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医療費負担と病院受診の関係


11 15, 2012 | Tag,医療費

先日息子が生後7ヶ月を過ぎた頃に風邪を引きました。自分のことには無頓着なのに、息子のことになると過剰なまでにいろいろと心配してしまう。これはたぶん気のせいじゃないです。

近くの小児科で鼻水を吸引してもらったり、薬を出してもらったりしてとても助かりました。子を持つ親というのは皆こういう気持ちになるのかと実感した次第です。なってみないと分からないこともあるものです。


直接関係はないのですが、この一件で思ったことがあります。医療費無料という制度についてです。この制度は子供を持つ親にとっては本当にありがたい制度です。

それと同時にこの制度は確実に病院への受診を促すのだと実感しました。どうしようか迷っている時も”どうせタダだし、念のため病院に行っておこう”という気持ちになります。

おそらく通常、みなさん無意識かもしれませんが、病状と病院にかかることで発生するコストを天秤にかけているはずです。整形外科などでは雨が降ったら外来患者さんの数が減るのはよくあることです。足元が悪いと病院に来る患者が少なくなります。

1割負担の高齢者にもこういう”念のため”受診が多いかもしれません。いや、多いんだろうな。整形外科の外来をやっていると特にそう感じます。外来の待合室が高齢者でごった返しているのは病気の重さだけが原因ではないかもしれないです。


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病院の薬は誰のもの?


04 22, 2010 | Tag,医療,医療費

このニュースは他人事ではないなと思った。
東京新聞:向精神薬入手させ転売 生活保護受給者を動員:社会(TOKYO Web)

向精神薬入手させ転売 生活保護受給者を動員

2010年4月20日 夕刊

 大阪市西成区のあいりん地区で、医療費のかからない生活保護受給者を動員して病院で向精神薬を入手させ、インターネットで転売していたとして、神奈川県警が週内にも、麻薬取締法違反(営利目的譲渡、所持)などの疑いで、同県横須賀市の無職大沢広一被告(41)=覚せい剤取締法違反罪などで起訴=を追送検する方針を固めたことが二十日、県警への取材で分かった。

 送検容疑では、昨年十一~十二月、ネットで知り合った客五人に、向精神薬千錠を十二万円で販売した、などとされる。

 捜査関係者によると、大沢被告の知人の大阪市港区、無職栗山一郎容疑者(53)=同法違反容疑で逮捕=が、あいりん地区の生活保護受給者数十人と接触。医療機関で病気を装い、無料で入手させた向精神薬を買い取って、大沢被告が転売していたという。

