まだまだ下がるか 【書評】世界経済はこう変わる


08 19, 2009 | Tag,経済,バブル

本書は神谷秀樹さん、小幡績さん二人の対談形式になっている本です。

神谷さんはさらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべしの著者、小幡さんはすべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)の著者です。

両者ともその主張には相通じるものがるようで、対談は盛り上がっています。

世界経済はこう変わる (光文社新書)世界経済はこう変わる (光文社新書)
(2009/05/15)
小幡績神谷秀樹

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気になる今後の世界経済ですが、歴史から予想するなら株価はまだまだ下がるということです。
1929年の大恐慌の時、株価はすぐに半分以上落ちて、その後乱降下しつつ、3年かけて下がり続け、さらに3分の1になって、最終的には9分の1になりました。

最近の日経平均は持ち直してきましたが、まだまだ乱降下しながら長期的には下がり続けるのでしょうか。

今回のバブル崩壊に金融機関が大きく関与していたことは明らかです。

細分化された金融商品が金融市場に過剰に出回り、一方的な資金の流入が起こったことが原因の一つになっています。そして、金融市場から資金が一気に流れ出たことで、さまざまな金融商品が紙くず同然になった。

お金の循環が阻害されることはバブル形成と、崩壊に少なからず影響していると思います。


これから求められる金融機能は資本を適切に配分する機能です。

証券化された金融商品が紙くずになるのを目の当たりにすると、お金がそういった商品に流れていかなくなるのは明白です。

金融の本質は信用。あなたを信用するからお金を貸します、というもの。信用がなくなればお金は回らなくなる。今の世の中では信用収縮が世界を不景気にしています。

過去の金融機能はもはや機能しません。そこにしがみつくのではなく、新たな金融機能の創造が必要です。


本書の中では大半がアメリカの経済を中心として考えられています。世界第一位の経済大国であり、基軸通貨を持った国ですから当然です。

その中で明るい話題として感じたのはアジアが世界経済復活の望みであるということです。アメリカはこれまで借金に借金を重ねながら、それでも外需で成長を続けてきました。結局外需依存はこのような経済危機の状況では弱い。対照的に内需で成長してきたアジア諸国はこれから自力で成長する可能性があるということです。


今後日本はどのようにして成長を遂げるのでしょうか。

一つの答えがイノベーションです。イノベーションこそ、経済を転換させる原動になり得ます。ソニーのウォークマン、トヨタのハイブリッド技術、日本には世界に誇れる技術やそれを生み出す力があると。

たしかにそうかもしれません。


本書は世界経済について悲観するだけではなく、希望が持てる一冊です。

世界経済はこう変わる (光文社新書)世界経済はこう変わる (光文社新書)
(2009/05/15)
小幡績神谷秀樹

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【書評】クルーグマン教授の経済入門


07 24, 2009 | Tag,経済,クルーグマン,NAIRU

本書はアメリカ経済を中心に語られている本ですが、内容は日本の経済にあてはめて考えることができると思います。

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)
(2009/04/08)
ポール クルーグマン

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クルーグマン教授は2008年のノーベル経済学賞受賞者です。本書のいいところは、難しい経済用語をなるべく噛み砕いて分かりやすくかかれているところです。文調もかなりくだけていて、親しみがわく感じです。

経済にとって大切なこと、たくさんの人の生活水準を左右するものはこの3つです。


生産性、所得分配、失業


生産性を上げるためにはどうしたらいいか?
ある国が長期的にみて、生活水準をどれだけ上げられるかを決めるのは、ほとんどすべてその国が労働者一人当たりの産出をどれだけ増やせるかにかかっています。

それでは産出を増やしたければ、労働者にもっと作業用の資本(機械とか設備とか快適なオフィスとか)を与えて、教育水準を高くするといったアイディアがあると思います。

しかし、昔からこれらの投資は行っていたにも関らず、その割に生産性の成長は鈍化しています。

他に規制緩和などの経済政策も考えられると思いますが、過去のアメリカを見るとこれもあまり効果が上がっていません。

結局のところ、生産性成長は経済を左右する最大の要因であるのに効果的な政策は現実にはないということです。


所得の再分配について
アメリカのように格差の激しい社会ではそのギャップをなんとかして減らすために所得を分配しようとします。

所得の多い人からはたくさん税金をとって、貧困層からはあまり税金をとらない。むしろ社会保障で助けてあげる。

しかし、貧困層にいくら再分配して生活を豊かにしてあげたところで、そもそも貧困層は働かないという問題があります。

また、富裕層に多くの税金をかけようとしても政治を作っているのが富裕層ですから、そこまで強引な課税はできないと思います。あまり税金が多すぎると、富裕層やそれを目指す人たちのモチベーションを下げることにもつながるはずです。

