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医療経営学


10 04, 2008 | Tag,医療,医療経営学,医療費

値段(3600円)やタイトル通り、この本は万人受けする読み物というよりは、教科書的な本です。経営学の本らしく、VRIO(Value, rarity, inimitability, organization)やSWOT分析(strengths, weakesses, oppotunities, threats)などのフレームワークも登場します。

医療経営にも興味があるので、読んでみました。

この本から得られるフレームワークですが、
医療経済と病院の経営。日本の医療と日本の病院が生き残っていくために知っておいた方がいいこと”
という感じでしょうか。

医療経営学医療経営学
(2006/01)
今村 知明井出 博生

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医療経営学を語る時、矛盾をはらんだ2つの命題に同時に対処しなければなりません。一つは営利を目的とした民間企業の経営学、もう一つは営利を目的としない公的サービスとしての経営学です。

国民医療費は高齢化に伴い増加しています。それを何とか食い止めようとしているのが今の政府です。この本を読んでいてもやはり感じたのですが、医療は確実に”お金”の影響を受けます。国民に医療というサービスを提供するとき、経済学的につじつまが合っていなければならないのです。いくら最新最良の医療でもお金の後ろ盾がなければ提供できないのです。


医療費を抑制するための方法の一つに在院日数短縮、という方法があります。
2000年の時点で日本の平均在院日数が約30日であるのに比較して、他の先進国はおおむね15日以下です。在院日数を減らして、患者さんの回転率を上げれば病院の収益は増えます。
だから、今、どこの病院も平均在院日数の短縮に躍起になっています。

平均在院日数を短縮する方法の一つとしてDPC(diagnosis procedure combination)というのがあります。DPCというのは、それぞれの病気を手術するかしないか、とか合併症があるかないかなどで分類していき、その分類に応じて定額の医療費を支給する包括支払い制度のことです。
この制度によると、入院を長引かせれば長引かせるほど、赤字になります。

包括医療に対する言葉に出来高支払い制度というのがあります。こちらは医療行為を行えば行うほど、それに応じてお金が支払われる制度です。

DPCのもう一つのメリットに医療情報の標準化と透明化があります。DPCを導入することによって、各病院間で在院日数を比較したり、クリティカルパスの作成に役立てることが出来ます。今までは病院で行われている医療行為を効果的に病院間で比較する手段がありませんでした。

クリティカルパスというのは病気に対して標準化された治療を提供するためのマニュアルと考えてよいと思います。

世界と比較した日本の医療費についてもコメントしておきます。日本の医療の良いところは国民皆保険フリーアクセス(どこの病院でも受診できる)、という点です。

イギリスはフリーアクセスではありません。GP(general practitioner)(厳密に言うと同じではないけど、日本だと開業医みたいなもの)を受診しないと大病院にはかかれない仕組みになっています。だから、イギリスでは必要なときに大きな病院を受診できないので医療難民が増え、海外の病院を受診するしかないというような事態が起きています。

また、アメリカは国民皆保険ではありません。
全国民の60%が民間の医療保険に加入していて、残り14%である高齢者や障害者はMedicareという公的医療保険に、11%にあたる極貧者はMedicaidという公的医療保険に加入しています。残りの15%は???そう、医療保険に加入していないのです。個人でお金を払うには高額すぎるので、そういう人たちは病院を受診できません。アメリカでも医療難民が出現しています。

そんなアメリカでも総医療支出対GDP比は15.3%です。先進国では大体10%が平均くらいです。
ところが、日本のGDP比は8%です。

ということは国の予算からはもう少し医療にお金を割いてもいいことになるんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう?



医療機関の財務的特徴に固定費である人件費が収益の約50%を占めているということがあります。国家資格ををもった職種が多いせいだと思いますが、単純に人件費をカットすることは病院の経営上好ましくないと思います。本当に病院の収益を考えるなら、効果的な人員配置、例えば給与の高い医師を減らして、医師以外の職種で出来る仕事は他のコメディカルに分配する、などの工夫が有用ではないかと思います。



医療情報の管理、在庫の把握や安全管理などの点から見て、電子カルテは有用です。それなのに、まだ十分に普及していない原因に導入コストの値段が高い、ということがあります。しかし、ここ10数年のITの進歩を考えると電子化の流れは避けられません。

だいたい、紙のカルテは倉庫から引っ張り出してきたものの、字が汚すぎて読めない、ということも少なくありません。それじゃあ記録として意味がありませんよね。



今後の医療の流れとして、包括支払い制度、DPCの導入、医療の標準化、後発医薬品の普及、システムの電子化は避けられないでしょう。

さらに、混合診療、病院の株式会社化などについてが今後議論の対象になってくるかもしれません。


入院日数の短縮が医療経済上合理的なのは異論ありませんが、実際に現場で治療にあたる一医師の立場から言わせてもらうと、現在の主治医制では入院日数の短縮をすればするほど大変になるのは治療に当たっている医師です。雑務が多いこともありますが、患者さんの出入りが激しくなればなるほど仕事の量が増えていきます。もっと仕事の再分配を進めることも大事だと思います。