 県警の調べに大沢被告は「自分で使っていた向精神薬をネットで販売したところ、買い手が付いたので、もうかると思った」と供述しているという。

 生活保護受給者は福祉事務所が発行する医療券を用いれば医療費が無料になる。県警は、栗山容疑者が受給者にうつや不眠などの症状を訴えさせ受診させていたとみている。

精神科もそうだけど、僕が専門にしている整形外科でも同様のことが起こりうるなと。



病院での医師が行う医療は診察して、検査して、診断して治療を行うというのが一連の流れ。

検査の結果、ピンポイントに病気の診断にいたって、特定の薬を処方する。これが妥当な医療だと思っている。

糖尿病や高脂血症、高血圧などは検査結果が存在して、それに対する処方を行うのが一般的だ。

しかし、眠れない、とか気分が落ち込む、とか精神疾患でありがちな症状は検査結果としてそれが測れない。



整形外科でもそうだ。どこどこが痛いとかしびれるとかは検査結果として現れない。患者の訴えからそれに対する処方を行うことになる。

だから、痛みという症状には深刻に応じて痛み止めを処方したり、湿布薬を処方したりする。

なかにはこの薬をできるだけたくさんほしいというふうに言ってくる患者もいたりして、「そんなにたくさん必要ですか?」と言いたくなる場面は正直ある。

そういう場面でも医者としては「必要ですか?必要じゃないでしょう?」なんてことは言えない。

つらいと言っている患者にはできるだけ力になってあげることが僕ら医者の仕事だからだ。



処方された薬を適切に使うかどうかは患者にゆだねられている。

モラルハザードが生じると、このニュースのようなことになりうるのだと思う。

生活保護だと医療費の自己負担がない。通常の健康保険を利用している人でも自己負担が3割だから、残りの7割は税金とみんなで支えている医療保険からまかなわれている。

日本の医療はみんなで支えているものですから。年々かさむ医療費のことを考えてもこのようなモラルハザードはなくさないといけませんよね。


守りの医療 - ディフェンシブ・メディシン


04 05, 2010 | Tag,医療,医療費


この話は外科医が治療(手術)に伴なうリスク、合併症のことについて患者さんに説明したところ、患者さんは合併症のことを重く考え、代替医療に走ってしまったというもの。

それに対して外科医は
確かに手術は人間が行うものなので絶対ではない。患者さんの立場なら、手術への不安から安全な治療、誤った療法を選んでしまうこともあるだろう。だが、患者さんはともかく、医療従事者だけは、不安な思いに対して“安全第一”が取り憑いた判断をしてはいけないと思う。
と自省している。


患者には安心を提供しなくてはいけない、という意味では同感。

「私にまかせておけば大丈夫。必ず治します。」

なんてかっこいいことを言ってあげたいなぁと思う。



でも、この外科医のとった言動は決して間違ったものではないとも思う。手術の説明ともなると、説明時間の半分以上を手術に伴なう合併症に費やしていたりするのが現実。

実際の臨床では理解してもらえるように、平易な言葉で患者さんに分かるように説明するよう心がける。すると患者さんは、うんうん頷きながら、「分かりました。」と言いながら聞いている。

しかし、どこまで話を理解しているのか怪しいところがあるのは確か。自分にとって不都合なことは頭の中に入ってこないというのは誰でもそう。患者さんと対面しているとよく分かる。

にもかかわらず、ほとんど起こらないけど、起きるかもしれないことの説明に時間を費やしている。保険会社みたいに紙を渡して、あとは自分で読んでください、なんて形式にしたらどうだろう。いい話だけ聞いてればいいから、患者さんも気が楽に違いない。



これはほんの一例だが、そのような過剰に防御的になる医療をディフェンシブ・メディシンというのだそう。

救急外来にきた患者で「胸が痛い」と言ったらほぼ全員に造影CTをやるとか、頭をぶつけたかもしれなかったら全員頭部CTとか。

こういうのもディフェンシブ・メディシン。なんでもかんでも検査しておけば、後で”何か”起きた時に役立つかもしれない。でも医療費はこうしてどんどんあがるわけだ。


実際にアメリカを例にとると、ディフェンシブ・メディシンの弊害は
ディフェンシブ・メディシンによる無駄な医療がどれだけ医療費を押し上げているかについてもいくつかの研究があるが、医療過誤の賠償金に上限を設けるなどの法的対策を講じていない州では、そのような法的対策を講じている州と比較して、医療費総額の5-10%が余計に消費されているのではないかと推計されている。
市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗には書かれている。

医療過誤に対して設ける法的対策というのはおもしろい。


すでに日本でもディフェンシブ・メディシンははびこっているけど、医療費が増え続ける原因の一つに増え続ける医療訴訟というのもあるのかもしれませんね。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
(2004/10)
李 啓充

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接骨院と病院


12 13, 2009 | Tag,柔道整復師,接骨院,医療費

仕事がら接骨院と近い関係にある。マッサージのような施術以外に、彼らは打撲や捻挫を治療することができるらしい。

たしかに時々外来に接骨院で副子をあてた患者さんが、やっぱり痛いからといって外来を訪れることなんかもあったり。

今のところ接骨院とはいい関係が築けていると思う。特に頚椎捻挫や腰椎捻挫そういった患者さんとしては結構つらいんだけど、大きな病院の整形外科ではあまり有効な治療がないという疾患に対して、彼らには助けられている気がする。