結局所得の再分配をなくすような有効な政策もいまだありません。


インフレ率を一定に保つためには一定の失業率が必要
インフレ無加速失業率(NAIRU:Non-Accelarating Inflation Rate of Unemployment)というのがあります。失業率とインフレ率が均衡する率のことです。物価がどんどん上がる状況であれば、労働者もそれに合わせてどんどん賃上げを要求するのでこれには相関関係があります。失業をたとえば6%から3%に下げようと政府が頑張ると、それまで一定だったインフレが年間5%くらい上がっていってしまうというようなことが起きてしまうのです。

インフレがよくないのは物価が上がること自体ではありません。むしろ物価が変わり続けることによって、それが意志決定をゆがめ、結果として経済の効率が下がるということです。

具体的なコストとしては、インフレはお金を使う気をなくさせます。ハイパーインフレ(年率何千%とか)の経済では今稼いだお金はあっという間に価値がなくなってしまいます。だから、物々交換をしたり、ブラックマーケットの外資とかを使ってなるべくお金を持たないようにします。お金の循環がなくなった経済は健全とは言えないでしょう。

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)
(2009/04/08)
ポール クルーグマン

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金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った!?


06 24, 2009 | Tag,金融,経済,ロスチャイルド

金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫)金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫)
(2008/09)
安部 芳裕

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モノの価値は貨幣という便利な発明品によって置き換えられます。これにより物々交換の時代の不便さが解消されました。

モノ=貨幣なら貨幣の総量は常に一定であるはずなのですが、お金を貸し借りするようになると、「信用」をどのような手段で確保するかが問題となってきます。

昔々はお金は貨幣や金などの実体のある交換手段でしたが、お金の貸し借りに生じる「信用」を何で確保するかとなると貨幣だけでは不十分となってきます。

そこへ登場するのが銀行が発券する紙幣です。利子という信用価値は銀行にとっては格好の収入源です。銀行は利子によって儲けているのです。国が何かするときにもお金が必要になりますから、紙幣を支配するものは国すら支配できるという理屈になります。

ロスチャイルド家はここに目をつけて銀行業を興します。「借りる者は貸す人の奴隷となる」は旧約聖書の言葉ですが、まさにロスチャイルド家は貸す人となり、世界を支配することまで考えたわけです。

初大ロスチャイルドであるマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドは当時の主要な権力者を集めて25にわたる行動計画を作成しました。

中でも恐ろしいと感じたのは、
  • 人間を支配するには暴力とテロリズムに訴えると最善の結果が得られる。権力は力の中に存在している。
  • 大衆はどのようにして自由を享受すればいいのか分からない。自由という発想を利用すれば階級闘争を生じさせることも可能だ。
  • 群集心理を利用して大衆に対する支配権を獲得すべきだ。
  • 自ら戦争を誘発しながら、敵対するどちらの側にも領土の獲得が生じない和平会議を主導しなければならない。戦争は対立する双方の国家が負債を抱え込み、我々の代理人の手中に落ちるように指導されなければならない。
  • 我々の力を行使すれば、失業と飢えが作り出され、大衆にのしかかる。そうすれば確実な資本の支配力が手に入る。
  • 恐怖支配はてっとり早く大衆を服従させる最も安上がりな方法だ。
です。

なんとも恐ろしい行動計画ばかりですが、これを踏まえて過去を振り返ると、1700年代に考えられたこれらの行動計画が現代に至るまでの間に実際に実行されてきたのではないかと思わされます。戦争やテロが繰り返されている現実はもしかしたら、ロスチャイルド家の末裔がどこかで主導しているのかも、しれません。

