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三匹のおっさん


05 23, 2012 | Tag,小説

三匹のおっさん (文春文庫)
60歳で定年退職とか、超高齢化社会の今となっては馴染まない気がします。

定年退職後約20年も余生があるわけですから(平均で)。周りを見渡しても今時の60歳って元気だよなあと実感せざるを得ません。

特に医者をやっていると60歳なんてまだまだ若いと感じます。実際に患者さんを前に「60歳ですか、まだ若いですね」なんて会話を普通にしています。80歳過ぎてからですかね、ようやく高齢者という感じがしてくるのは。


今日ご紹介する本は定年を過ぎた60歳そこそこのおっさん達三人による痛快活劇小説です。

このおっさん達、一人は剣道の達人、もう一人は柔道の達人、もう一人は小柄だけど機械いじりの達人でともに幼馴染です。剣道の達人には高校生の孫息子が。機械いじりの達人には高校生の娘がいます。

この小説は大雑把に言うと、おっさん三人組が痴漢や詐欺師をばったばたと退治していくというものです。

三人の活躍も良かったのですが、登場する高校生の孫や娘との掛け合いがハートフルで時代を捉えているなあと感じてほっこりした気分になりました。

祖父と触れ合う中で次第に心を溶かしていくユウキの成長にも要注目です。

僕みたいな30代が読んでもおもしろいですが、50代、60代、70代の人が読むともっと楽しめるような気がします。


おもしろかったので、あっという間に読み終えてしまいました。爽快。

児玉清さんも絶賛の一冊。みなさんもよろしければ。


三匹のおっさん (文春文庫)三匹のおっさん (文春文庫)
(2012/03/09)
有川 浩

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シャンタラム


05 09, 2012 | Tag,小説

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)
麻薬、強盗、偽造パスポート、そして独特なインドの世界。

特に情景の描写が詳細で美しいため、じっくり読んでいるとあたかも自分がインドのディープな世界に身をおいた気分になります。物語の中にぐいぐい引きこまれます。

著者のプロフィールを読んでみて妙に納得。この小説はフィクションですが、物語中の多くのことについて著者は経験済みなのだろうと思います。でなければこれほどの世界観は出せないでしょう。

もちろん一般人の僕としては主人公のような、破天荒な人生は望むものではありません。

しかしながら、もう一人の自分になりきって現実を忘れる。こういう小説の楽しみ方、たまりません。最高の娯楽です。

本書は上・中・下と三巻からなる文庫本です。大作ですから読み通すのがちょっと大変!?かもしれませんが、一度読み始めたらやめられない、読む価値ありの一冊です。


シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)
(2011/10/28)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

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シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)
(2011/10/28)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

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シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)
(2011/10/28)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

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香水―ある人殺しの物語


04 10, 2012 | Tag,,小説

small_2271102595.jpg
photo credit: *Katch* via photopin cc

人間の感覚の中でも嗅覚はとても重要な役割を担っていると思います。

料理を食べる時、匂いを感じなかったらおいしさも半減ですよね。例えば風邪を引いて鼻が詰まっているときとかせっかくの食事がおいしくなかったりします。

匂いによって初めて会った人の印象が決まったりもしますね。個人的にはいい匂いのするものに僕は弱いです(匂いフェチ!?)。臭いのはちょっと苦手。



18世紀フランスを舞台にした物語です。特別な嗅覚を持った主人公が歪んだ嗜好の末、殺人を繰り返してしまう。また、香り一つで人々を狂気に導き、神にも似た所業を成し遂げます。

特別な才能により香りを自由に操る主人公。それに踊らされる大衆。

主人公の狂気の根源にはいったい何が?そして、完璧なまでに大衆を惹きつけることに成功した主人公の運命は?