ただ、時々困るのは打撲や捻挫だろうといって、骨折なのに接骨院でずっと治療されていることだ。接骨院ではレントゲンが撮れないから骨折の診断はできない。ギブスが必要な時もあるけど、それもできない。だから、激しい外傷の時はまずは整形外科に行くべき。受傷してから2週間くらいたって、「え?折れてますけど」という場面に遭遇したこともある。

この一週間のニュースにこんなのがあった。



今回目にしたニュースはこれに関連した柔道整復師の年間保険料請求額の話題。3800億円だとか。

リハビリテーションでも5600億円の保険料請求額だから、たしかにその金額の多さには目を見張る。リハビリテーションといったら整形外科での入院はもちろん、脳外科や内科などでもお世話になることが多い分野である。

このニュースを読んで、実は自分はこんなに近い分野である柔道整復師がどんな人たちで、どんなことをやっているのか知らなかった事実にはっとした。

時々紹介状をもらったり、検査をお願いしますとか言われたりしているのにだ。マッサージして、副子をあてて、とかその程度のことしか知らない。

接骨院での治療は基本的に保険適用だ。保険が適用されるのに、その請求内容の中身がよくわからないのがこの3800億円の話。だから問題になっている。

ということはつまり、行っている内容はそもそも分かりにくくできていたのだ。自分の無知を正当化するわけではないのですが。。

柔道整復師は湿布や冷却、包帯の固定 、 温熱療法、低周波・中周波などを用いた物理療法などもやっているようですね。薬を処方してはいけないけど、湿布はOKなんですね。分かったようで分からないような・・・。

うまくコラボしていけるといいんだけどね。




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医療の裏側でいま何がおきているのか


09 16, 2009 | Tag,医療,医療問題,医療費,社会保障

本書は2007年に開かれた9名の有識者によるシンポジウムの内容をまとめたものです。現在の医療制度を理解するのに役立つ一冊となっています。

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(2009/04/30)
大阪大学医学部 医療経済研究チーム

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まず初めにこのあたりのことは基本事項として覚えておいた方が良さそうですよ。


・社会保障費90兆円。そのうち年金50兆円超、医療費30兆円超。
・日本の国家予算は80兆円。国債費や地方交付税を払った後に残ったお金(一般歳出は)47兆円。そのうち防衛費7兆円、文教費5兆円、公共事業費7兆円、社会保障関係費21兆円。
・90兆円から21兆円を引いた部分は国民から集めた保険料55兆円と地方自治体の負担、運用益からなっている。
・年金に関して言えば、サラリーマンは毎月の給料から7%の保険料を天引きされ、厚生年金の保険料を払っている。


2004年の対GDP費総医療費をアメリカと比較してみると、アメリカ15.2%なのに対し、日本は8.0%です。先進国中最低レベルです。

日本の人口当たりの医師数が少ないことは指摘されて久しいですが、2002年のデータでは病床100床あたりの医師数で比較すると、日本が13.7人なのに対し、アメリカでは66.8人です。病床100床あたりの看護職員数では日本が54人なのに対し、アメリカでは233人です。

何が言いたいかというと、少ない投資の割に日本の医療にそこそこ満足できているのは、医療従事者の献身的な犠牲により成り立っているからかもしれないということです。

このあたりを考えると、医師の数は早急に増やす必要がある、ということです。


ところが、医療従事者は頑張っているのに、病院全体の60~70%が赤字経営だということです。

じゃあ、医療にかかるコスト30兆円の内訳が気になるところですが、それは本書に書いてありました。


2001年のデータですが、30兆円のうち、病院が収益として80%くらい、10%が剤薬局、他歯科診療など、という割合になっています。

驚いたのですが、病院の収益80%のうち、医療機関以外の取り分が半分ほどあることです。医療機関外というのは製薬メーカーとか医療機器メーカー、検査メーカー、医薬品卸などです。ということはつまり、病院自体の収益は12兆円くらいということですね。