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医療・ヘルスケア ビジネス最前線


09 28, 2008 | Tag,医療,医療経営学,ビジネス

医療ビジネスに関する本を読みました。

この本は
医療にまつわる様々なビジネスの現在と未来、さまざまなビジネスモデルについて解説している本”
です。

企業トップが語る「医療・ヘルスケア」ビジネス最前線―変貌する巨大市場に挑む (東京大学大学院医学系・薬学系協力公開講座)企業トップが語る「医療・ヘルスケア」ビジネス最前線―変貌する巨大市場に挑む (東京大学大学院医学系・薬学系協力公開講座)
(2005/10)
東京大学大学院医学系薬学系協力公開講座「医療経営学概論」木村 廣道

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日本の医療費は約30兆円。
人間ドック、美容外科などの自由診療や健康食品、フィットネスクラブ、保険などの周辺産業を合わせると約70~100兆円の市場です。

まだまだこの市場は伸びる可能性があります。
高齢化が進むということは医療を必要とする人が増えるということです。需要のある所にお金は集まります。
また、財源確保のために、混合診療が認められるようになるかもしれません。
そうすると、今までより自由診療の幅が増え、そこは大きなマーケットになるでしょう。
また、医療は日々イノベーションが探求されている分野です。iPS細胞などの再生医療をめぐり、今後莫大なお金が動くことも必至だと思われます。


この本で取り上げられているビジネスモデルを紹介します。

1.予防医療ビジネス
リゾートホテルと検診施設を融合させた事業です。
富裕層を対象にしています。
富裕層は自分の健康に対してお金をあまり惜しまない傾向にあるようで、利益を上げています。
検診施設には最新の医療機器PETを導入して癌の早期発見に貢献しているといいます。

2.システム構築
セコムが開発している新しいネットワークシステムです。
どういうものかというと、例えば検査画像を1か所に集積し、そこから各医療機関、検査機関で情報の共有をさせようというものです。

3.フィットネスクラブ
若者の健康増進だけではなく、高齢者の健康増進に着目しているところが発想に優れていると思います。
高齢者の会話は若者と違って、健康に関することが多いと思います。
つまり、高齢者ほど自分の健康を気にかけています。たぶんそれは周囲と比較したりして、自分の病気になった姿がより具体的にイメージできるからなんだと思います。
それだけ気にかけている高齢者ですから、自分の健康管理には若者以上に気を使います。
お金を持っている高齢者なら、多少のお金を払っても健康増進のためのフィットネスクラブに通います。
このビジネスモデルで成功している企業(スポーツフレックス)は、フィットネスクラブに医師、クリニックなどの医療機関を介入させて付加価値を高めています。
自分の健康管理に医師が関わってくれると分かれば、より多くの高齢者が積極的にそのフィットネスクラブを利用するでしょう。

4.ヘルスケアサービス
健康診断などの保健事業における「計画→実践→評価」のプロセスに着目したビジネスです。
このプロセスをDisease Management(略してDM)と呼びます。
オムロンヘルスケアはこのプロセスの”計画と評価を支援するソフト”や、実践につながる”行動変容プログラム”を作ってビジネスを行っています。

5.女性医療
日本シエーリング社は海外に比べてまだ日本ではあまり普及していないピルを広めようとしています。
ピルと言うと、効果として避妊を思い浮かべる人も多いと思いますが、それ以外にも月経痛を和らげる作用もあります。
女性の月経痛は男性には分からないとても辛いものです。月経痛により仕事に支障をきたし、場合によっては休職せざるを得ない場合もあります。
厚生労働省によれば、この月経痛による社会的損失は年間約1兆円と言われています。

そう考えるとピルが今以上に普及する可能性はあるかもしれません。

6.健康リスクマネジメント
EAP(Employee Assistance Program)という事業。
社員による健康上の問題から生じる損失はバカになりません。
社員が会社を休んだり、病院にかかったりすることは企業にとって負担です。
さらにはうつ病だと、その原因として労働環境が原因にされることもあり、訴訟では企業が負けるケースも多々あります。
そういう身体的、精神的疾患に対する予防事業がEAPです。
アメリカではすでに40年の歴史がありますが、日本では最近導入された概念です。

7.介護
超高齢化社会に向けて、当然需要の高まる事業です。
教育関係で有名なベネッセが力を入れています。

8.健康食品
コンビニにも売っている特定健康保険用食品です。
ヘルシア緑茶とかエコナオイルとか。
他の類似商品より割高でも、
「何百円かの差なら健康優先でしょ」
と思って買う人は多いようです。

9.ドラッグストア
巨大ドラッグストアのマツモトキヨシです。
ここまで成長できたのには若者に対するマーケティングや、物流システムの構築に鍵があるようです。
そんなマツモトキヨシでもアメリカのドラッグストアに比べると売上にして約10倍違います。
今後も外資のドラッグストアに対抗するために、日本のドラッグストア業界は統合や合併が進んでいく可能性があります。

10.化粧品
アンチエイジングが取りざたされていますが、やはり高齢化が進むにつれアンチエイジング効果のあるものに興味を持つ人もどんどん増えると予想できます。

11.サプリメント
薬じゃないけど、手軽に飲めて効果がありそうな”サプリメント”は多くの人が関心を持っているものだと思います。
ちょっと前に流行った、アンチエイジング効果があると言われているコエンザイムQ10などがありますよね。
私も患者さんによく
「膝の痛みにヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸が効くって聞いたんですが、実際のところどうなんですか?」
と患者さんに聞かれます。

サプリメントというのはそれだけ関心の高い商品なんだと思います。


医療をめぐって本当に様々な事業が行われているんだな、と新鮮な発見がたくさんありました。
もっと病院の外にも目を向けていかなければならないな、と感じました。




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