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ジーン・ワルツ 


03 26, 2011 | Tag,医療,小説,産婦人科医療,海堂尊

ジーン・ワルツ (新潮文庫)
毎度のことながら、僕は海堂作品が好きです。

小説としてのおもしろさもそうですが、小説の中に現在の医療をとりまく問題が散りばめられているからです。

医療問題をテーマにした堅苦しい本を読むより、本書やジェネラル・ルージュの凱旋を読んだほうがよっぽど今の医療が抱える問題がわかります。

本書は産婦人科医療を舞台にした物語です。

一節を紹介すると、

助産師妙高の言葉
「お医者さまは、悪い病気を治すのが仕事。正常分娩までやる必要はないでしょう。助産師で十分。お医者さまは異常分娩に対応してくだされば、それでいいんです」


主人公曽根崎理恵の言葉
「本当は医者よりも助産師の方がお産に関してはプロなのにね。それに妊娠の二割はさまざまな異常で流産するという事実を、みんな知らないのね、きっと」
「世の人たちの厳しすぎる視線と、役人の能天気な無理解が、現場を殺すのよね」

このあたりは一般の人たちにも知っておいてほしいことです。

本書のテーマの一つである不妊治療。代理母出産のことなど、本書を読めば何が問題になっているのかがよくわかるので読んでみるといいと思います。

また、医療と医学の違いに付いての洞察も興味深かったです。
「医療は学問ではなく、社会システムです。医学は単なる学問。医学という土台の上に、国民の意思で医療という家を建てるようなもの。そこでは医学の結果と正反対のことが行われることもあります。一番の違いは、医療は患者さんからお金をいただくことができる。だけど医学はお金を取れない。それどころか、お金を注ぎ込まなければ医学は進歩しません。」

まさにその通りだと思います。

ミステリーとしてはどうでしょうか。僕はチーム・バチスタの栄光やジェネラルルージュの凱旋の方がスリリングでおもしろいと感じました。

しかしながら示唆に富む海堂作品シリーズは、特に医療従事者じゃない人にこそ読んでほしい作品だと改めて感じました。

ジーン・ワルツ (新潮文庫)ジーン・ワルツ (新潮文庫)
(2010/06/29)
海堂 尊

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新技術が生むジレンマ 【小説】ブラックペアン1988(上・下)


04 23, 2010 | Tag,海堂尊,小説

ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
海堂尊さんの作品で最も有名なのは、「チームバチスタの栄光の栄光」でしょう。

1・ 「チーム・バチスタの栄光」 (2006/01発売)
2・ 「ナイチンゲールの沈黙」  (2006/10/06発売)
3・ 「螺鈿迷宮」       (2006/11/30発売)
4・ 「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2007/04/07発売)
5・ 「ブラック・ペアン1988」 (2007/9/21発売)
6・ 「夢見る黄金地球儀」  (2007/10発売)
7・ 「医学のたまご」    (2008/01/17発売)
8・ 「ジーン・ワルツ」   (2008/03発売)
9・ 「ひかりの剣」     (2008/08/07発売)
10・「イノセント・ゲリラの祝祭」(2008/11/6発売)
11・「ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて」(2009/2/20発売)
12・「極北クレイマー」 (2009/4/7発売)
海堂さん小説 時系列表 海堂尊非公式ファンサイト!登場人物のリンクを見てみよう!
と多数の作品があります。


私が読んだことがあったのは、バチスタとナイチンゲール、ジェネラルルージュでした。いずれの作品も小説の中で医療問題が取り上げられており、奥の深い作品となっています。医療現場のことが鮮明に書かれていて、すごく共感できることが多かったです。

今回の作品、「ブラックペアン1988」はバチスタよりも後に書かれていますが、時系列で見ると、それよりも前の時代が舞台です。時はバブル全盛期、私はこの時代を医者として経験したことがないのですが、先輩たちから噂には聞いていました。

製薬会社との癒着なんかすごくリアルで、接待はもちろん、学会で発表するスライド作りまで彼らに依頼しているシーンがあります。パワーポイントがなかった時代はスライド作りは大変だったらしいし、うわさ話にも聞きます。たぶん本当にあったのだろうと思います。