戦争やそれが引き起こす混沌は銀行を潤わせる。たしかにこれは事実なのだと思います。本当にロスチャイルド家が歴史的な戦争に関与しているかどうかは別にして、こういう事実は知っておくべきでしょう。

私たちが知らない世界で、思いもかけない恣意が働いている可能性がある。

なんとも恐ろしい、現実になさそうでありそうな内容の一冊でした。

金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫)金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫)
(2008/09)
安部 芳裕

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貧困対策の切り札となりうるか 【書評】ベーシック・インカム入門


05 11, 2009 | Tag,ベーシックインカム,経済,貧困

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
(2009/02/17)
山森亮

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本書はときどき話題にのぼるベーシックインカムについて解説した本です。

ベーシックインカムとは所得に関係なく、国民一人一人に決まったお金を給付するものです。そして、医療や教育、介護、保育、住居などにかかるお金もほぼタダです。

この制度のいい点はどんな人でもどうしようもない貧困に陥ることが少なくなる点でしょう。最低限のお金や福祉は国から与えられるのですから。

日本にはセーフティネットとして生活保護という制度がありますが、この制度の最大の問題点は現状では保護が必要な5人のうち1人しか保護が受けられていないことです。十分なセーフティネットを行き渡らせるなら、予算も5倍必要ということです。

過去にはアメリカ、イギリス、イタリアで女性を中心としたベーシックインカムの元になるような運動はありました。女性を中心とした、というのには意味があって、女性の家事が労働として認められず、労働の対価として報酬を得られないこと問題だという意見が出てきたのです。著明なところでいくと、過去にはキング牧師やその他のノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンさんやジョージ・スティグラーさんなどもベーシックインカムという制度を支持していたようです。



このベーシックインカムという制度、いいことづくめなような気がしますが、問題点もあります。


1.国民が働かなくなるのではないか?
2.ベーシックインカムの財源は?


1.国民が働かなくなるのではないか?
これに対しては負の所得税という制度を反論に用いています。「負の所得税」というのは一定の基準に満たない所得の人が逆に所得税をもらえるというものです。これなら働いていないと給付をもらえません。この制度のもとではセーフティネットから漏れ落ちてしまう人は助けることができそうです。

働かなくなるのでは?という疑問以前に、現在の労働環境では人は「働きすぎ」ではないのか?という意見もあります。つまり、労働はどんどん効率的になっているのに、はじめに労働ありきなので不要な労働を生み出している可能性があるということです。雇用を前提とした既存の福祉国家の仕組み(保険・保護モデル)は立ち行かなくなってきているという意見です。


2.ベーシックインカムの財源は?
国会の会期が延長されても、あるいは国会を解散して総選挙をやっても、銀行に公的資金を注入しても、年金記録を照合するのにも全てお金がかかります。なのに、特定の話題のみ財源の問題が取りざたされるのはおかしいのではないかというのが本書の主張です。たしかにベーシックインカムが導入されれば社会保険庁などはいらなくなるので、そこから財源を確保できるでしょうし、後世に残しておく財産が必要なくなるので、相続税が100%となり、眠っている国内の資産がベーシックインカムの財源として有効に活用できるかもしれません。



「働かざる者食うべからず」という文化が浸透している日本ではまだまだこのベーシックインカムという制度には馴染めないかもしれません。その原因の一つにすべての人に一律に給付する、という点があるように思います。給付の条件には一定の基準を設けていいのかもしれません。例えば疾病や怪我で労働不能になった人、障害をもって労働不能の人、子供の養育や高齢者の介護にあたっている人などは給付を受けてもいいのではないかと思います。「衣食足りて礼節を知る」という言葉もあります。稼ぎたい人はどんどん稼げばいいわけで、どうしても稼げない人には最低限の生活の保障をしてもいいのではないでしょうか。


今回のベーシックインカムの話は多くの既得権益とぶつかる可能性があり、容易には実現しないような気がします。しかし、実現した世界を想像するとそう悪くないような気もします。個人の創造力には限界があるのでなんとも言えない面もありますが。





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【書評】「依存症」の日本経済


03 03, 2009 | Tag,経済,日本経済

「依存症」の日本経済 (講談社BIZ) (講談社BIZ)「依存症」の日本経済 (講談社BIZ) (講談社BIZ)
(2009/01/08)
上野 泰也

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本書は現代の経済を「依存」というーワードで読み解いた本です。内容をよく表していると思いますので以下に目次を掲載しておきます。

