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医師の労務管理にもタイムカードはあった方がいい


01 30, 2010 | Tag,医師,労働,労働時間,時間外労働,ニュース

全てというわけじゃないけど、今だにタイムカードのない病院がある。
中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)は27日、過重な労働が問題となっている病院勤務医の負担軽減策について、タイムカードで勤務時間を把握するなど労働環境整備の要件をまとめ、2010年度診療報酬改定から導入することで合意した。
(中略)
勤務医の労働環境整備の要件は、一部の報酬加算を受け取るための前提。改善に努めた病院に手厚く配分する狙いだ。
(中略)
 要件は(1)勤務時間を客観的指標で把握(2)勤務状況の改善提言を行う責任者を配置(3)負担軽減計画の策定に当たる委員会を設置(4)同計画を厚生局に提出(5)目標の達成状況を年1回報告―の5点。報酬加算には全要件を満たさなければならない。

僕はこの案を支持する。

同じ医者でも雇う側と雇われる側では意見が異なってくるんだなあと思った。それを端的に表しているのが以下のご意見。


インセンティブを設定するにしてもこれでは「手厚い配分」を受けられるのはもともと人員にゆとりがあって環境整備が容易な病院であって,本当にスタッフが少なくて法令遵守したくてもできないようなところは恩恵にあずかることはできません。

その通りだと思いますね。今の日本でも医師の数が足りていない場所はたくさんある。そんな地域ではやむなく時間外労働をせざるを得ない。というか、医療過疎地域じゃなくても医師の労働環境は時間外労働のオンパレード。

個人病院なんかでは院長自ら時間のことは気にせず働くんだろうな。それなのに報酬加算の面で他院より冷遇されるのはおもしろくないかもしれない。これは雇うほうの立場ね。



でも立場が変わって雇われる方からしたらどうだろう。

医師も労働者というのが僕の意見なので、院長などの経営者以外は労働者としての権利が保護されてしかるべきだと思っている。

もともと医師の多くは患者のため、自分の腕を上げるためと時間外勤務に対する批判を声高には主張していなかったように思う。

時間外手当がいっさい出ていない病院にあっても、「ウチは年俸制だから時間外給料は払いません」という病院側の主張を信じていたり、うるさく主張して病院経営者から所属科部長を通じて圧力をかけられたり。目立ったことをして面倒くさいことに関わるのも嫌だしと泣き寝入りしていたり。

医師があまり主張してこなかったのをいいことにこうした不当な労働環境が横行していた。というかしている。今も。



誤解のないように言っておくが、時間外労働を一切廃止しろと主張しているわけではない。時間外労働をなくすのは無理。患者を切り捨てるようなものだ。

そうではなくて、必要に応じて時間外に働いたんだったら、その労働への対価は払うべきだということ。そのためにはタイムカードがいくらか有効だろう。

タイムカードを作って勤務時間を管理することは安全面からも必要なことだ。

もし時間外に勤務をしていて、事故を起こしたらどう処理するのだろう。勤務実態のない医師が事故を起こしているのに。



勤務時間をきちんと管理して、適切な労働環境の維持に努める。病院という組織もこうあるべきなんじゃないかな。

だから、今回の発案は現状改善への一歩であると思うのです。

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安全と労使 「沈まぬ太陽」


01 11, 2010 | Tag,医療,安全,ハインリッヒの法則,日航,労務,労使関係,労働

小説「沈まぬ太陽 (新潮文庫)」はいろんなことを考えさせてくれました。

今回は安全と労使関係のこと。航空事業と医療どちらも安全第一という点ではかわらないなと思います。


1985年の日本航空123便墜落事故をモデルにした御巣鷹山の墜落事故。これがこの小説のメインテーマでした。

この事故から会社は「絶対安全」というスローガンをかかえて再建に取り組みます。しかしながら、いびつな労使関係、いくつも存在する労働組合、一部の利権を握った上役がそれを阻もうとします。



ハインリッヒの法則 - Wikipediaというのがあります。

「1件の重大事災害」の影には「29件の軽災害」と「300件のケガはないが、ヒヤリとした体験」が隠れている。その比率は1:29:300になっているというものです。

航空事故の影には29件の軽い事故、300件のヒヤリ体験が隠れているということですね。

だから、1件の重大事故が起きたら、その事故のことだけ考えるのではなく、事故を起こした土壌について幅広く検証する必要があるということです。


検証事項のひとつに労使関係があります。

勤務時間や給料といった待遇面、公平な人事は労働者にとってモチベーションを大きく左右する要因です。事故の多くがヒューマンエラーで起こることを考えると、安全には他人事ではなく、ひとりひとりが自分の問題として捉えることが必要です。そのためにも労働者がそこそこ満足できる労働環境、待遇はとても大切な事だと思います。