実際に、白内障の手術(7430点(74300円))や腹腔鏡下胆嚢摘出術(25600点(256000円))なんかでは手術料のうち、約半分が材料費にもっていかれしまいます。技術の対価を受け取る方としては、なんだかやるせない気持ちになりますね。

病院の多くが赤字経営を続けていることを考えると、医療行為や薬などの保険点数のつけ方が妥当ではないと考えざるを得ません。


しかし、膨らみ続ける医療費を抑えることも必要なわけで、その点は議論が続けられていることと思います。

本書に登場するある経済学者の先生は、増え続ける医療費に対応するためには消費税などの税金を増やすことで対応するしかないと言っていました。

もしくは自己負担を増やす方法を考えるか。あまり国民に対する直接的な自己負担を増やすと、まともに医療を受けられない人が増えて問題になるだろうし、社会保障の観点から離れていってしまいます。

税金を増やすことで対応するなら、間接的な自己負担増ですから意外といけるかもしれません。個人的には消費税増はもはや仕方ないかなと思います。

民主党政権になって、このあたりの医療費のやりくりをどうするかは見物ですね。


まとめると、今に始まったことではなく、日本の医師数は足りてないんだよ、ということ。保険点数はもう少し見直さないと病院存続にとって良くないよ、ということ。増え続ける医療費には税金で対応するのが妥当かもしれない、ということでした。


ところで、医療費高騰の本当の犯人については本書の説より、こちらの本の説を信じます。犯人は人口の高齢化というより、医療技術の進歩、という説。

こちらが関連記事↓

>> 医療費高騰の真犯人は? 【書評】「改革」のための医療経済学

>> 日本の医療が迷走しないために 
 
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日本の医療が迷走しないために 


05 05, 2009 | Tag,医療,医療費,医療経済学

医療費高騰の原因は「医療技術の進歩」だということ、一生のうち、お金が最もかかるのは急性期医療だが、早死にする人も長生きする人もかかっている医療費総額は変わらない、ということが分かっています。


医療費を削減するためにはどのような方向に向かっていけばよいのか?


答えはないのですが、間違った方向に歩きださないようにするためにはどうすればよいかについて5つ考えていきたいと思います。



1.米国を見習って在院日数を短くしようとするのは間違っている。

SNF(Skilled Nursed Facility)という仕組みが米国にはあります。これは急性期病院を退院した後に患者さんが行く病院ですが、実際にはここでも日本の急性期病院で行われている医療行為が行われているのです。しかしSNFでの入院は急性期病院での入院日数には含まれません。つまり、米国の入院日数が短くみえるのは統計上の数字のトリックだということが分かります。
また、日帰り手術が多くなったことで今度は入院ではなく外来での医療費が大きくなっています。結局入院日数の短縮は全体の医療費抑制に効果を上げていないのです。



2.予防医療は医療費を高騰させる。

予防医療で費用対効果を認められているのは予防接種や新生児スクリーニングくらいで、癌などの早期発見早期治療は医療費抑制に効果をもたない、という研究結果があります。
病気が末期になるまで発見されなかったらそれだけ急性期医療での費用がかかるわけですが、そういう人たちは人生を短い期間でまっとうすることになり、一生のうちにかかった医療費は削減されることになります。タバコもそうです。喫煙を励行すれば肺がんなどで早死にする危険は高まりますが、そのおかげで医療費は節約することができます。ここでの議論はあまり意味をなさないものだと思いますが、癌検診などを一切やらない、喫煙を励行するなどの政策は医療費削減という点だけみると有効だということです。しかし、これは国民のQOL(生命の質)を保つ上では賛同できませんよね。