目次
第1章 日本の個人消費は「女性依存」-婦人服売上高にカギがある
第2章 お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質-「消費弱者」に逃げ場はあるのか
第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力-中小・非製造業は生き残れるのか
第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか-40%の食料自給率が意味するもの
第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本-このままでは国ごと沈んでしまうのか
第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか-ゆとり教育が生んだ3つの弊害
第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人-景気の波と報道の影響力の関係
第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」-間接金融中心で何が悪い?
第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場-ブレークスルーを生む政策を打ち出すために
第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」-否定された「デカップリング論」
第11章 ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」


目次にある通り本書にはざまざまな日本の「依存」体質が書かれていますが、本書の読みどころは最終章の日本の未来図、秋田県の部分だと思います。日本経済の最も危機的な状況は人口が増加しなくなったというところにあり、それを説明するのに秋田県というモデルが役に立ちます。今秋田県に起きていることが10年後日本に起こらないとも限らないなと考えさせられます。


経済全般

人口問題

人口減少や人口分布の変化(少子高齢化)に伴い需要の減退が起こります。需要が減退すると、それに合わせて供給側も再編が求められます。競争力の弱い中小企業などは今よりもっと淘汰されていく可能性があります。

地方の中小企業は生き残るために何かしらの特徴を身につける必要があります。本書の中に登場する一つの例として、女性客にアピールすることで成功しているパン屋が描かれています。

なんといっても人口増加政策が必要になるわけですが、アメリカではバブル崩壊に伴う消費の減退に対して、グリーンスパン前FRB議長は「過剰な住宅在庫の買い手として熟練労働者を受け入れる」と言ったそうです。

消費を促すためには人口を増加させ、単純にパイを増やすという方法以外にも、外国から、消費を活性化してくれるような人たちを受け入れてしまおうという考えです。非常に単純明快で分かりやすい主張ですが、実際には実現しなかったようです。移民の国アメリカだからこその発想で日本では受け入れられづらいかもしれませんが、もっと外国資本を有効に利用しようという考え方は良いと思います。



産業構造・規制

規制緩和
規制は既得権益を守ります。その結果、競争原理を失わせてしまい、企業や産業の成長という意味ではマイナスの力が働きます。

規制緩和が成功した例としては電力・ガスへの競争原理導入による低価格化、消防法改正によるセルフのガソリンスタンド設置による低価格化、株式売買委託手数料の完全自由化とネット証券の相次ぐ参入による参加者の利便性向上などがあると思います。

反対に規制がかかっているものの代表例は農業でしょうか。
食料自給率は日本全体ではカロリーベースで40%とされていますが、秋田県では170%あります。そもそもカロリーベースで食料自給率を測るのはいかがなものか、食糧自給の問題が論じられる場合は、いつも戦時下であるかのような前提で話し合われているのがおかしいと主張されています。

それよりも足りない資本は輸入してかまわない、逆に日本にはイチゴやスイカなど質の高い農作物があるわけなので、それを国外に輸出してはどうか、と。そして国内の農業にも競争原理を導入しどんどん質の高い農作物を作っていくべきだと言っています。



教育

教育に関しては秋田県がモデルになりそうです。全国学力テストの平均点は秋田県がトップという結果があります。秋田県では塾に通っている生徒は他県と比べると少ないにもかかわらずこの成績が残せるのは、学校教育が充実しているからでしょう。あくまで平均点なので、成績が突出した生徒を育てるには学校教育だけでは不十分なのかもしれません。

しかし、学校教育の底上げは競争力のある産業を生み出す糧になるでしょうから、それはそれで望ましいことだと思います。

まだ先は見えませんが、教育の面では秋田県のように学校教育が充実し、あくまでそれを補う形で塾が存在するというのが自然な形なのでしょうか。



著者は徹底して規制緩和擁護派ですが、日本の将来に期待をこめていることが読んでいて伝わってきます。経済関連の本の中では読みやすく仕上がっていて、楽しめる一冊でしたよ。