ややおどろおどろしい部分はありますが、香りの魔力に魅せられるとともに、狂気の世界が読者を惹きつけることになるでしょう。


古い作品ですが、映画化もされた名作です。






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ジーン・ワルツ 


03 26, 2011 | Tag,医療,小説,産婦人科医療,海堂尊

ジーン・ワルツ (新潮文庫)
毎度のことながら、僕は海堂作品が好きです。

小説としてのおもしろさもそうですが、小説の中に現在の医療をとりまく問題が散りばめられているからです。

医療問題をテーマにした堅苦しい本を読むより、本書やジェネラル・ルージュの凱旋を読んだほうがよっぽど今の医療が抱える問題がわかります。

本書は産婦人科医療を舞台にした物語です。

一節を紹介すると、

助産師妙高の言葉
「お医者さまは、悪い病気を治すのが仕事。正常分娩までやる必要はないでしょう。助産師で十分。お医者さまは異常分娩に対応してくだされば、それでいいんです」


主人公曽根崎理恵の言葉
「本当は医者よりも助産師の方がお産に関してはプロなのにね。それに妊娠の二割はさまざまな異常で流産するという事実を、みんな知らないのね、きっと」
「世の人たちの厳しすぎる視線と、役人の能天気な無理解が、現場を殺すのよね」

このあたりは一般の人たちにも知っておいてほしいことです。

本書のテーマの一つである不妊治療。代理母出産のことなど、本書を読めば何が問題になっているのかがよくわかるので読んでみるといいと思います。

また、医療と医学の違いに付いての洞察も興味深かったです。
「医療は学問ではなく、社会システムです。医学は単なる学問。医学という土台の上に、国民の意思で医療という家を建てるようなもの。そこでは医学の結果と正反対のことが行われることもあります。一番の違いは、医療は患者さんからお金をいただくことができる。だけど医学はお金を取れない。それどころか、お金を注ぎ込まなければ医学は進歩しません。」

まさにその通りだと思います。

ミステリーとしてはどうでしょうか。僕はチーム・バチスタの栄光やジェネラルルージュの凱旋の方がスリリングでおもしろいと感じました。

しかしながら示唆に富む海堂作品シリーズは、特に医療従事者じゃない人にこそ読んでほしい作品だと改めて感じました。

ジーン・ワルツ (新潮文庫)ジーン・ワルツ (新潮文庫)
(2010/06/29)
海堂 尊

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ロング・グッドバイ


09 27, 2010 | Tag,村上春樹,小説,ミステリー

ロング・グッドバイ
本書は偽ロレックスを買う人は、どうして一生貧乏なのか?の著者黒野修資さんから紹介してもらった(グレート・ギャツビー | メタノート)本です。

村上春樹作品が好きな人はきっと読んで後悔しないと思います。

前にも書いたように(グレート・ギャツビー | メタノート)、「グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)」、「カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)」、「ロング・グッドバイ」の3冊が村上春樹さんに最も影響を与えた小説だそうです。

僕はこれらの作品の中では今回の「ロング・グッドバイ」が一番好きです。

「グレート・ギャツビー」よりも、現在の村上作品により近い作風だと思います。順番から言って、村上作品”に”似ているというより、村上作品”が”似ていると言ったほうがいいのでしょう。

村上さんは本書を高校生の頃から清水俊二氏訳の「長いお別れ」から始まり、レイモンド・チャンドラー自身の原文まで折にふれて何度も読んできたそうです。

彼の独特の心理、風景描写はレイモンド・チャンドラーから学んだものだということです。

本書はミステリー小説です。謎を解き明かす過程はもちろん、随所に登場するアルコールやエロチシズムが物語の雰囲気をセンスよく仕上げています。

村上作品の雰囲気が好きな人、是非どうぞ。

僕もギムレットが飲みたくなりました。


ロング・グッドバイロング・グッドバイ
(2007/03/08)
レイモンド・チャンドラー

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夕暮まで


08 24, 2010 | Tag,小説,吉行淳之介


夕暮まで (新潮文庫)
この短編小説の著者、吉行淳之介は村上春樹さんが影響を受けた作家の一人。

本書のテーマは処女性についてです。

けっこうリアルな性描写が出てくるのですが、不思議とイヤな気分になりません。官能小説とは違い、きちんとしたテーマがあるように思います。

村上作品の中にも処女性について取り上げられた作品がありました(短編で楽しむ村上春樹作品 「目くらやなぎと眠る女」 - メタノート)。

僕の好きな村上長編小説のどの作品にも、性的な描写が出てくるのですが、やはりイヤな感じがしません。

その点、この「夕暮れまで」と共通するように思います。

村上作品が吉行作品に似たということなのでしょう。おそらく村上さんは何度も吉行作品を読んできたのだと思います。

短い小説ですのでさくっと読めます。日常の息抜きにどうぞ。



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新技術が生むジレンマ 【小説】ブラックペアン1988(上・下)