全体最適を目指してコストダウンを図りすぎ、局所最適が失われて事故につながるということはしばしばあるのではないでしょうか。


航空事業もそうですが、医療にも安全は求められます。
病院で医療を行っていると、そんな場面にときどき出くわします。

左右取り違えから薬のダブルチェック漏れによる誤投与など。すんでのところで誰かが気づいて大事に至らなくてよかった、ヒヤリとした、という事例はしばしばというか、まあまあよくあると思います。

原因のひとつに医師をはじめ、看護師や検査技師などコメディカルの疲弊があるんじゃないかと思います。日々の仕事に追われていると、それをこなすことに精一杯になります。すると、危険な状況を予想する余裕がなくなります。

例えばただでさえキツイ看護師の仕事。うちの病院では三交代制から二交代制へ勤務形態の変更が進められていて、どの看護師も嘆いてました。三交代というのは日勤、準夜勤、深夜勤というシフトで、二交代というのは日勤、当直というシフトのこと。三交代で勤務をまわすより、二交代でまわした方が少ない人数ですむんだと。

そんな中で医療安全委員会、安全対策の研修といっても、スタッフが余裕をもって参加できないと形だけのものになってしまいます。


病院の支出に占める人件費の割合は約5割といわれていてます。収益を上げるためにコスト削減としてスタッフの数を減らすことは簡単だと思います。

しかし、その影にはこうしたヒューマンエラーを誘発するリスクがあるということを覚えておかなければいけません。


ヒューマンエラーに関してはこちらの本がおすすめです。
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日航が生まれ変わるために 「沈まぬ太陽」


01 09, 2010 | Tag,小説,日航,労務,労使関係,労働,労働組合

日航の再建は法的整理が有力なようですね。



以下は「沈まぬ太陽」の一部あらすじ。

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利権をむさぼり、それを死守しようとする上役と利権から生じる甘い汁に群がる政治家や官僚。

度重なる航空事故やずさんな資金管理で破綻寸前の財務状況。

再建を任された国見会長と少数の志ある社内の人間。

しかし、彼らがどんなに頑張っても、利権でつながった社内の人間や政治家はマスコミさえも利用して徹底的にそれを阻止しようとする。

物語は再建半ばで、社外から抜擢された会長の退任をもって幕をおろす。


読んでて不屈の正義感をもった国見会長が気の毒になった。
と同時に、金にまみれて自分の保身しか考えない会社役員や政治家にうんざりした。


日本航空が経営破たんに瀕している今読んでみると、この小説はより興味深く読めるかもしれない。

労働組合が一つの会社にいくつもあることは健全ではないだろう(日本航空 - Wikipedia: 2009年10月現在、日本航空インターナショナルには、地上職や整備職、パイロットや客室乗務員などの職種別に、会社側1組合、反会社側7組合の合計8もの労働組合がある)。

1985年の日本航空123便墜落事故から20数年がたち、それ以来大きな航空事故が起きていないことを考えると安全の確保は向上している。

残念なことに財政面では再建がうまくいかなかったようで、現在のありさまである。

母体が危機に瀕しているというのに、企業年金の減額に対する提示もOBは受け入れられないようだ。

労務問題も8つの労働組合を抱えているところをみると、抜本的な改革はなされていないのだろうか。


組織が大きくなればなるほど、さまざまな思惑が入り乱れて根本から変えるのは難しいのだと思う。

大企業の中のいち社員は巨像の前の蟻である。そういう僕も医局や病院といった組織の一員で小さな蟻にすぎない。

少数の誠実な社員だけではできることは限られる。この物語の主人公たちのように。ここまでくると、誠実な社員だけで巨大組織を変えていくのは困難に思える。懸命に働いている日航の社員が気の毒だ。