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【書評】資本主義は嫌いですか


02 04, 2009 | Tag,経済,バブル,サブプライムローン

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす
(2008/09)
竹森 俊平

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本書は今回の、サブプライムローンをきっかけにしたバブル崩壊の原因について迫ったベストセラー書です。

構成は全部で3部からなっており、第Ⅰ部でサブプライムローンの形成と功罪、第Ⅱ部でバブルは予測されていた学会での話、第Ⅲ部で流動性について書かれています。


「リスク」と「不確実性」という言葉が出てきます。リスクというのは確率で予測可能な危険、不確実性というのは予測できない危険です。世の中が常に合理的であれば、全てリスクとして処理できることになります。しかし、これでは事業についての収入の期待値と生産の期待値が一致して最終的には突出して儲かる人はいなくなります。

世の中に大きな利益を得ている人がいるのはこの「不確実性」をうまく利用できているからです。



サブプライムローンはローン返済能力の低い人でも住宅ローンを組んで家を買うことができる仕組みでした。

住宅の市場価値以上に住宅の価格が値上がりを続けたこともバブル形成の一因となっています。個人の所得が増えていけば、住宅の需要は増えます。それに対して供給の量は大きく変わりません。そうすると、住宅の価格は上昇します。

また、住宅価格は今後も継続的に上昇し続けるだろうという群集心理も値上がりに貢献しているはずです。


もう一つ、低金利の状態が続いていたという問題がありました。これにより比較的安いローンを組むことができるようになるので、サブプライムローンの利用は加速しました。



金融工学の手法により巧みにサブプライムローンはそのリスクが薄められ、様々な金融商品の中に組み込まれました。簡単に言うと、サブプライムローンという金融商品を細かく切り刻んでリスクの高い部分と低い部分にします。リスクの低い部分を集めて新しい金融商品を作ります。そうすると、その新しい金融商品はあたかも元々がリスクの低い商品だったかのように見えるようになるのです。



住宅ローンは流動性の低い商品です。流動性が最も高いものは現金です。流動性の低い住宅ローンはいざ現金が必要になったときに、簡単には現金に変えることができないというリスクを抱えています。いざという時に現金として使えないのであれば、その金融商品は紙切れ同然ということにもなりかねません。


今回のバブル崩壊の要因には「”サブプライム”なローン」、「金融工学」、「住宅ローンの流動性の低さ」、これらが深く関わっているようです。


著者によれば、今回のバブルは振り子のように繰り返します。痛い目を見ないためによく覚えておいたほうが良さそうですね。


参考:すべての経済はバブルに通じる




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【書評】過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか?


01 25, 2009 | Tag,池田信夫,経済,IT,コンピュータ

過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042) (アスキー新書)
(2007/12/10)
池田 信夫

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本書の著者池田信夫さんは経済学者であり、ブログ:池田信夫ブログ管理人でもあります。著者のブログは毎日多くの人が訪れ議論を呼ぶこともたくさんあるようです。

以前にハイエク 知識社会の自由主義も読んでみましたが、個人的にはこちらの方が理解しやすい内容だと思います。

あまり知らなかったのですが、どうやら池田信夫さんは情報科学の分野に詳しい経済学者のようです。半導体などの技術的な細かい知識にも詳しいようで、本書の中にもその手の話が一部掲載されています。



本書の要点はゴードン・ムーアさんの予言「半導体の集積度は18か月で2倍になる」をもとに、ITとそれを取り巻く産業の過去、未来について経済学的な立場から読み解くことです。

実際、ムーアさんの予言通り、半導体の性能はどんどん向上し、それとともにコモディティ化したことで安い値段で手に入るようになりました。

1980年代から比べると、コンピュータの性能は格段にアップしました。今や携帯電話すら一昔前のコンピュータをしのぐほどです。

ハードの性能向上と値段の低下の過程には


垂直統合 → モジュール化 → 水平分業 → コモディティ化
→ 世代交代 → 垂直統合 →・・・


という流れがあります。

この点に関しては本文中でも引用されている通り、イノベーションのジレンマに詳しく書いてあります。



ハードの性能が向上した割に、情報技術のボトルネックになっているのはソフトと電波と人間です。


ソフトは今までマイクロソフトが著作権を楯に利益を独占していたような感がありますが、最近では一般の人もオープンソフトを利用できるようになりました。ユーザビリティが向上すれば、オープンソフトはさらに大衆の利用が進むので、技術の向上も加速するはずです。