04 23, 2010 | Tag,海堂尊,小説

ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
海堂尊さんの作品で最も有名なのは、「チームバチスタの栄光の栄光」でしょう。

1・ 「チーム・バチスタの栄光」 (2006/01発売)
2・ 「ナイチンゲールの沈黙」  (2006/10/06発売)
3・ 「螺鈿迷宮」       (2006/11/30発売)
4・ 「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2007/04/07発売)
5・ 「ブラック・ペアン1988」 (2007/9/21発売)
6・ 「夢見る黄金地球儀」  (2007/10発売)
7・ 「医学のたまご」    (2008/01/17発売)
8・ 「ジーン・ワルツ」   (2008/03発売)
9・ 「ひかりの剣」     (2008/08/07発売)
10・「イノセント・ゲリラの祝祭」(2008/11/6発売)
11・「ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて」(2009/2/20発売)
12・「極北クレイマー」 (2009/4/7発売)
海堂さん小説 時系列表 海堂尊非公式ファンサイト!登場人物のリンクを見てみよう!
と多数の作品があります。


私が読んだことがあったのは、バチスタとナイチンゲール、ジェネラルルージュでした。いずれの作品も小説の中で医療問題が取り上げられており、奥の深い作品となっています。医療現場のことが鮮明に書かれていて、すごく共感できることが多かったです。

今回の作品、「ブラックペアン1988」はバチスタよりも後に書かれていますが、時系列で見ると、それよりも前の時代が舞台です。時はバブル全盛期、私はこの時代を医者として経験したことがないのですが、先輩たちから噂には聞いていました。

製薬会社との癒着なんかすごくリアルで、接待はもちろん、学会で発表するスライド作りまで彼らに依頼しているシーンがあります。パワーポイントがなかった時代はスライド作りは大変だったらしいし、うわさ話にも聞きます。たぶん本当にあったのだろうと思います。

まあ、医局員が教授のためにスライドを作ったりすることはあっても、それは例外で、今は基本自分でスライドを作っていますよ。



読んでいて、医療現場において新しい技術が普及し始めるときってこんな感じだよな、と考えさせられた部分があったので書いてみます。

新しい技術が生むジレンマについてです。

ジレンマの主役は食道と小腸をつなぐ新しい器械、「スナイプ」です。



最も難しい外科の手術に食道癌の手術があります。癌を切除して、食道と小腸をつなぐ場面、ここが一番緊張する瞬間です。手技も難しい。うまくつなげなくて中身がモレてしまう(リークする)と大変です。

食物の通り道は体の外とつながっている汚い場所です。それが無菌状態である食道の外にモレでたら。。。感染症を起こして最悪死につながります。

だから食道と小腸をつなぐ技術は、限られた人が長い年月をかけて習得していく職人技でした。

ところが、このスナイプという器械は誰でも簡単に食道と小腸をつなぐことができるように開発されたものでした。開発ドクターは特定の術者にしかできない手術を、よりたくさんの外科医ができるような手術に変えようとしていました。



この考え方に私は賛成します。外科系ではどうしても手技の上手い下手が分かれます。才能が関与する部分も否めません。地方によって手術の成功率に差があったり、いわゆる手術のうまい医者にタイミングよく巡り会えなくて失敗しました、では不公平だと思います。

だから、できるだけ標準化、汎用化された術式というものが必要です。

しかし問題は、スナイプが登場すると、実際に食道と小腸を手で縫ってつなぐ機会が減ることです。もしスナイプが正常に動作しなかったら、もし予期せぬアクシデントでスナイプが使えなかったら、、、そういった弱みがあります。

