貧困対策の切り札となりうるか 【書評】ベーシック・インカム入門


05 11, 2009 | Tag,ベーシックインカム,経済,貧困

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
(2009/02/17)
山森亮

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本書はときどき話題にのぼるベーシックインカムについて解説した本です。

ベーシックインカムとは所得に関係なく、国民一人一人に決まったお金を給付するものです。そして、医療や教育、介護、保育、住居などにかかるお金もほぼタダです。

この制度のいい点はどんな人でもどうしようもない貧困に陥ることが少なくなる点でしょう。最低限のお金や福祉は国から与えられるのですから。

日本にはセーフティネットとして生活保護という制度がありますが、この制度の最大の問題点は現状では保護が必要な5人のうち1人しか保護が受けられていないことです。十分なセーフティネットを行き渡らせるなら、予算も5倍必要ということです。

過去にはアメリカ、イギリス、イタリアで女性を中心としたベーシックインカムの元になるような運動はありました。女性を中心とした、というのには意味があって、女性の家事が労働として認められず、労働の対価として報酬を得られないこと問題だという意見が出てきたのです。著明なところでいくと、過去にはキング牧師やその他のノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンさんやジョージ・スティグラーさんなどもベーシックインカムという制度を支持していたようです。



このベーシックインカムという制度、いいことづくめなような気がしますが、問題点もあります。


1.国民が働かなくなるのではないか?
2.ベーシックインカムの財源は?


1.国民が働かなくなるのではないか?
これに対しては負の所得税という制度を反論に用いています。「負の所得税」というのは一定の基準に満たない所得の人が逆に所得税をもらえるというものです。これなら働いていないと給付をもらえません。この制度のもとではセーフティネットから漏れ落ちてしまう人は助けることができそうです。

働かなくなるのでは?という疑問以前に、現在の労働環境では人は「働きすぎ」ではないのか?という意見もあります。つまり、労働はどんどん効率的になっているのに、はじめに労働ありきなので不要な労働を生み出している可能性があるということです。雇用を前提とした既存の福祉国家の仕組み(保険・保護モデル)は立ち行かなくなってきているという意見です。


2.ベーシックインカムの財源は?
国会の会期が延長されても、あるいは国会を解散して総選挙をやっても、銀行に公的資金を注入しても、年金記録を照合するのにも全てお金がかかります。なのに、特定の話題のみ財源の問題が取りざたされるのはおかしいのではないかというのが本書の主張です。たしかにベーシックインカムが導入されれば社会保険庁などはいらなくなるので、そこから財源を確保できるでしょうし、後世に残しておく財産が必要なくなるので、相続税が100%となり、眠っている国内の資産がベーシックインカムの財源として有効に活用できるかもしれません。



「働かざる者食うべからず」という文化が浸透している日本ではまだまだこのベーシックインカムという制度には馴染めないかもしれません。その原因の一つにすべての人に一律に給付する、という点があるように思います。給付の条件には一定の基準を設けていいのかもしれません。例えば疾病や怪我で労働不能になった人、障害をもって労働不能の人、子供の養育や高齢者の介護にあたっている人などは給付を受けてもいいのではないかと思います。「衣食足りて礼節を知る」という言葉もあります。稼ぎたい人はどんどん稼げばいいわけで、どうしても稼げない人には最低限の生活の保障をしてもいいのではないでしょうか。


今回のベーシックインカムの話は多くの既得権益とぶつかる可能性があり、容易には実現しないような気がします。しかし、実現した世界を想像するとそう悪くないような気もします。個人の創造力には限界があるのでなんとも言えない面もありますが。



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