オープンソフトを利用する点でもそうですが、今やコンピュータを利用してインターネット環境が整わないことはその性能のほとんどを使っていないことに等しい気がします。インターネットの利用環境には規制がしかれている電波がの利用がボトルネックになっているそうです。

もう一つは人間です。情報を入手するコストが格段に減ったにもかかわらず、テレビなどの一方的なメディアに偏りすぎて、膨大な情報を有効利用できていないということです。



オープンソフトの利用についてはGoogleやオープンオフィス、FireFoxなど、これからもどんどん利用できるようになりそうです。ユーザーとしては次にどんなサービスが利用できるようになるか楽しみです。



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目を背けるな【書評】ならず者の経済学


01 11, 2009 | Tag,経済,奴隷,売春,偽造,犯罪

ならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰かならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰か
(2008/11/19)
ロレッタ・ナポレオーニ

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本書は経済現象のうち、あまり直視したくない”闇”の部分にスポットがあてられた本です。なので、読後に爽快感が得られるというよりは少し暗くなってしまうかもしれません。

本書を読むと日本と言う国がいかに恵まれた国であるかが身にしみます。


「ならず者の経済」とはを共産主義の崩壊による混沌の中から生まれた副産物で、本書で取り上げられている「ならず者の経済」は以下のようなものです。

  • ロシアの新興財閥(オリガルヒ)による国有財産の略奪

  • セックス奴隷としてのスラブ系女性

  • 共産主義崩壊後、国民は新興財閥に法外に安い値段で国民が持っていた民営化証券を集めて富を築いた。この影響でロシアの女性失業率が80%に増大し、生活のために売春に走らざるを得ない女性を急増させることになった。


  • 貧困化し破産するアメリカの中流階級

  • 富の象徴とされる持ち家に憧れるアメリカの中流階級が、返済不能なローンに手を出し最後には破産する。


  • グローバル化して巧妙に暗躍する犯罪組織

  • 今もなくならない奴隷労働

  • 犯罪組織で生み出されたお金はロンダリングされ、私たちの手元に届いているかもしれない。あなたが手にしている貴金属は奴隷労働の成果かもしれない。


  • あふれかえる偽造品・偽造薬

  • 中国を初め、貧しい国にあふれる偽造品。さらには薬まで偽造されているという現実。


  • 人々のダークな情念を操って大儲けするインターネット起業家

  • インターネットでナンバー1のビジネスはポルノ、ナンバー2はギャンブル、そしてナンバー3は児童ポルノである。


  • 先進国のあくなき食欲を満たして稼ぐ漁業海賊

  • 世界規模でみればごくわずかな人々のために、海洋資源が乱獲されている。


こうして見てみると、これらの「ならず者の経済」の多くに貧困、そして貧富の差が関与している事が分かります。

これらがはびこる原因には当事者以外に、巡り巡って恩恵を受けている先進国の存在も見逃せません。

富める者はますます富み、貧しい者はいつまでたってもそこから抜け出せない。このような格差をなくす、社会全体の取り組みが必要なのだと思います。難しい問題だとは思いますが、利益を上げることが至上命題になっている今の資本主義では限界なのかもしれません。

著者はこの状況を打開するのに、イスラム金融と中国の思考法(例えば孫子の哲学:現実は状況の産物として立ち現れるので、たえず変化している。それを巧みに利用することこと肝要である)に活路を見出していますが、つい最近当ブログメタノート:貧困のない世界を創るで紹介したようなソーシャルビジネスやマイクロクレジットの活用も有効なのではないかと思います。




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こんなにおもろしろいファンドマネジャーの仕事


12 30, 2008 | Tag,ファンドマネージャー,投資,経済

こんなにおろしろいファンドマネジャーの仕事こんなにおろしろいファンドマネジャーの仕事
(2008/10)
松下 律

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ファンドマネージャーとは投信委託会社や投資顧問会社、保険会社などから委託された資産の運用を行っている人々のことです。