新しい技術が登場する時はいつもこんな感じなのかもしれませんが、手術では患者の命がかかっています。必ずリカバリーショットが打てるようにしておかないといけない。

某大学病院で内視鏡を用いた前立腺癌の手術で問題になったことがありました。結局難しい手技の伝承という意味で外科系ではある程度の地道な練習が必要です。また、できる医者のバックアップも必要です。

とは言っても、失敗することばかり考えていては新しい技術は生まれません。そこがジレンマですが、ある程度リスクを考慮した上でチャレンジしていくしかないのだと思います。



本書を読んで、そんなことを考えていました。

純粋にストーリーだけ追いかけてもおもしろいと思いますよ。手術室の様子や大学病院の雰囲気とか、なかなか見ることのできない世界がリアルに描かれています。


チーム・バチスタの栄光(上) (宝島社文庫 599)
小説【書評】ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下) - メタノート
【小説】ナイチンゲールの沈黙(上・下) - メタノート


ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
(2009/12/15)
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グレート・ギャツビー


03 12, 2010 | Tag,村上春樹,翻訳,小説

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
「グレート・ギャツビー」、「カラマーゾフの兄弟」、「ロング・グッドバイ」の3冊が村上春樹さんに最も影響を与えた小説だそうです。その中で一番を選ぶとすると、「グレート・ギャツビー」この小説だそう。たしかに彼の作品を読んでいるとよくこのグレート・ギャツビーが登場する。


この本はその村上春樹さんが訳した本です。彼はこの作品を翻訳するのは60歳くらいになってからくらいが調度よいと考えていました。物語の細部まで日本語で上手に表現するためには、彼をしてもすぐにとりかかるわけにはいかなかったらしいです。それぐらい思い入れが強いということなのでしょう。

すべての情景がきわめて繊細に細やかに描写され、すべての情念や感情がきわめて精緻に、そして多義的に言語化された文学作品であり、、

すぐれた小説はこのような特徴を持つそうです。

僕は村上作品はこの引用のような作品であると感じていました。ところが、村上春樹さんが愛し、訳した「グレート・ギャツビー」を読んで、これに対しては同じように感じませんでした。

難しいものです。期待が大きかったせいもあるかもしれません。

本来の文章の美しさを感じるためには原文を読まないといけないということなのでしょうね。翻訳作品の限界かもしれないとも感じました。

すべての情景がきわめて繊細に細やかに描写され、すべての情念や感情がきわめて精緻に、そして多義的に言語化された文学作品であり、英語で一行一行丁寧に読んでいかないことにはその素晴らしさが十全に理解できない、というところも結局はあるからだ。

と、村上さん自身も書いています。

でも好きな作家の愛読書を読んでみるというのは、その作家の屋台骨を見ているようで、興味深くはありましたけどね。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
(2006/11)
スコット フィッツジェラルド村上春樹

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「のぼうの城」から学ぶリーダー論 


03 02, 2010 | Tag,小説,リーダー,マネジメント

のぼうの城
戦国時代も今の時代も人を惹きつける者が人の上に立つ。医師の世界ではちょっと違う気がするけど、優れた企業なんかではそういうものなんだろう。

普段おちゃらけていても、部下と対面で話をする。一方的なトップダウンの決定ではなく、部下がやりがいを持てるような仕事を与える。働きやすいような社内環境を作る。

そうすると、部下は組織のために一つの方向に向かって自律した行動をとるようになる。これが優れた組織のありかたなんだろうと思う。



「のぼうの城」という本を読んだ。

戦国時代、成田長親という武将が主人公だ。

豊臣秀吉が天下統一を目前にしてまさに関東に進出しようとしているとき、その部下石田三成が二万の軍勢を率いて長親に襲いかかる。長親側は兵力わずか五百。

圧倒的不利な状況で、結局長親は二万の軍勢を跳ね返した。

タイトルにもあるように、長親は農民から「のぼう様」と呼ばれていた。「のぼう」とは「でくのぼう」の意。これは農民の長親に対する親しみの表れだったわけだが、城主に向かって「のぼう様」というのは普通ない。長親は平和なときに農民に混じって、農作業をしていたという。

