きく関係がある。
コカコーラに抱くイメージとペプシコーラに抱くイメージとは残念ながら違う。

ワインをおいしく見せたかったら、いいワイングラスに入れるようにしましょう。


9.価格の力
高い方が良いと考えがち。
値段の高い薬と安い薬では、同じ成分の薬でも高い薬の方が良く効いたそう。

これだと、後発薬品は広まらないことになってしまいますね。


10.わたしたちの品性
人々はチャンスがあれば、ごまかしをする。しかし、いったん正直さについて考えだすと、ごまかしを完全に止める。そもそもわたしたちは誘惑に負けやすいのである。誘惑に駆られている瞬間に道徳心をどう呼び起こすかが問題だ。


本書から得られる最大の教訓
わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である。わたしたちはたいてい、自分が舵を握っていて、自分が下す決断も自分が進む人生の進路も、最終的に自分でコントロールしていると考えている。しかし、悲しいかな、こう感じるのは現実というより願望(自分をどんな人間だと思いたいか)によるところが大きい。

本書で紹介されている「心の動き」は読者を納得させるのに十分だと思いますが、紹介されているのは”結果”にあたる部分で、”機序”の部分ではありません。だから、内容についてとやかく言えるものではありません。人間はどうしようもなく、このような行動を起こしてしまうものなのですから。

一方で、私たちがとりやすい思考や行動のパターンを知っておくことは、生きていく上での最善の選択を行うために確実に役に立つと思います。


参考記事:経済は感情で動く―― はじめての行動経済学



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となりの車線はなぜスイスイ進むのか?  交通の科学


12 09, 2008 | Tag,行動経済学,交通の科学,渋滞,交通事故

となりの車線はなぜスイスイ進むのか?――交通の科学となりの車線はなぜスイスイ進むのか?――交通の科学
(2008/10/25)
トム ヴァンダービルト

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本書は交通にとどまらず、行動経済学の範疇に含まれる良書ではないでしょうか。

交通渋滞や交通事故を通じて、およそ合理的ではない人間の本質を明らかにしています。



目次が内容をよく表していると思います。

プロローグ 私はなぜ高速上の工事区間でぎりぎりまで車線合流しなくなったのか

第1章 どうしてとなりの車線の方がいつも速そうに見えるのか?
    車に乗ることは、人の意識をどう混乱させているのか?

第2章 あなたが自分で思っているほどよいドライバーではない理由

第3章 路上で裏切る私たちの目と心

第4章 どうしてアリの群れは渋滞しないのか
    (そして人間はするのか)?
    渋滞対策としての協力行動

第5章 どうして女性は男性より渋滞を引き起こしやすいのか?
    (そして交通をめぐるその他の秘密)

第6章 どうして道路を作れば作るほど交通量が増えるのか?
    (そして、それをどうすればよいのか?)

第7章 危険な道の方がかえって安全?

第8章 交通が語る世界、あるいはご当地運転

第9章 スーパーボウルの日曜日にビールを飲んでいる
    フレッドという名の離婚した医者とモンタナの田舎で
    ピックアップ・トラックに乗るべきではないのはなぜか?

エピローグ ドライビング・レッスン


まずは渋滞について

工事による車線減少は車を運転したことのある人なら誰でも経験したことがあるのではないかと思います。

「この先車線現象、左に寄れ」という標識を発見した後、いつ左車線に移動するのが適切なのでしょうか。

本書での結論は、「ギリギリまで粘って、最後に車線変更をする」というものです。

この方法では、正直に左車線に早々に変更した人からはブーイングが上がりそうです。どうしてブーイングなのでしょうか?それは、ギリギリまで車線変更しない人は、不公平な方法で自分だけ先に進んでズルをしているという意識があるからです。

果たしてそうなのでしょうか?最も効率良く輸送量を増やすという点で考えると、実はどの車も最後の最後まで両方の車線をフルに使って、輸送量を最大限活かすことが全体的な交通渋滞には貢献すると考えられるのです。

アリの隊列が渋滞をしないのは、全てのアリが秩序を徹底的に守っているからです。人間のドライバーはアリのように秩序だったが出来ません。効率良い輸送には秩序だった流れが必要です。


では、どうしたら渋滞をなくすことができるのでしょうか?
はっきり言って、この問題はとても難しいのです。

新しい道をどんどん作るというのはどうでしょう?

新しい道を作れば作るほど渋滞が緩和されるような気がしますが、これが逆であることを本書は指摘しています。現実的に道路を作るお金があるかどうかは別にして、そもそも通勤者が利己的であるがゆえに、新しい道ができたらそこに新たなドライバーが参入してくるのです。


これが、渋滞を改善させる可能性のある2つの方法です。
  1. リアルタイム交通情報とルート変更
  2. 渋滞料金
どれくらい渋滞が続いているのか?あとどれくらい我慢すれば渋滞が終わるのか?
先が見えないとドライバーはイライラします。また、どれくらい渋滞しているか分かれば、新たに別の道を選択するという方法も生まれます。イライラは事故の元になります。事故が起これば、更に渋滞します。

渋滞料金というのは、渋滞の時に別料金を課すというものです。これの利点は、物価が需給と供給を変化させるように、渋滞を調整できる点です。



交通事故について

著者はアメリカで交通事故による死亡者数が年間4万にも上るのに、それに対する対応がお粗末すぎるとおいうことも指摘しています。1か月で考えると約3000人です。決してバカに出来ない数字だと思います。あまりに多くの事故が起こっているので、目新しさがなくなり、社会的に大きな問題になるようなものしかメディアでも報道されません。また、数字が大きくなりすぎると人々の恐怖への感覚も薄れてしまう傾向にあるのでしょう。

私たちは自分で思うほど運転が上手ではありません。たいていのドライバーは自分のことを平均以上の腕前だと思う傾向があるし、自分は大きな事故を起こさないだろうと過信しています。


自分の運転を見つめ直すと共に、交通の科学に触れることが出来てとてもおもしろい一冊でした。
とてもお薦めな一冊です。




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