3.医療は民営化すべきではない。保険にしろ病院にしろ。

営利企業が市場に参入することで価格競争が促進され、経営効率が改善し、コストが抑制されるうえ医療の質が向上する、という説がまことしやかに言われていますが、米国において「競争」を通じてコスト抑制につながったという研究結果は実際にはありません。むしろ多数の医療機関がたとえば有名な医師を高額な報酬で招く、待合室の内装を豪華にする、高額な検査機器を多く導入するなどして、コスト上昇につながる可能性が高いと言われています。



4.診療報酬引き下げは医療費を高騰させる。

診療報酬の引き下げはコスト抑制に役立たないばかりか、資源の浪費とコスト上昇にすらつながることは先進諸国の過去に経験済みです。これは報酬引き下げに対し、医師がその専門知識を最大限に利用し巧妙な誘発需要を引き起こす可能性が高くなるからだそうです。



5.意外とうまくいっている日本の医療制度。

日本の医療費はG7中6位。GDP比で8%(2001年)。米国では13.1%(2001年)というデータがあります。ちょっと古いですが、これを見るとまだまだ政府予算のうち医療費にあてる割合を多くしてもいいのではないかと思ってしまいますね。

医療費の総額規制(Global budget) 保険機関から医療機関に支払う額の総額に上限を設定すること。これは良い方法のようです。日本は「レセプト」に応じて保険機関から病院側がお金を受け取る仕組みですので、この方法に則っています。イギリスはさらに進んでいて専門医を受診するためには必ず家庭医を受診しなければならず、家庭医がゲートキーパーの役割をはたしています。医療費抑制の面で優秀なイギリスの家庭医制度ですが、この仕組みのおかげで必要な治療(手術など)をすぐに受けられなくなっているという残念な面もあります。



日本の医療が迷走しないためには、これら医療経済学の知見が役立ちますね。

Inspired by
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医療費高騰の真犯人は? 【書評】「改革」のための医療経済学


05 01, 2009 | Tag,医療,医療費,医療経済学

「改革」のための医療経済学「改革」のための医療経済学
(2006/07)
兪 炳匡

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驚きました。医療問題の本質が全く分かっていなかった自分に。しかし、これは多くの日本人も勘違いしているところではないでしょうか。なぜなら報道されている医療関係のニュースですらことの本質を見抜いてないのですから。


例えば「医療費高騰の原因は人口の高齢化が問題である」という説。

本書では医療費高騰の本当の原因は人口の高齢化が問題であるということをこれまでに発表されている論文から反論しています。一見正しそうに見えるこの説も、間違いであることが示されています。


このように、「医療において希少な資源・財・サービスを、競合する目的のために配分・選択する仕方を研究する」のが医療経済学です。お金儲けや会計、経営とは別分野の学問であることを認識しておく必要があります。

医療費など、お金の話が多く出てくるのは医療という社会全体の一分野を、社会全体の中で貨幣という価値を用いて最適に配分する必要があるからです。


本書の著者、兪 炳匡さんは日本で臨床研修を行った後、ハーバード大学など米国の大学で医療経済を学んだあと、現在も米国で研究、教鞭をとられている方です。


疑われた5要因
1.人口の高齢化
2.医療保険制度の普及
3.国民所得の上昇
4.医師供給数増加
5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差


1.人口の高齢化

米国では65歳以上の人口の割合が8%(1950年)から12%(1987年)に上昇した期間に医療費が425%上昇したのに対して、人口の高齢化は15%寄与しました。このことは人口の高齢化の寄与率が、医療費の総上昇率のうちわずか30分の1(3.5%)であったことを示しています。


2.医療保険制度の普及

米国で公的・私的を含めた医療保険制度が普及した結果、患者の窓口負担が平均値で67%(1950年)から27%(1980年)に低下しました。この負担率の低下とランド(RAND)医療保険研究の研究成果である価格弾力性をもとに、医療需要は50%上昇したと算出されました。同じ期間に医療費は290%上昇しているので、医療保険制度の寄与率は約17%になります。
(価格弾力性の説明は省略)