まあ、医局員が教授のためにスライドを作ったりすることはあっても、それは例外で、今は基本自分でスライドを作っていますよ。



読んでいて、医療現場において新しい技術が普及し始めるときってこんな感じだよな、と考えさせられた部分があったので書いてみます。

新しい技術が生むジレンマについてです。

ジレンマの主役は食道と小腸をつなぐ新しい器械、「スナイプ」です。



最も難しい外科の手術に食道癌の手術があります。癌を切除して、食道と小腸をつなぐ場面、ここが一番緊張する瞬間です。手技も難しい。うまくつなげなくて中身がモレてしまう(リークする)と大変です。

食物の通り道は体の外とつながっている汚い場所です。それが無菌状態である食道の外にモレでたら。。。感染症を起こして最悪死につながります。

だから食道と小腸をつなぐ技術は、限られた人が長い年月をかけて習得していく職人技でした。

ところが、このスナイプという器械は誰でも簡単に食道と小腸をつなぐことができるように開発されたものでした。開発ドクターは特定の術者にしかできない手術を、よりたくさんの外科医ができるような手術に変えようとしていました。



この考え方に私は賛成します。外科系ではどうしても手技の上手い下手が分かれます。才能が関与する部分も否めません。地方によって手術の成功率に差があったり、いわゆる手術のうまい医者にタイミングよく巡り会えなくて失敗しました、では不公平だと思います。

だから、できるだけ標準化、汎用化された術式というものが必要です。

しかし問題は、スナイプが登場すると、実際に食道と小腸を手で縫ってつなぐ機会が減ることです。もしスナイプが正常に動作しなかったら、もし予期せぬアクシデントでスナイプが使えなかったら、、、そういった弱みがあります。

新しい技術が登場する時はいつもこんな感じなのかもしれませんが、手術では患者の命がかかっています。必ずリカバリーショットが打てるようにしておかないといけない。

某大学病院で内視鏡を用いた前立腺癌の手術で問題になったことがありました。結局難しい手技の伝承という意味で外科系ではある程度の地道な練習が必要です。また、できる医者のバックアップも必要です。

とは言っても、失敗することばかり考えていては新しい技術は生まれません。そこがジレンマですが、ある程度リスクを考慮した上でチャレンジしていくしかないのだと思います。



本書を読んで、そんなことを考えていました。

純粋にストーリーだけ追いかけてもおもしろいと思いますよ。手術室の様子や大学病院の雰囲気とか、なかなか見ることのできない世界がリアルに描かれています。


チーム・バチスタの栄光(上) (宝島社文庫 599)
小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下) - メタノート
【小説】ナイチンゲールの沈黙(上・下) - メタノート


ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
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ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)
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【小説】ナイチンゲールの沈黙(上・下)


02 17, 2009 | Tag,海堂尊,ミステリー,小説,医療

ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)
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ナイチンゲールの沈黙(下) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(下) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)
(2008/09/03)
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先日小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下) を読みましたが、おもしろかったのでまたまた海堂作品を読んでみました。

著者の海堂尊さんは外科医を経験された後に病理医になり、現在も病理医として勤務医を続けながら作家活動を続けている方です。2足のわらじを履きながら、デビューから2年半で10作をリリースしているところが驚きです。しかも作品はおもしろい。

海堂さんの作品の特徴と素晴らしいところは小説という形で、現在の医療における問題や矛盾を社会に提示しているところにあります。それも現場で働く医療者の目線で書かれているため、私も内容にとても共感できます。


今回のこの作品では、小児癌、虐待などの小児医療、小児のメンタルケア、死因検索などがテーマになっています。死因検索は海堂さんの専門である病理の仕事ととても深い関係にある分野です。

登場人物はチーム・バチスタの栄光(上・下)から一貫しているので、海堂ワールドを楽しむためには、やはり発刊順に読んでいくのが理想だと思います。

私の場合はこの作品を読む前に小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下)を読んでしまったのですが、読んでいて気付いたのは「どうも話に「ナイチンゲール」と「ジェネラル」で”かぶる”部分がある」ということでした。