扱っている額が額だけに、流れをつかめば、儲けも大きな額になります。

ファンドマネージャーになるまでには相応の経験年数が必要で、その後、通常証券アナリストの資格をとるようです。ただ、この資格(CMA:検定証券アナリスト)は国家資格ではないので、コレがないとファンドマネージャーになってはいけないというものではありません。
このような資格や教育システムが作られたのは必然だったようで、なぜなら、証券アナリストの勉強は大学にいる時には教わらず、社会に出てから勉強することが多いからです。要するに良い勉強の機会になるということです。

ちなみに新人のファンドマネージャーで年収1000万円、ベテランになると3000万円~5000万円にもなるそうです。儲けが多くなる可能性があるということは、それだけ損するときの額も大きくなります。実際の給料が多いか少ないかの議論は別として、ファンドマネージャーの仕事はハイリスクハイリターンと言えるでしょう。今の市況を考えると、おそらくファンドマネージャーの多くが辛酸をなめているのではないでしょうか。



ファンドマネージャーは実際に投資に関わる以外に、レポートを作ったりして様々な場面でその発言は注目されます。(もちろん、人によるのでしょうが)

ところが、いくつかの投資本には、「プロが運用する株式投信の3分の2以上が、幅広く分散投資された市場インデックスファンドに勝てなかった」と書いてあります。

そうすると、ファンドマネージャーの存在価値はどの様な点なのでしょうか。
短期的な運用成績を追求するからインデックスファンドに勝てる?



著者はもちろんファンドマネージャの経験者ですから、この仕事をとても愛情深く語っています。
本書を読んで、ファンドマネージャーの一週間の仕事内容やPE(プライベートエクィティ)のことを知れたのは良かったのですが、ファンドマネージャーの多くが幅広く分散されたインデックスファンドへの投資に勝てない、ということに対する考えや答えが得られなかったのは残念でした。



参考記事:ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理




頭ひとつ抜け出すために「ソロスは警告する」


12 20, 2008 | Tag,投資,経済,ソロス,バブル,再帰性,哲学

ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ
(2008/09/02)
ジョージ・ソロス松藤 民輔 (解説)

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本書は伝説の投資家ジョージ・ソロスさんの訳書です。裸一貫から総額1兆3千億円の富を築いたとなれば、誰でもその頭の中は覗いてみたくなります。

解説で松藤民輔さんは、本書から「ソロスのような天才投資家に不可欠な、市場を読み解くための直感を体得する」、「ソロスのような欧米型知的エリートの思考法(モノの考え方)を身につける」ための最適な教材と書いています。



現在の世界経済を考えても、たしかにソロスさんには先見の明があるようで、複雑な金融商品の激増を主因とする信用膨張が限界に達しつつある点、世界経済の中で今まで圧倒的な主役であったアメリカが少しずつ衰えている点からバブルが劇的に崩壊することを予見していました。

面白いと思ったのは、これらの考え方を支えているのは、テクニカルな分析を根拠にしているというよりは、「再帰性の理論」という哲学を判断の根幹として投資活動を行っている点でした。経済学の根本にある、全ての人間は経済学的に合理的に判断し、そして行動するという市場均衡理論に対立している点です。

本文中でもこの「再帰性の理論」の解説に多くのページが割かれています。


再帰性の理論というのは、簡単に言うと、人間と周囲の出来事の双方が互いに影響を与えあうことで変化し続けるというものです。これによると、人間が市場の動きについて理解(認知)した上で、投資などの働きかけ(操作)を行います。そうすると、市場はそれに反応して変化します。この時点で変化した市場と最初の人間の認知との間にはズレが生じます。

いつまでたっても人間の「認知」に基づく「操作」と「市場」の間にはズレが生じるのです。

たしかにその通りだと思います。



世の中の投資家を2つに分けると、「市場を操作する立場にある人」と「それに乗っかるだけの人」に分けられると思います。本書の著者であるジョージ・ソロスさんは前者に該当し、おそらくバブル崩壊のきっかけすら作れる数少ない投資家でしょう。

ソロスさんのような知的エリートになるために、「歴史」と「哲学」の勉強は欠かせないといいます。

私も食わず嫌いをせず、「歴史」と「哲学」の本にも積極的に取り組んでいきたいと思います。


参考記事:すべての経済はバブルに通じる




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