3.国民所得の上昇

1940年から1990年までの期間に、米国の実質国民所得は180%上昇しました。また、過去の実証的研究の結果をもとに所得弾力性を0.2~0.4%と仮定すると、国民所得上昇は医療費を35~70%上昇させたと算出できます。この期間の米国の総医療費は780%上昇しているので、国民所得上昇の寄与率は約22分の1~11分の1になります。
(所得弾力性の説明は省略)


4.医師供給数増加

10年ごとの医療費の変化率と医師供給数の変化率の相関関係をみると、経時的に一定な相関関係は認められなかったと示している論文があります。つまり、10年ごとで見ると、医療費が増えている時期と医師供給数が増えている時期に違いがあったということです。


5.医療分野と産業における生産性上昇率の格差

医療分野の生産性の上昇がその他の産業分野より低い場合、相対的に医療分野の価格は上昇します。生産性の測定の例として、高血圧の患者さんの収縮期血圧を120mmHgに維持するのに必要な人的資源・医療資源が、過去30年にどう変化したかを測定したものがあります。これに比べると、理容店や美容室で一人の髪を切るために必要な時間はほとんど変化しておらず、よって医療の生産性が上昇しているのは明白だと述べている論文があります。



いずれもこれまでの研究結果をもとに書かれているので、信頼性はあると思います。


これらを踏まえて医療費高騰の本当の原因は「医療技術の進歩」という結果が出ています。つまり、急性期医療で行われる医療行為が医療費高騰を招いているということです。


意外でした。個人的には特に1の人口の高齢化と4の医師供給数の増加が、全体の医療費増大にそんなには寄与していないということが驚きでした。つい最近まで医師は供給過多だからといって医学部の定員を減らすような政策を作っていた厚生労働省はなんだったのでしょうか。



日本で医療経済学が盛んでない原因の一つに研究に必要な自治体や国レベルでの大規模なデータが入手しづらいことが関係しているようです。著者の兪 炳匡さんが現在も米国で米国のデータを使って研究されているのは、日本では研究材料が入手しにくいことが関係しているのかもしれません。

学問としては社会に貢献できるような結果を残せるほうが魅力的でしょうから米国で研究を続けているとのにも納得できます。

最近、日本ではDPCという包括医療制度が普及してきています。これにより患者や医療行為、病院経営についての現状が数字として把握されればもっと日本でも医療経済学が広まるかもしれません。


【関連記事】
医療経営学
このエントリの在院日数短縮に関する記載はいまひとつ的外れということになってしまいました・・・。




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医療経営学


10 04, 2008 | Tag,医療,医療経営学,医療費

値段(3600円)やタイトル通り、この本は万人受けする読み物というよりは、教科書的な本です。経営学の本らしく、VRIO(Value, rarity, inimitability, organization)やSWOT分析(strengths, weakesses, oppotunities, threats)などのフレームワークも登場します。

医療経営にも興味があるので、読んでみました。

この本から得られるフレームワークですが、
医療経済と病院の経営。日本の医療と日本の病院が生き残っていくために知っておいた方がいいこと”
という感じでしょうか。

医療経営学医療経営学
(2006/01)
今村 知明井出 博生

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医療経営学を語る時、矛盾をはらんだ2つの命題に同時に対処しなければなりません。一つは営利を目的とした民間企業の経営学、もう一つは営利を目的としない公的サービスとしての経営学です。

国民医療費は高齢化に伴い増加しています。それを何とか食い止めようとしているのが今の政府です。この本を読んでいてもやはり感じたのですが、医療は確実に”お金”の影響を受けます。国民に医療というサービスを提供するとき、経済学的につじつまが合っていなければならないのです。いくら最新最良の医療でもお金の後ろ盾がなければ提供できないのです。


医療費を抑制するための方法の一つに在院日数短縮、という方法があります。
2000年の時点で日本の平均在院日数が約30日であるのに比較して、他の先進国はおおむね15日以下です。在院日数を減らして、患者さんの回転率を上げれば病院の収益は増えます。
だから、今、どこの病院も平均在院日数の短縮に躍起になっています。