ところが、でくのぼう扱いされていたこの男が大軍を打ち負かす。



2つのクライマックスがあったと思う。

一つは、石田三成が使者をよこして戦か無血開城か迫ったとき。

この使者があまりに無礼だったため、長親は
「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。」
こう言い無血開城を断った。


もうひとつは水攻めをされて絶体絶命のピンチの時。

大将である長親が自ら敵の前に行き、ほとんどわざと敵に銃で撃たれる。それを見た農民は、命令されるわけでもなく、自ら立ち上がり、結果として三成を追い込むこととなる。



長親のまわりには正木丹波守利英、酒巻靭負、柴崎和泉守といった優秀な武将がいた。圧倒的な力を持つ敵を前にし、無血開城を迫られたとき、はじめ彼らはそれに従うべきだと主張した。しかし、結局は長親の武士としての「誇り高さ」に心を動かされ、戦をするにいたった。

また、長親が撃たれたとき農民は自分たちが慕って、従ってきた君主のために自ら立ち上がった。

名将とは、人に対する度外れた甘さを持ち、それに起因する巨大な人気を得、それでいながら人智の及ばぬ悪謀を秘めた者である。

だそうだ。

「名将」を今の時代の「リーダー」と置き換えて読むことができると思う。

長親のように人にやさしく、共感を呼ぶ理念をもった人。最後に笑うのはこういう人材なのかなと思った。

のぼうの城のぼうの城
(2007/11/28)
和田 竜

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日航が生まれ変わるために 「沈まぬ太陽」


01 09, 2010 | Tag,小説,日航,労務,労使関係,労働,労働組合

日航の再建は法的整理が有力なようですね。



以下は「沈まぬ太陽」の一部あらすじ。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

利権をむさぼり、それを死守しようとする上役と利権から生じる甘い汁に群がる政治家や官僚。

度重なる航空事故やずさんな資金管理で破綻寸前の財務状況。

再建を任された国見会長と少数の志ある社内の人間。

しかし、彼らがどんなに頑張っても、利権でつながった社内の人間や政治家はマスコミさえも利用して徹底的にそれを阻止しようとする。

物語は再建半ばで、社外から抜擢された会長の退任をもって幕をおろす。


読んでて不屈の正義感をもった国見会長が気の毒になった。
と同時に、金にまみれて自分の保身しか考えない会社役員や政治家にうんざりした。


日本航空が経営破たんに瀕している今読んでみると、この小説はより興味深く読めるかもしれない。

労働組合が一つの会社にいくつもあることは健全ではないだろう(日本航空 - Wikipedia: 2009年10月現在、日本航空インターナショナルには、地上職や整備職、パイロットや客室乗務員などの職種別に、会社側1組合、反会社側7組合の合計8もの労働組合がある)。

1985年の日本航空123便墜落事故から20数年がたち、それ以来大きな航空事故が起きていないことを考えると安全の確保は向上している。

残念なことに財政面では再建がうまくいかなかったようで、現在のありさまである。

母体が危機に瀕しているというのに、企業年金の減額に対する提示もOBは受け入れられないようだ。

労務問題も8つの労働組合を抱えているところをみると、抜本的な改革はなされていないのだろうか。


組織が大きくなればなるほど、さまざまな思惑が入り乱れて根本から変えるのは難しいのだと思う。

大企業の中のいち社員は巨像の前の蟻である。そういう僕も医局や病院といった組織の一員で小さな蟻にすぎない。

少数の誠実な社員だけではできることは限られる。この物語の主人公たちのように。ここまでくると、誠実な社員だけで巨大組織を変えていくのは困難に思える。懸命に働いている日航の社員が気の毒だ。

腐りきった巨大組織はいったん潰れて生まれ変わるしかないのじゃなかろうか、と本書を読んで感じた。


<関連ニュース>


法的整理による企業イメージの低下で顧客離れって。。
いまさらという感じもする。


沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
(2001/11)
山崎 豊子

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沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)
(2001/11)
山崎 豊子

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沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)
(2001/12)
山崎 豊子

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沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)
(2001/12)
山崎 豊子

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沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)
(2001/12)
山崎 豊子

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