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安全と労使 「沈まぬ太陽」


01 11, 2010 | Tag,医療,安全,ハインリッヒの法則,日航,労務,労使関係,労働

小説「沈まぬ太陽 (新潮文庫)」はいろんなことを考えさせてくれました。

今回は安全と労使関係のこと。航空事業と医療どちらも安全第一という点ではかわらないなと思います。


1985年の日本航空123便墜落事故をモデルにした御巣鷹山の墜落事故。これがこの小説のメインテーマでした。

この事故から会社は「絶対安全」というスローガンをかかえて再建に取り組みます。しかしながら、いびつな労使関係、いくつも存在する労働組合、一部の利権を握った上役がそれを阻もうとします。



ハインリッヒの法則 - Wikipediaというのがあります。

「1件の重大事災害」の影には「29件の軽災害」と「300件のケガはないが、ヒヤリとした体験」が隠れている。その比率は1:29:300になっているというものです。

航空事故の影には29件の軽い事故、300件のヒヤリ体験が隠れているということですね。

だから、1件の重大事故が起きたら、その事故のことだけ考えるのではなく、事故を起こした土壌について幅広く検証する必要があるということです。


検証事項のひとつに労使関係があります。

勤務時間や給料といった待遇面、公平な人事は労働者にとってモチベーションを大きく左右する要因です。事故の多くがヒューマンエラーで起こることを考えると、安全には他人事ではなく、ひとりひとりが自分の問題として捉えることが必要です。そのためにも労働者がそこそこ満足できる労働環境、待遇はとても大切な事だと思います。

全体最適を目指してコストダウンを図りすぎ、局所最適が失われて事故につながるということはしばしばあるのではないでしょうか。


航空事業もそうですが、医療にも安全は求められます。
病院で医療を行っていると、そんな場面にときどき出くわします。

左右取り違えから薬のダブルチェック漏れによる誤投与など。すんでのところで誰かが気づいて大事に至らなくてよかった、ヒヤリとした、という事例はしばしばというか、まあまあよくあると思います。

原因のひとつに医師をはじめ、看護師や検査技師などコメディカルの疲弊があるんじゃないかと思います。日々の仕事に追われていると、それをこなすことに精一杯になります。すると、危険な状況を予想する余裕がなくなります。

例えばただでさえキツイ看護師の仕事。うちの病院では三交代制から二交代制へ勤務形態の変更が進められていて、どの看護師も嘆いてました。三交代というのは日勤、準夜勤、深夜勤というシフトで、二交代というのは日勤、当直というシフトのこと。三交代で勤務をまわすより、二交代でまわした方が少ない人数ですむんだと。

そんな中で医療安全委員会、安全対策の研修といっても、スタッフが余裕をもって参加できないと形だけのものになってしまいます。


病院の支出に占める人件費の割合は約5割といわれていてます。収益を上げるためにコスト削減としてスタッフの数を減らすことは簡単だと思います。

しかし、その影にはこうしたヒューマンエラーを誘発するリスクがあるということを覚えておかなければいけません。


ヒューマンエラーに関してはこちらの本がおすすめです。
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日航が生まれ変わるために 「沈まぬ太陽」


01 09, 2010 | Tag,小説,日航,労務,労使関係,労働,労働組合

日航の再建は法的整理が有力なようですね。



以下は「沈まぬ太陽」の一部あらすじ。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

利権をむさぼり、それを死守しようとする上役と利権から生じる甘い汁に群がる政治家や官僚。

度重なる航空事故やずさんな資金管理で破綻寸前の財務状況。

再建を任された国見会長と少数の志ある社内の人間。

しかし、彼らがどんなに頑張っても、利権でつながった社内の人間や政治家はマスコミさえも利用して徹底的にそれを阻止しようとする。

物語は再建半ばで、社外から抜擢された会長の退任をもって幕をおろす。


読んでて不屈の正義感をもった国見会長が気の毒になった。
と同時に、金にまみれて自分の保身しか考えない会社役員や政治家にうんざりした。


日本航空が経営破たんに瀕している今読んでみると、この小説はより興味深く読めるかもしれない。

労働組合が一つの会社にいくつもあることは健全ではないだろう(日本航空 - Wikipedia: 2009年10月現在、日本航空インターナショナルには、地上職や整備職、パイロットや客室乗務員などの職種別に、会社側1組合、反会社側7組合の合計8もの労働組合がある)。

1985年の日本航空123便墜落事故から20数年がたち、それ以来大きな航空事故が起きていないことを考えると安全の確保は向上している。

残念なことに財政面では再建がうまくいかなかったようで、現在のありさまである。

母体が危機に瀕しているというのに、企業年金の減額に対する提示もOBは受け入れられないようだ。

労務問題も8つの労働組合を抱えているところをみると、抜本的な改革はなされていないのだろうか。


組織が大きくなればなるほど、さまざまな思惑が入り乱れて根本から変えるのは難しいのだと思う。

大企業の中のいち社員は巨像の前の蟻である。そういう僕も医局や病院といった組織の一員で小さな蟻にすぎない。

少数の誠実な社員だけではできることは限られる。この物語の主人公たちのように。ここまでくると、誠実な社員だけで巨大組織を変えていくのは困難に思える。懸命に働いている日航の社員が気の毒だ。

腐りきった巨大組織はいったん潰れて生まれ変わるしかないのじゃなかろうか、と本書を読んで感じた。


<関連ニュース>


法的整理による企業イメージの低下で顧客離れって。。
いまさらという感じもする。


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