平均在院日数を短縮する方法の一つとしてDPC(diagnosis procedure combination)というのがあります。DPCというのは、それぞれの病気を手術するかしないか、とか合併症があるかないかなどで分類していき、その分類に応じて定額の医療費を支給する包括支払い制度のことです。
この制度によると、入院を長引かせれば長引かせるほど、赤字になります。

包括医療に対する言葉に出来高支払い制度というのがあります。こちらは医療行為を行えば行うほど、それに応じてお金が支払われる制度です。

DPCのもう一つのメリットに医療情報の標準化と透明化があります。DPCを導入することによって、各病院間で在院日数を比較したり、クリティカルパスの作成に役立てることが出来ます。今までは病院で行われている医療行為を効果的に病院間で比較する手段がありませんでした。

クリティカルパスというのは病気に対して標準化された治療を提供するためのマニュアルと考えてよいと思います。

世界と比較した日本の医療費についてもコメントしておきます。日本の医療の良いところは国民皆保険フリーアクセス(どこの病院でも受診できる)、という点です。

イギリスはフリーアクセスではありません。GP(general practitioner)(厳密に言うと同じではないけど、日本だと開業医みたいなもの)を受診しないと大病院にはかかれない仕組みになっています。だから、イギリスでは必要なときに大きな病院を受診できないので医療難民が増え、海外の病院を受診するしかないというような事態が起きています。

また、アメリカは国民皆保険ではありません。
全国民の60%が民間の医療保険に加入していて、残り14%である高齢者や障害者はMedicareという公的医療保険に、11%にあたる極貧者はMedicaidという公的医療保険に加入しています。残りの15%は???そう、医療保険に加入していないのです。個人でお金を払うには高額すぎるので、そういう人たちは病院を受診できません。アメリカでも医療難民が出現しています。

そんなアメリカでも総医療支出対GDP比は15.3%です。先進国では大体10%が平均くらいです。
ところが、日本のGDP比は8%です。

ということは国の予算からはもう少し医療にお金を割いてもいいことになるんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう?



医療機関の財務的特徴に固定費である人件費が収益の約50%を占めているということがあります。国家資格ををもった職種が多いせいだと思いますが、単純に人件費をカットすることは病院の経営上好ましくないと思います。本当に病院の収益を考えるなら、効果的な人員配置、例えば給与の高い医師を減らして、医師以外の職種で出来る仕事は他のコメディカルに分配する、などの工夫が有用ではないかと思います。



医療情報の管理、在庫の把握や安全管理などの点から見て、電子カルテは有用です。それなのに、まだ十分に普及していない原因に導入コストの値段が高い、ということがあります。しかし、ここ10数年のITの進歩を考えると電子化の流れは避けられません。

だいたい、紙のカルテは倉庫から引っ張り出してきたものの、字が汚すぎて読めない、ということも少なくありません。それじゃあ記録として意味がありませんよね。



今後の医療の流れとして、包括支払い制度、DPCの導入、医療の標準化、後発医薬品の普及、システムの電子化は避けられないでしょう。

さらに、混合診療、病院の株式会社化などについてが今後議論の対象になってくるかもしれません。


入院日数の短縮が医療経済上合理的なのは異論ありませんが、実際に現場で治療にあたる一医師の立場から言わせてもらうと、現在の主治医制では入院日数の短縮をすればするほど大変になるのは治療に当たっている医師です。雑務が多いこともありますが、患者さんの出入りが激しくなればなるほど仕事の量が増えていきます。もっと仕事の再分配を進めることも大事だと思います。






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医療経済学4


07 18, 2008 | Tag,医療,医療経済学,医療費,混合診療

やさしい医療経済学 第2版やさしい医療経済学 第2版
(2008/04/07)
大内 講一

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を読んだ後の読書記録はこれが最後です。


医療費に関連して

これまでの医療費支払いは出来高払いでした。
つまり、検査をすればするほど、投薬をすればするほど報酬がもらえる仕組みです。

医療費抑制の一環としての新しい流れが、DPC制度というものです。
この制度は疾病別に受け取れる報酬が初めから決められるというものです。
これが導入されると、必要以上の入院や治療、検査などが抑制できると見込まれています。
例えば、T大病院なんかはDPCが導入されています。

我々にとってはなんとも窮屈ですが、医療費抑制のために、必要最小限の治療が求められています。


混合診療について

保険外診療って聞いたことありますか?