それもそのはず元々これらの作品は一つだったそうです。一つの作品としては長すぎるので、分割されたのだそうです。

だから、海堂ワールドを楽しむために理想を言えば、順番どおりに読むのがいいと思います。

誤解のないように言っておきますが、小説自体は上下一冊で完結する謎解きミステリーになっているので、これ一冊でも十分楽しめます。



今回はミステリー小説なので、あまり内容に踏み込むことはやめておきます。

その代わり、海堂作品にはいつも読んでいてハッとさせられる鋭い洞察が含まれているので、その中から2つのセリフを紹介しておきます。


小児の治療には必ず親の同意が必要になります。治療や検査は同意なしに進めることはできないので、いかに親と綿密に連絡をとりあうかということも大切な点になります。

小児医療の大変さを端的にあらわす一言▼

「小児科が大変なのは、子供と親という、次元の違う生物を同時に扱うからだ」



医師の中には周囲の言葉に耳を貸さないタイプもいます。主張していることがいくら正しくても医療は医師一人でできるものではありません。看護師やその他コメディカルと力を合わせることでできあがるものです。

いまひとつ看護師と協力関係を築けていない医師に対する教授の一言▼

「君は周囲の人間の言葉に耳を傾けなさすぎる。スタッフの声に耳を傾けて総合的に判断できる、という資質こそ、医師を医師たらしめている黄金律だ。」


次の海堂作品も楽しみです。

参考記事:
メタノート:小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下)
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書評は書いていませんが、今までに読んだ海堂作品ではこれ▼が一番おもしろかったかも。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)
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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫)チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫)
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小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下)


01 29, 2009 | Tag,海堂尊,小説,医療

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小説を読んでみました。本書はチームバチスタの栄光で一躍有名になった海堂尊さんの著書です。著者は現役の勤務医(病理医)でありながら、ここ数年立て続けにヒット作を連発しています。

こういった医療系の小説は医者が書かないと、細部の表現がいい加減でしらけたものになってしまうと思います。入院後の救急患者をどこの科や病棟に振り分けていくか(ベッドコントロール)の話など、非常に現場がリアルに表現されています。次々やってくる救急患者を受け入れるためには、一旦の治療が終わると他の専門科に患者を移動させていかなければいけません。このようなベッドコントロールも医療の一面です。


小説の醍醐味はなんと言ってもそのスピード感でしょうか。おもしろい小説は時間を忘れて没頭させてくれる効果があるような気がします。私にとって本書もそのような本でした。


小説なので、あまり内容を詳細に書くことは、読んだときの面白さを半減させるので控えておきますが、本書のテーマは現在の医療が抱える問題である「救急医療のあり方」、というものです。

めまぐるしく状況が変わる救急医療の現場で、

「経営効率を重視した医療はうまくいくのか?」

「救急医療の現場で最も大切にしなければいけないこととは何か?」

という問題にメスが入れられています。



中からグッときたセリフを一部紹介します。

「救命救急の最大の敵は固定観念だ。判断は一瞬一瞬でめまぐるしく変わる。」

「救急現場ではエーアイ(死体画像検査)は費用負担ができないため、生きている患者の検査と誤魔化して保険請求してきた。おかしな話だろ?よりよい医療のための行為が認知してもらえない。そうだとしたら、それはシステムの方が間違えているんだ。そしてそれは、そうした問題を放置し続けた官僚たちの責任だ。彼らがルールを変えれば、エーアイは普及する。そうならない医療現場の現状の元凶は役所の不作為、怠慢さ」

「収益だって?救急医療の現場でそんなもの上がるわけがないだろう。自己は嵐のように唐突に襲ってきて、疾風のように去っていく。在庫管理なんて出来るわけもない。小児科も同じ。産婦人科も、死亡時医学検索も。現在の医療システム下では医療の根管を支える部分が冷遇されている。俺たちの仕事は、警察官や消防士と同じだ。トラブルが起こらなければ単なる無駄飯食い。だからといって国家は警察官や消防士に利益を上げることを要求するか?そんな彼らに税金という経済資源を配分することを、市民は拒否するのか?」

「救急や小児科、いや医療は、身体の治安を守る社会制度だ。治安維持と収益という概念は相反する。三船事務局長、あんたは無理難題をシステムの根幹に据えている。断言しよう。あんたたち官僚の血脈が目指す医療システムは、近い将来必ず崩壊する。」


小説を通じて社会に医療が抱える問題を分かりやすく提示する、とてもおもしろい小説でした。


こちらもおもしろかったですよ▼
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)
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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫)チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫)
(2007/11/10)
海堂 尊

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海堂さんの作品でこれ読んでいなかったので、次はこれを読みます▼。
ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)
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ナイチンゲールの沈黙(下) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)ナイチンゲールの沈黙(下) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)
(2008/09/03)
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