腐りきった巨大組織はいったん潰れて生まれ変わるしかないのじゃなかろうか、と本書を読んで感じた。


<関連ニュース>


法的整理による企業イメージの低下で顧客離れって。。
いまさらという感じもする。


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雇用するものされるもの  「沈まぬ太陽」


01 05, 2010 | Tag,医師,労働,労働組合,全国医師ユニオン

「沈まぬ太陽」という小説を読んだ。
著者は山崎豊子さんで、「白い巨塔」や「華麗なる一族」などの作品でも有名。


「沈まぬ太陽」では主人公が巨大航空会社の一員という設定。主人公は旧態依然とした巨大組織に属しながら、労働者としての権利を主張し続ける。

しかし、それを疎ましく思った会社側は主人公を不当な差別人事で海外での僻地勤務を半ば強制する。

海外勤務を転々とした後、主人公は自分がこれまで受けてきた人事について公の場で証言する機会を得、ようやく日本での勤務を勝ち取ることになる。

しかしながら、それでも会社からの差別人事は終わらず、日本での勤務先はいわゆる窓際族のようなもの。


この小説の前半はおおまかにそんな内容となっている。


感情移入しながらこの作品を読んでいた。主人公が労働時間や給料のことなど、労働組合の代表として会社上層部と掛け合うシーンは本当に応援したくなるものだった。本書に登場する利益至上主義の航空会社からすれば、うるさいハエのような存在だろうということも容易に想像できた。

でもあくまで僕は一労働者としての見方しかできない。自分がそうだから。

会社側が主人公を労働組合と分断させておくために、主人公に島流し同然の僻地勤務を強いていたことには特に憤りを感じた。

労働組合の長だったとしても、任期を終えればただの人。それを会社の傘を借りた巨大な権力でつぶしてしまおうという姿勢が卑劣だった。

これは小説の中での話で、しかも舞台は昭和。それはわかっている。

この状況を単純に今にあてはめることはできないが、山崎豊子さんの作品はいつもその時代の社会背景をうつし出している。



翻って医師の労働環境はどうだろう。

大企業との大きな違いは労働組合がないことだ。各病院にたくさんの医師が勤務しているが、医師の労働組合がある病院というのは聞いたことがない。病院職員や看護師などのコメディカルで形成された労働組合はある。

きつい仕事を行っているのは若い医師で、その若い医師は短いインターバルで病院を異動するということも関係しているだろう。

朝から晩まで働いて、夜時間内までに勤務が終わることなどなく、夜間に呼び出しがあれば病院にとんでいくのが医師の仕事だ。開業の先生や大きな病院でもベテランに位置づけられる医師たちはこの限りではない。

医師の仕事は多少自分の時間を犠牲にしても、患者さんから「ありがとう」と言われ、感謝されるからやりがいがある。いい仕事だと思う。

でもその仕事はあくまで労働であると思う。医師も人間であるから働けば疲れるし、時には病気になることだってある。これは個人的な意見で、自分の仕事を労働と思っていない医師も結構いる。


労働時間とか給料の話をすると、病院経営者側からはまずいい返事が返ってこない。医は仁術だから、医師は自分を犠牲にしても患者さんのために尽くすんだ、なんて綺麗ごとを本気で言っている人もいるくらい。

院長を始め、病院経営幹部は労務のことに疎い場合もある。うちは年俸制だから時間外労働に対する手当は払わない、なんてことを平気で言ってたり。

医師の時間外労働を認めていたら、人件費はかさむ一方だろうから病院側としてはおもろくないはずだ。

医師の労働組合というのは各病院に存在せず、待遇について不満があれば個人で直訴するしかない。

個人の力は弱いものだ。圧倒的に弱い。病院に個人で直訴しても簡単に握りつぶされてしまう。訴えが正当であったとしても、経営者側はあらゆる権利を動員してその個人の訴えを封じにかかるのだ。

これは僕の身の回りでも実際にあった。

このあたりは「沈まぬ太陽」の世界と変わらない。



最近見つけたのだが、


というのがあるらしい。


医師の労働組合だ。病院単位ではなく、全国区での組織になっている。これに所属すれば直訴を簡単に握りつぶされることはないだろう。少なくとも個人行動してるよりずっと説得力が増すはず。

僕は年会費2万円にひるんで、入会におよび腰になっている。月2000円弱と考えれば、そんなに高いものではないような気もするのだが、まだ行動に移せていない。

組合員になったとたん、「沈まぬ太陽」の主人公がアカのレッテルを貼られたように、病院から変なレッテルを貼られたりして。いや、さすがにそんなことはないと信じているが。


行動を起こすための一つの手段として、医師ユニオンに入会するのもいいのかなと思った次第です。

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