そう、普通の病院では保険診療で診療しています。それは、保険外診療と保険診療の併用が認められてないからです。これらの併用を混合診療といいます。

保険外診療には新しい、魅力的な治療があります。しかし、それは安全性の確保という意味でまだ十分な知見がなかったりします。収入の少ない患者さんは治療を受けられず、不公平だという意見もあります。

そういう理由で厚生労働省は保険外診療を認めていません。

もう一つ、これが最も大きな理由だと思いますが、
保険外診療が横行すると、保険診療が名ばかりのシステムになってしまいます。
厚生労働省はこれを一番心配しているのではないでしょうか?


しかし、患者さんには最新最良の治療を選ぶ権利があるはずです。
リスクを踏まえて治療を選択する権利が患者さんにあってもいいんじゃないかと思います。

現在混合診療は認められていません。
なので、保険外診療を選択すると、通常は保険で出来るはずの診療まで保険が適用されなくなってしまいます。
もう少しこの規制を緩和したほうが医療費抑制効果もあると思うし、患者さんのためになるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?



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やさしい医療経済学


07 16, 2008 | Tag,医療,医療経済学,医療費

医療経済学について読書してみました。

やさしい医療経済学 第2版やさしい医療経済学 第2版
(2008/04/07)
大内 講一

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医療制度ってほんとややこしいと思います。

要点を私的な視点からまとめます。


お金の流れってどうなってるんでしょうか?

我々は医療機関を受診して、医療サービスを受けます。
医療機関は医療行為に見合った対価を受け取りますが、では、お金はどこから出てくるんでしょうか?
我々は通常病院に行っても3割しかお金を払っていません。
では残りの7割はどこが負担しているのか?

これは、医療保険と公費(国庫負担・国庫補助金など)が負担しているんです。

ちなみに2005年度の統計では国民医療費(介護費を含む)が39兆円で、そのうち公費負担が15兆円(37%)、保険料からの負担が19兆円(49%)です。

医療保険には通常会社勤めしている人が払っている「健康保険」や、公務員対象の「国家公務員等共済組合」、自営業の人は「国民健康保険」に加入していると思います。

我々が給料から天引きされているお金の中にはこのような保険料が含まれているんですね。


ここからが、特殊な点ですが、医療機関は行った医療行為を審査されるんです。
それでOKが出れば給付がおります。つまり、医療機関と保険者(保険組合)の間に仲介する機関があるんです。
こういう審査をする機関を審査支払機関といいます。

勤務医(開業医もか・・)は審査(通称レセプト)を通すために、行った医療行為について、病名を付けたり、どうしてこの治療を行ったかを文書で報告しなければなりません。
月末はこの書類作業をやらねばならず、忙しい勤務医にとっては正直負担だと思います。
しかも、レセプトをやるかどうかは医師の報酬に全く反映されません。
つまり、適当にやってもちゃんとやっても同じ給料なんです。
そう考えると医師のレセプトに対するインセンティブは開業医でなければ、低くて仕方ないと思います。


しかし、このシステム自体は保険者と被保険者の間を取り持つ中間的な存在なので、それはそれで大事な役割を果たしていると思われます。
これがないと、保険者と医療機関との間で、報酬について折り合いがつかなかった場合、民事訴訟しか解決手段がなくなってしまいます。


でも・・・制度があるのはいいとして、やはり医師のレセプトチェックの労力はなんとか改善してほしいところです。


続く・・・



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